シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

大妻中学校

2020年12月掲載

大妻中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.私たちの身の回りにある理科に目を向けよう!

インタビュー2/3

いろいろな方面に興味を持って学びを進めてほしい

時事問題に目を向けておくことが大切ですね。

方京先生 そうですね入試説明会でも、よく「時事問題をテーマに入れます」ということをお話するのですが、世の中のことに目を向けて、そこから原因はなんだろう、影響はどうなるのかなと、少し自分で考えたり、調べたりしてもらえるといいと思います。

我々も、この時期になると時事問題を確認するのですが、今年はコロナ以外にあまり大きな出来事がなかったような気がします。特に理科に関わることは少なかったのでは?

方京先生 隠れてしまった、という感じはありますね。最近、理系、文系に分けることのできない学問も出てきていると聞きますので、範囲をきっちり決めずに、いろいろな方面に興味を持って学びを進めてほしいと思います。

大妻中学校 掲示物

大妻中学校 掲示物

国語でも「光合成」を答えさせる問題を出題

長谷先生 今回、国語の問題で「光合成」を答えさせる問題を出しているんですよね。文章中に「光合成」という文字はないのですが、解答に「光合成」という言葉を入れないと正解にならない問題が出ているのです。

おもしろいですね。国語ですか。

長谷先生 国語では毎年1問、理科や社会の知識がないとできない問題を出題しているんですね。今回は、「コケの管理が必要なのは雑草や落ち葉に覆い隠されてしまうと、【 】ができなくなり、美しい状態を維持できなくなるから」という文の【 】に漢字三字の言葉を考えて答えなさいという問題で、正解の光合成は文中にはない言葉でした。

状況を思い浮かべなければ解けない問題ですね。

長谷先生 正答率は48%でした。

教科を超えて話し合うわけではないんですよね。

方京先生 社会で出たものが、次の理科で出ないようにしなければいけない、とは思っていますが…。話し合いの場は設けていません。

入試広報部主任/長谷 良一先生

入試広報部主任/長谷 良一先生

入試問題で測りたい力は5つ

理科の問題を考える上で、意識していることを教えてください。

方京先生 入試説明会でもお話しているのですが、受験生の皆さんに理科で身につけてほしい力が5つあります。
1つ目は、基本をしっかり身につけること。
2つ目は、身のまわりのことに広く興味をもってもらうこと。
3つ目は、データや図などの資料を読み取る力。
4つ目は、考えたこと、そこから言えることを表現できる力。
5つ目は、最後まで粘り強く頑張る力。
これら5つの力を見られるような入試問題を作っています。ですから少し複雑な計算を入れる、長い文章を読む、というようなことをして、最後まで粘り強く頑張る力を測り、そういう子に入ってきて欲しいという思いが伝わればいいと思っています。

問題を解くだけでなく、その後に続く工夫を凝らしたい

今回のモーターの問題、磁石の問題は、受験生が見たことのある問題かもしれませんが、考えることは難しいのかなと思いました。

方京先生 なんとなくはわかっているけれども、図が変わった時に自分で読み取るのはなかなか難しいですよね。注目すると、巻きの向き、磁石の位置などを自分で確認しながら、どちらに回るかを判断できるようになってきてほしいと思います。

シンプルにモーターという切り口ではなくて、スピーカーの仕組みを聞いていますよね。単純に電池磁石のことを思い起こすだけではなくて、あの中に電池磁石の仕組みがあったんだと、身近なものに使われていることがわかって楽しくなる問題だなと思いました。

方京先生 身近なものを題材にしたほうが、問題を解いている間も楽しいでしょうし、家に帰ってからも、例えば「新しくこんなことを知った」と、家族に話すネタになったり、関連することを調べるきっかけになったりするといいですよね。何か1つそういうものを持って帰ってもらえたらいいなと思っています。

大妻中学校 実験室

大妻中学校 実験室

身近な話題を題材に問題を発想することが多い

どのように問題を作っているのですか。

方京先生 みんなで問題を持ち寄って、アイデアをいろいろ出したり入れたりして作ります。

方京先生はどういうところから問題を発想することが多いですか。

方京先生 本やネットのニュースが多いです。博物館や動物園などの発信を見て、使えそうな題材があればピックアップします。化学の実験では、化学の教員数人で実際にやってみて、「ここの変化がちょっとおもしろいよね」というようなところから問題を作ることもあります。実際に手を動かし、目で見て問題を作ることが多いです。

1番は「オリンピックが近づきました」という書き出しから、オリンピックのことではなく天気のことを聞いています。そういうところは特徴的かもしれませんね。

インタビュー2/3

大妻中学校
大妻中学校1908年に大妻コタカが創立した家塾が前身。校訓『恥を知れ』は、自分自身を戒める言葉。自律と自立を大事に、「リーダーシップを持って活躍できる品性を兼ね備えた教養ある女性」の育成に取り組む。創立からの理念と共に、時代の要請に応える教育を大切にしている。
6年間を中学1年、2年の「基礎力養成期」、中学3年、高校1年の「充実期」、高校2年、3年の「発展期」の3つに分け、学習内容を効率的に編成して、生徒の幅広い進路に対応する。
「基礎力養成期」では、安心できる環境の中で、自己肯定感を持ち、目標に向かって頑張ることのできる集団へと育てることを目指す。「充実期」では、「働くこと」「学ぶこと」の意味を考え、高校進学に向けて意識を高めていく。自分らしい生き方とは何かなど、将来の職業や社会への貢献などについて考える。「発展期」では、自分の将来像をより明確化し、具体的な進路を探っていく。「問題解決能力」「自己表現力」「発信力」を強化して、具体的な進路の決定と目標達成へ向かっていく。内部進学率は2~3%で、卒業生の大半が他大学へ進学する進学校として定着している。
また、クラブ活動や行事も盛んに行われていて、書道、マンドリン、バトントワリングなど、全国大会で活躍する部もある。袴姿にはちまきの応援団も登場する体育祭、中学生による研究発表、各部による発表、舞台演技など、全校で盛り上がる文化祭、イギリス、アメリカ、オーストラリアへの海外研修や、情操教育の一環としての芸術鑑賞など多くの行事がある。
教員と生徒との距離が近く、職員室前のラウンジは吹き抜けになっており、話しやすい環境がある。また、担任と生徒との1対1の面接週間というのもある。