シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

渋谷教育学園幕張中学校

2020年11月掲載

渋谷教育学園幕張中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.「書く」ことが相手に伝える第一歩

インタビュー2/3

“独り言”の文章記述では相手に伝わらない

文章記述問題も多く出題していますね。小学6年生の記述力としてどんな点を見ていらっしゃいますか。

岩渕先生 入試問題は対話ですから“独り言”では困ります。読み手に独り言を拾ってもらうのではなく、読み手がわかるように伝えてほしいし、そのための努力をしてもらいたいですね。
自分がわかっているから相手もわかっていると思い込んで省略してしまうのは、高校生にも見られます。高3の「論述講習」(地理・日本史・世界史の大学入試問題を例にした演習)で第一に伝えるのが、「独りよがりにならない」ということです。主語がない文章はその典型です。自分がわかっていることを相手もわかっているとは限りません。わかっていない前提で書かなければなりません。
「書く」ということは読み手(他者)が存在します。読み手のない文章は“日記”でしかありません。相手に伝える意識を、中学受験生も持ってほしいと思います。

渋谷教育学園幕張中学校/図書館

渋谷教育学園幕張中学校/図書館

字数指定では解答の「核」を突き詰めることが求められる

字数指定のある文章記述問題もありますね。

岩渕先生 文章記述も解答欄の枠内で答えてほしいですね。1行の解答欄に2行にわたって書くということは、問題の意図をわかっていないということになります。
字数指定があるとどれくらい書けばいいか見当がつけられます。指定された字数で収めるには何を削ればいいか、つまり解答の「核」は何かを突き詰めることにもなります。答えてほしいことを察知できるかどうかを判別するのに字数指定は役立ちます。
定期考査でも文章記述問題を多く出題しています。中1でも1行程度の文章記述問題を必ず出していますし、高校では字数指定を設けた問題も出しています。

渋谷教育学園幕張中学校/掲示物

渋谷教育学園幕張中学校/掲示物

「書く」ことは自分にとってプラスになる

受験生の答案を見て、何か気づくことはありますか。

岩渕先生 時間が足りず最後まで解けなかった受験生がいます。選択問題すら無解答の答案を見ると、消化不良だったのかなと思うことがあります。
最後まで問題を解き、何とか書いてもらいたい。「書く」ことは相手に伝える第一歩ですから、書くことを嫌がらないでほしいし、書くことが自分にとってプラスになると思って取り組んでもらいたいですね。

求めるのは初見の問題に対応できる柔軟性

貴校の社会科の問題を見ると、社会科の知識に限らず今まで学んできたことをフル活用して問題を解いてもらいたいという意図が伝わります。

岩渕先生 オーソドックスに教科の縦割りで勉強してきたお子さん(受験生)にとって、教科横断的な問題は面食らうでしょう。本校の社会科は「自分たちが生きている世界を理解して未来を考える」ことを目標としているので、教科の垣根を多少越えてもいいのかなと思っています。
「どれだけたくさんのことを覚えたか」は求めてはいません。初見の問題だからとあきらめず、初見でも解ける柔軟性を求めています。ある程度、しっかりと学習してきたのであれば、初めて見るような問題であっても解くことができると想定して作問しています。

渋谷教育学園幕張中学校/図書館

渋谷教育学園幕張中学校/図書館

スーパーマーケットで社会の今が見えてくる

岩渕先生 「普段の生活を大切にする」一環として、子どもたちにはスーパーマーケットに行ってもらいたいですね。陳列棚にはいろいろな商品がありますが、例えば新型コロナウイルスの影響で減ったもの(売れた商品)、代わりに補充されたもの(代替品、新商品)から、社会が今求めているものが見えてきます。見るだけでもいいので習慣にできるといいでしょう。親御さんがお子さんを連れて行ってくださると子どもの世界が広がりますし、親子の会話のきっかけにもなると思います。
社会科はいろいろなものを見て判断したり、知識と経験をつなげて考えたりすることが求められます。「そういうことか」とつながりに気づくと生徒は楽しそうですし、次に進もうとしてくれるのはうれしいですね。

インタビュー2/3

渋谷教育学園幕張中学校
渋谷教育学園幕張中学校高校は1983年に創立され、中学は1986年に開校した。中3でニュージーランドホームステイ、高2で中国への修学旅行、シンガポールやベトナムへの研修も実施され、国際人としての資質が養われる。帰国生も数多く在籍し、幅広い教養も身につける環境が整っている。その結果、国内難関大学だけでなく、海外難関大学への進学者も数多い。また、模擬国連国際大会で、毎回、優秀な成績を収めている。2015年には「第4回 科学の甲子園全国大会」で優勝。全米各州の代表チームが集った「サイエンス・オリンピアド2015」に特別参加し、日本初の5位入賞を果たしている。
教育目標である「自調自考」の精神が学校生活全体に行きわたる。日本でいち早くシラバスを導入し、自ら進んで学習する姿勢を形成した。高1・高2では自調自考論文を作成する。スポーツフェスティバルや文化祭などの行事や宿泊研修など、すべてが生徒主体で行われる。自ら学ぶための校内設備も充実しており、たとえば、6部屋の実験室がある理科棟では、大学と同等以上の高度な実験ができる環境が整っている。
勉強面だけではなく、サッカー、水泳、ハンドボール、テニス、空手など強豪クラブがそろうほどにクラブ活動が盛んである。また囲碁将棋は全国レベル。校内に一歩入った瞬間に、生徒の自分で判断し行動する姿を見ることができ、学校の教育目標が学校全体に広がり、そして生徒の一人一人にふかめられていることを感じさせる。