シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

大妻中学校

2020年12月掲載

大妻中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.興味・関心を高める理科の授業

インタビュー3/3

手を動かす実験を体験してほしい

方京先生 生徒を見ていると、実体験が少なくなってきているのかな、と感じます。IHが普及して、ガスコンロがないご家庭も結構ありますので、火を間近で見るのが初めて、という子がいます。

火の怖さを体験したことがない、ということですよね。

方京先生 そうなんですよね。ですから入試問題でも、我々が日常的だと思って出していることも、受験生にとっては非日常的なことだったりするのかもしれないですね。

ICTが進んでいるので、小学生も映像は見るんですよね。ただ、映像と文字だけなので、実感がないのが若干心配です。

方京先生 生徒たちは、「アンモニアが臭い」など、そういうようなところからいちいち驚きます。刺激臭1つとっても、それぞれ違う臭いだから、そういうところが新鮮に感じるようです。

実験する環境が整っていていいですね。

方京先生 そうですね。人数を制限するために、今はクラスを2つに分けて実験している学年があります。ですから実験室はフル稼働ですが、大人の目が届く中で実験ができていると思います。回数をなるべく減らさないように気をつけています。実際に手を動かせる実験をいろいろしてもらいたいなと思っています。

大妻中学校 実験室

大妻中学校 実験室

授業では理解が深まる工夫を欠かさない

授業で工夫されていることがあれば教えてください。

方京先生 今年は前半がオンラインの授業になってしまったので、講義だけでなく、模型を作って見せたり、教員が実験をして手元を映すなど工夫して動画を作ったりと、一辺倒にならないような工夫をしました。立体や実物を見ることで理解が深まったのではないかと思います。

生徒さんはタブレットを持っているのですか。

方京先生 はい。ひとり1台持っています。授業を行うだけでなく、「教材や補足の動画などを配信するので見ておいてね」と言うことができます。双方向とオンデマンド、場合によっていろいろやりました。

授業で大切にされていることを教えてください。

方京先生 実験をベースにしていることが多いので、データから何が言えるのか。この結論を言うにはどの実験結果を比較すればいいのか。そういうようなところは入試問題でもよく問うのですが、それは普段の授業でもやっていることです。手を動かすことも重視しています。ソフトを使ってグラフを書くこともできるのですが、手で書かせています。「自分で軸を取り、縦軸が何で、単位は何で、というようなところを書かなくてはいけない」という話を根気よくしています。

大妻中学校 実験室

大妻中学校 実験室

1学年の3~4割が理系志望。中心は医療系

貴校の特徴的な活動があれば教えてください。

方京先生 高3の実験講習を実施しています。普段の50分授業ではできない、長めの実験を組み合わせて20種類弱くらいを、4、5日間、集中的に行います。例年、20~30名が参加しますが、今年は50~60名います。1学期が休校で何もできなかったので、実体験に飢えていた人たちが多かったのだろうと思っています。

それは大学受験に向けての講習ですか。

方京先生 そうです。二次試験で化学を使う生徒に限定した講習です。今年は人との距離を開けなければいけない、ということで、3展開で実施しています。

二次試験で化学を使う生徒さん、多いですね。

方京先生 1学年の3~4割が理系志望です。例年、医療系を志望する生徒が多いです。今年は医療現場の大変さが伝えられているので減るのかなと思っていたのですが、そういうことはありませんでした。

むしろ大変だから世の中に貢献していこうという気持ちが芽生えるのでしょうか。

長谷先生 他の女子校の先生と話すと、女子のほうが職業に直結する学部を選ぶ人が多いようです。

理科分野への好奇心や探究心を満たす理科部の活動

理科への興味がふくらんだ生徒さんが活動する場はありますか。

方京先生 理化部があります。理化部の中で、生物班、化学班…など4つの分野に分かれています。生物班は解剖をしたり、化学班は入浴剤を作ったり、物理班はピタゴラスイッチのようなものを作ったりしています。

