シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

大妻中学校

2020年12月掲載

大妻中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.物事を一方面からだけでなく多方面から考える習慣をつけよう

インタビュー1/3

分野を超えて考えてほしかった

この問題の出題意図からお話いただけますか。

方京先生 この問題は、5つの小問の最後の問題として出題しました。実験で発生させた二酸化炭素の性質を問うような問題に始まり、時事問題で終わる構成です。題材には「アマゾンの熱帯雨林火災」を取り上げました。

「二酸化炭素が温暖化の原因になっている」という話は、小学校などでも習っていると思うのですが、「では、なぜ増えるのか」というところで、2つの理由が考えられます。1つは、「有機物(森林)が燃えて二酸化炭素が出る」という化学分野の理由。もう1つは、「植物が減って二酸化炭素の光合成による消費が減る」という生物分野の理由です。2つの理由から、「空気中の二酸化炭素が増えそうだ」ということを答えてもらう問題で、このような問題を出した意図は、分野を超えて考えてもらいたい、というところにありました。

理科/方京 裕美先生

理科/方京 裕美先生

どちらかを正しく書けていれば正解にした

受験した子ども達に聞くと1つは書けていたようなのですが、2つ書けていたかどうか…。そこが気になるところでした。

方京先生 両方書いている受験生は少なかったです。どちらかというと、「燃えて二酸化炭素が出る」というようなことを書いている子が多かったと思います。「説明してください」というところで、「燃焼によって二酸化炭素が生じる」、あるいは「光合成の量が減る」など、そういうようなワードを書いていてほしいな、という思いがありました。

両方、書かなければいけない、となると、受験生にとっては難しい問題になったように思いますが。

方京先生 問題文に「2つ書きなさい」と書かなかったので、どちらかを正しく書けていれば正答にしました。「両方書けている子は素晴らしいね」と話していました。

比較的、できている、という印象でしたか。

方京先生 思っていたよりも、どちらか一方は説明できている受験生が多かったです。

両方書くことができていた受験生は多かったですか。

方京先生 正確な数字は出していないのですが、体感としては正答した人の半分以下ですね。「2つ書きなさい」と書かなかったので、2つ書いてくれた子は予想外、というとらえ方でした。

解答欄を見ると、このスペースに2つ書くのは難しいですよね。

方京先生 そう思います。

大妻中学校 校舎

大妻中学校 校舎

教科の枠を超えてつながると知識も定着

環境問題は原因や結果が必ずしも1対1ではないですよね。分野や単元を変える、という意味では扱いやすいので、我々もよく出題します。

方京先生 中学、高校と進むにつれて、教科の分野がどんどん細分化されますので、いろいろな視点から見る、ということはさらに難しくなるのかなと思います。小学校の学習より範囲も広くなるので、子ども達のなかで自主的につなげてみることも、少し難しいところがあるのかなと思います。ですから、時々、理科と数学、あるいは家庭科など、いろいろなところと情報を共有して、「そこでも学習したよね」と言うと、「ああ、そういうことか」と、生徒はつながった顔をします。適宜、こちらが説明してあげれば、知識の定着につながっていくのかなと思います。

先生方の間でも、そういうお話はよくされているのですか。

方京先生 連絡会のようなものは特に設けてはいないのですが、立ち話程度に「今度こういう単元を学習するんだけど、この教科ではもう触れているかしら」というような話は時々しますね。

他の教科が絡むと、その子なりに理解が深まるのでしょうか。

方京先生 これから、そういうつながりを強くしていったほうがいいと思っています。

大妻中学校 理科室

大妻中学校 理科室

身のまわりのものを入試問題の題材にしたい

時事問題を絡めることにより、具体的な問題から興味をもって、理科の知識を知りたくなる可能性もありますよね。

方京先生 確かにそうですね。

作問の順序として、きっかけは実験からですか。時事問題からですか。

方京先生 明確ではないのですが、時事問題はどこかに入れたいと思っていました。4回入試を行っていますが、どの回にも時事問題のようなものは入っていると思います。
また、化学の問題で時事問題となると、環境問題に関係したほうがいいのかなと思いました。小学生が知っている知識の中で納めなければいけないので、聞き方などは気をつけなければいけないと思っています。

大人になると、意外と身の回りに理科の知識が使われているものが多いことに気づきますよね。

方京先生 そうですよね。結構身のまわりに理科の知識に関連のあるものが多いので、そういうところを入試問題の題材にできるといいなと思っています。小学生の場合は、家や通学路などで自然現象などをよく観察してもらえるといいなと思っています。

インタビュー1/3

大妻中学校
大妻中学校1908年に大妻コタカが創立した家塾が前身。校訓『恥を知れ』は、自分自身を戒める言葉。自律と自立を大事に、「リーダーシップを持って活躍できる品性を兼ね備えた教養ある女性」の育成に取り組む。創立からの理念と共に、時代の要請に応える教育を大切にしている。
6年間を中学1年、2年の「基礎力養成期」、中学3年、高校1年の「充実期」、高校2年、3年の「発展期」の3つに分け、学習内容を効率的に編成して、生徒の幅広い進路に対応する。
「基礎力養成期」では、安心できる環境の中で、自己肯定感を持ち、目標に向かって頑張ることのできる集団へと育てることを目指す。「充実期」では、「働くこと」「学ぶこと」の意味を考え、高校進学に向けて意識を高めていく。自分らしい生き方とは何かなど、将来の職業や社会への貢献などについて考える。「発展期」では、自分の将来像をより明確化し、具体的な進路を探っていく。「問題解決能力」「自己表現力」「発信力」を強化して、具体的な進路の決定と目標達成へ向かっていく。内部進学率は2~3%で、卒業生の大半が他大学へ進学する進学校として定着している。
また、クラブ活動や行事も盛んに行われていて、書道、マンドリン、バトントワリングなど、全国大会で活躍する部もある。袴姿にはちまきの応援団も登場する体育祭、中学生による研究発表、各部による発表、舞台演技など、全校で盛り上がる文化祭、イギリス、アメリカ、オーストラリアへの海外研修や、情操教育の一環としての芸術鑑賞など多くの行事がある。
教員と生徒との距離が近く、職員室前のラウンジは吹き抜けになっており、話しやすい環境がある。また、担任と生徒との1対1の面接週間というのもある。