出題校にインタビュー!
フェリス女学院中学校
2020年11月掲載
フェリス女学院中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.多様な経験の場を提供している、それがフェリス女学院の魅力
インタビュー3/3
人の頭の中は実に広い
読書のほかに想像力は養えるものはありますか。
先生 新聞、テレビ、ラジオ…なんでもいいと思います。外からの情報をどんどん受け入れて、それをもとに考えていく、ということですね。
思い出すのは夏目漱石の『三四郎』の冒頭です。広田先生が「日本より頭の中の方が広いでしょう。囚われちゃ駄目だ」 と語る場面があるのです。頭の中は広いですよね。昔は一人で本を読んでいる人に対して周りと断絶しているようなイメージを持っていましたが、その人の頭の中というのは実に広いと思うのです。きっと、いろいろなことにとらわれていないと思うのです。それを徒然草の作者は「見ぬ世の人を友とするぞ、こよなうなぐさむわざなる」と言っている。あれですよね。

フェリス女学院中学校 体育大会
無関心は一番人が育たない
なかなか本を読まない子もいると思います。対策はしていますか。
先生 読書ノートを必ず提出させています。中学1・2年生の授業では、前期に最低でも10冊 、後期に最低でも10冊。年間で最低20冊、読むように目標設定しています。それも自分の好きな本ではなくて、 国語科が作ったリストから本を選ばせています。リストアップしている本は、若いうちから読んでおくべき小説や詩です。いやいやでも本を読んでいれば何か得るものがあると思います。反発も一つの反応なのです。一番いけないのは反発もなにもしないで無関心であるということ。それはもっともフェリスらしくない行為だと思います。マザーテレサの言葉に「愛の反対は憎しみではなくて無関心だ」という言葉があります。無関心というのは一番人が育たないので、反発でもなんでもいいので、気持ちを動かしてほしいと思っています。
問題の答えがなぜそうなるのかを考えよう
読書以外に、国語力を伸ばすオススメの学習方法があれば教えてください。
先生 問題集を解く時に、私は答えを見てもいいと思っています。その時に考えなければいけないのは、なぜこの答えになるのかということです。問題集をただ解いて、答え合わせをして「合っていた」「間違っていた」ということではなくて、なぜこの問題の答えはそれなのか、そのプロセスを考えることが大切なのです。また、問題を解いた後に、間違えたところは、必ずその理由を考えることが大切です。間違えた理由がわからないと、同じ間違えをするからです。生徒たちにも、「間違えたら、なぜ間違えたのか。それを考えなさい」と、定期試験の後に必ず話しています。
先生のそういうアドバイスを守って、入学後に大きく伸びる生徒さんはいますか。
先生 たくさんいます。6年間ありますから、高3の授業を持つと、本当に考えたものを書いているな、と思う生徒が何人も出てきます。ただ、我々は手伝うだけで、本人がその素地をもっていたから伸びたのだと思います。
そういう生徒はどの教科の学習も疎かにしていません。行き届いている文章を書く生徒は数学もできています。私も経験していますが、日本語の文章を自分の中できちんとメソッドを立てて読み解けるようになると、中学時代に分からなかった数学が分かるようになるのです。

フェリス女学院中学校 フィールドワーク
常識を捨てた時に変化が起きた「オンライン授業×書道」
新型コロナによる休校期間中はどのように過ごしましたか。
先生 ホームページに保護者と在校生だけが見られるページがあります。そこに、 少しでも礼拝の代わりになるように、という思いを込めて、聖書科の教員が「今日のみことば」というタイトルで聖書の言葉と解き明かしのメッセージを掲載しました。毎朝、礼拝が始まる8時半に更新していると、生徒から「讃美歌も掲載してください」という声が出て、対応しました。遠足用の小さな冊子に載せている讃美歌の中から選んで載せると上級生は自分で歌えます。また、事務連絡も含めてですが、校長からのメッセージも毎日掲載しました。担任、カウンセラー、保健室などからもメッセージを出しました。
学習につながるところでは、オンデマンドの公開講座などを紹介しました。最初は紙に印刷した課題を郵送していましたが、 そのうちにインターネット上にアップロードするようになり、オンライン授業の体制も整っていきました。
一番の問題は、生徒と連絡が取れないことでした。各教科へ質問もあるだろうし、担任の先生に連絡を取りたいこともあるだろうということで、途中からは教科別のアドレスを共有しました。
生徒の方の反応はどうでしたか。
先生 思っていた以上にたくさんの質問がメールで来ました。教科宛なので他の先生への質問も見ましたが、生徒は鋭いな、と思いました。いろいろな気づきがあって おもしろかったです。
オンライン授業でおもしろかったのは書写でした。文字を書いている教員の手元を、書画カメラを使って上から撮影するとわかりやすいのです。
先生 そうですね。書き手の目線で見られますから。これからの授業でも活用できると思いました。
先生 それこそ常識を破る出来事でした。まさかオンライン授業と書道が、こんなにうまく結びつくとは思いませんでした。これまでの常識では考えられないことでした。
先生 対面授業では「先生が書いてみるからよく見て」と言っても、生徒は逆さまから見るのでよく分かりませんでした。
先生 なるほどこうすれば良かったのかと、わかりました。常識を捨てた時に変化が起こりました。
卒業後に実感する、朝の礼拝から1日が始まる贅沢さ
先日、貴校に進学した教え子が来て、話をする中で、「フェリスでよかった」と言っていました。
先生 それは嬉しいですね。フェリスの良いところは、自分で考えたり、いろいろなことを結びつけて、これはどうなのかな、あれはどうなのかなと思いを巡らせたりすることができる環境だと思います。授業も双方向ですから、人の意見に感化されて気づくことがたくさんあります。大学にしても社会にしても、そういう力が大いに役立つと思います。
もう1つ言えるとすれば、いろいろなことをやれるということでしょうね。勉強一筋ではなくて、遊びもあるし行事も多いし、いろいろなことをやっているので、多角的なものの見方が養われるのではないでしょうか。ある意味、回り道ではありますが、それがフェリスの教育だと思います。
朝の礼拝の時間にしても、その時間を使って授業など、別のことをしようという考えは全くないです。本校の教育の基盤は礼拝なのです。在学中、そこで居眠りをした生徒も、卒業して、そういう朝の時間の過ごし方がなくなった時に、 私たちはなんと贅沢な時を与えられていたのか、ということを実感するようです。
6年間、「礼拝は無駄だ」と言って反発し続けた生徒が、卒業後にふと学校に来て「先生、私、礼拝に出たくなりました」と言った時は、天地がひっくり返るような驚きを覚えました。なくなるとその大切さがわかるのです。
広い意味で宗教というものが人間に与える影響というか、価値というか、意味というか。それを実感してくれて、礼拝が非常に懐かしいものになります。そういうものも含めてフェリスという学校は非常に多様な経験の場を提供しているのではないかと思います。

フェリス女学院中学校 毎朝の礼拝
インタビュー3/3