男子はピタゴラスイッチ的なものを作ることが好きですが、女子も好きなのですね。

方京先生 はい。毎年作って文化祭で展示しています。いろいろな材料を買ってきて作っています。

生物班から化学班へ、というように、班は自由に動けるのですか。

方京先生 班を超えた取り組みとしては、富士山の近くで行われている砂金堀り大会に1泊2日で参加しています。それは他校さんから「こんな大会があるよ」と教えていただいて、参加したのだと思いますが、年によってはベスト3に入ったり、個人の部で優勝したりしています。

競技なんですね。

方京先生 砂利の中に砂金の粒がいくつか入っていて、それを時間内にいくつ取り出せるか、というルールのようです。夏場になりますと、ベランダで練習して臨んでいます。
また、東京理科大学の学園祭に、中高生が子どもを対象とした実験教室を行う企画があるのですが、そこに参加させていただいています。大学生と一緒に行うわけではないのですが、複数の学校がブースを出して活動できるので、他校の生徒さんと情報交換ができる楽しみもあります。理化部は女子校フェスタにも参加させてもらっています。そこでも他校さんのブースを見に行って参考にさせてもらうなど、楽しく活動させてもらっています。

女子は共感力が高いというか、いろいろなものに関心を持ちやすいのでしょうか。

方京先生 そうですね。「作り方を教えてもらいに行く!」など、積極的に関わっています。たまに材料をもらって来ることもあります。

大妻中学校 掲示物

大妻中学校 掲示物

知らないことを知る楽しさを味わおう

最後に、小学生にアドバイスをお願いします。

方京先生 私はテレビ番組や本などから理科に興味を持ちました。そういう人が多いのかなと思います。興味を持ったら、実物を見る、実際にやってみる、ということが大切だと思います。結果的に理系に進まなくても、理科が好きだからいろいろな知識を持っている、というような人が育ってくれるといいなと思っています。

博物館に行かれる、というお話がありましたが、どういう視点で見ているのですか。

方京先生 私は化学の教員なので、化学に関するところはもちろんですが、(自分の)知識の薄いところへもあえて行きます。石や虫はあまり詳しくないので、説明を片っ端から読んでいます。じっくり見るのがいいかなと思います。また、中身とは関係ありませんが、建物を見るのもおもしろいです。

インタビュー3/3

大妻中学校
大妻中学校1908年に大妻コタカが創立した家塾が前身。校訓『恥を知れ』は、自分自身を戒める言葉。自律と自立を大事に、「リーダーシップを持って活躍できる品性を兼ね備えた教養ある女性」の育成に取り組む。創立からの理念と共に、時代の要請に応える教育を大切にしている。
6年間を中学1年、2年の「基礎力養成期」、中学3年、高校1年の「充実期」、高校2年、3年の「発展期」の3つに分け、学習内容を効率的に編成して、生徒の幅広い進路に対応する。
「基礎力養成期」では、安心できる環境の中で、自己肯定感を持ち、目標に向かって頑張ることのできる集団へと育てることを目指す。「充実期」では、「働くこと」「学ぶこと」の意味を考え、高校進学に向けて意識を高めていく。自分らしい生き方とは何かなど、将来の職業や社会への貢献などについて考える。「発展期」では、自分の将来像をより明確化し、具体的な進路を探っていく。「問題解決能力」「自己表現力」「発信力」を強化して、具体的な進路の決定と目標達成へ向かっていく。内部進学率は2~3%で、卒業生の大半が他大学へ進学する進学校として定着している。
また、クラブ活動や行事も盛んに行われていて、書道、マンドリン、バトントワリングなど、全国大会で活躍する部もある。袴姿にはちまきの応援団も登場する体育祭、中学生による研究発表、各部による発表、舞台演技など、全校で盛り上がる文化祭、イギリス、アメリカ、オーストラリアへの海外研修や、情操教育の一環としての芸術鑑賞など多くの行事がある。
教員と生徒との距離が近く、職員室前のラウンジは吹き抜けになっており、話しやすい環境がある。また、担任と生徒との1対1の面接週間というのもある。