シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

渋谷教育学園幕張中学校

2020年11月掲載

渋谷教育学園幕張中学校【社会】

2020年 渋谷教育学園幕張中学校入試問題より

(問)通常の個室よりは広い空間を有する多機能(多目的)トイレの設置が広がっています。このトイレの広さと設置されている主な機能の両面から考えて、想定(そうてい)されている利用対象者の具体例を2つあげなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この渋谷教育学園幕張中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例
  • 車いすを使用している人
  • おむつを替える乳幼児を連れた人
  • 人工膀胱や人工肛門を保有する人
  • ベビーカーを押している人
  • 介助者を必要とする高齢者
  • キャリーケースを持っている観光客
  • ほじょ犬を連れている人
  • 妊娠している人
  • 松葉づえを使っている人
  • 目が不自由でつえを使っている人
  • 身体の性と心の性が一致しない人

など

解説

「トイレの広さと設置されている主な機能の両面から考えて」という手がかりに目を向けます。通常の個室トイレでは狭さを感じ、より広い空間を必要とするのは、どういった人かを考えましょう。また、多機能トイレの機能(手すり、多目的シート、ベビーシート、汚物流し、ベビーチェアなど)を具体的に思い出すことで、それを必要とする人を考えましょう。想定されている利用対象者の具体例は2つあげることになっているので、1つをトイレの広さから、もう1つを主な機能から考えると、バランスよく解答することができます。

日能研がこの問題を選んだ理由

この入試問題では、多機能トイレの想定されている利用対象者を考えます。その解答として、“車いすを使用している人”を最初に思い浮かべた人も多いでしょう。なぜなら、多機能トイレの出入り口付近には、車いすマークがしめされていることも多いため、それを見た記憶が入試問題と結びつくからです。

しかし実際は、さまざまな事情を持っている人が多機能トイレを利用しています。この入試問題は、「広い空間」と「設置されている機能」という、目で見て認識できる多機能トイレのつくりの違いから、幅広い利用者の存在に気づくことを促しています。受験生は利用対象者の具体例を2つ考えるなかで、自分が何気なく利用している施設や空間からも、社会の多様性に気づくことができると体感したのではないでしょうか。

ここ数年、日本国内では、東京でのオリンピック・パラリンピックの開催に向けて、しょう害の有無に関係なく、くらしやすい社会をつくろうとする機運が高まっています。また、訪日外国人旅行者や在留外国人の増加を受け、グローバルな視点を持って多様な文化と共存していく姿勢が今まで以上に重要となっています。身近なところから、自分とは異なる事情を持ったさまざまな人がいると気づくことは、多様性を認め合い共生する社会をつくっていくための第一歩になるといえるでしょう。

以上の理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。