シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

フェリス女学院中学校

2020年11月掲載

フェリス女学院中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.英語検定で1級を持っていても英語で主張できるとは限らない

インタビュー2/3

4技能の根底に「考える」がある

先生 英語の4技能<読む・聞く・書く・話す>がありますよね。フェリスの国語科ではそれにもう1つ「考える」をプラスして、5技能が大事であると考えています。それは英語でも同じですよね。
「考える」がなければ何も書けませんし話せませんからね。考えるためには、読んだり、聞いたりしなければなりません。5技能が相互に求められるのです。今までは「読む」というところに偏っていたところがあります。インプットしなければアウトプットできないわけですから、正しいことは正しいのです。読んだところで考える。それを表現する。それが自分に返ってくる。

それらは並び合っているのでしょうか。

先生 どうなんでしょう。やはり複雑に絡み合っているのでしょうね。

考えながら読まないと何も残らないですからね。

先生 根底にあるのは「考える」ということなんでしょうね。人の話も考えながら聞かなければいけません。考えることによって、頭の中に大事なことが残るのだと思います。「右の耳から入って左の耳から出る」というのは、おそらく「考えていない」ということだと思います。

フェリス女学院中学校 授業風景

フェリス女学院中学校 授業風景

検定はあくまでも技術を問うもの

英語検定には思考力を問う問題なども含まれているのでしょうか。

先生 英語の4技能は、あくまでも情報の受け渡しに関するインプット、アウトプットの技能であって、検定試験も、いわゆる人間のもつ言語技能や言語能力の一側面に触れていると思います。ですから4技能を判定する、測定する、といっても、それでその人が自分の思考を働かせて意思などを、言葉で相手に伝えることができるかというと、別の次元だと思います。
検定試験が技術を問うものであるとすれば、それが身についているかどうかは別として、その先に技術を問うことの意味はあまりない、ということかもしれませんね。漢字検定も、高い級を持っている人が文章を読めるかというとそうではないと思います。

文学作品も筋道を立てて読むことが必要

文章を読み解く力をつけるには、どのような方法が有効ですか。

先生 人間が実際に体験できることはそう多くありません。それを補うのが読書です。ただ文字を追うのではなくて、想像力を働かせることによって、登場人物が何を言っているのか、どんな気持ちなのか。そういうことがわかるようになります。想像力が広がれば広がるほど、いろいろなことを理解する力、思いやる力になると思います。
想像力が働かないと、人間はとんでもないことをします。自分がこういうことをしたら世の中はどうなるのか。そういうことが想像できなければとんでもないことを平気でしてしまうと思うのです。そういう意味でも読書は大事なのではないかと思います。それは実体験以上の体験になると思います。

普段の授業でも、生徒さんにそういう機会を与えていますか。

先生 そうですね。読書で想像力を働かせるということは、勝手な想像ではありません。その前提として、きちんと言葉を受け取って論理的に紐解くことが大事になります。文学作品を読んで主人公の気持ちを考えるにしても、この言葉があるからこういうことが言える、というように、言葉と言葉のつながりを客観的に考えて、こういう関係性があるからこういう気持ちになったのだ、と結論づけることにより、その想像が確かなものになります。新しい高校のカリキュラムは「論理国語と文学国語に分かれた」と言いますが、文学も論理で読むのです。筋道を立てて読むことが必要であり、感性だけでは読めません。自分の感性だけで読んでいたら独りよがりな読み方になると思います。

フェリス女学院中学校 競技かるた部

フェリス女学院中学校 競技かるた部

筋道を立てて読むには語彙力と文法力が欠かせない

先生 本や文章を筋道を立てて読むには、必ず語彙力と文法力が必要になります。本校の生徒でも、「人の気持ちがわからないから小説が読めない」「感性がないから読めない」と言う生徒がいますが、感性の問題ではありません。中学生レベルの作品でいえば、語彙力の問題だと思います。気持ちを表している言葉を見つけられるかどうかなのです。まず気持ち言葉を探す。次に、気持ち言葉ではないけれど気持ちに関係する言葉を探す。寂しい、悲しい、楽しいなど、直接的な表現ではなくても、よく考えてみたら、これはこの人にとって悲しい内容を表しているのではないか。楽しい内容を表しているのではないか。そういう表現があると思うのです。それを見つけるために語彙力が必要なのです。

ですから、私が中学生の授業を持つ時は必ず辞書を用意させています。正確にその言葉を把握しないと読めないので、「手元に置いて、少しでも分からないところがあれば辞書を引きなさい」と言っています。また、授業の中で「この言葉は何?」「どういう意味?」などとうるさく聞いて、最初はそのつど「辞書を引きなさい」と言うのですが、そのうち言わなくても辞書を引くようになります。辞書を引くことが習慣づかないと言葉は増えていかないので、こつこつと積み重ねることを心がけています。

わかっているつもりでも、文章を書いたり読んだりする時にあやふやで辞書を引くということがありますよね。

先生 私もそうです。この言葉、わかっているつもりだったけど、後で考えると全然わかっていなかったなと思う時があります。辞書を引くと、そういうことだったのか、と。辞書を引くことの大切さを再認識することが結構あります。

フェリス女学院中学校 修養会

フェリス女学院中学校 修養会

古文も英語もツールを習得して使いこなせるようになると楽しい

文法についてはいかがでしょうか。

先生 本校は、学校のスタンスとして文法を大切にしていると思います。文法を深めることによって、正確に読むだけではなく、深く読むことができるからです。よく「古文は文法があるから嫌いだ」「文法なしでハートで読めばいいのよ」などと言われますが、その考え方は間違っています。例えば「けり」という言葉には気づきを表す機能があります。それを知っていれば、「けり」という助動詞1つから、なぜ「けり」を使うのか。どんな気づきがあったのか、と深く考えることができます。助動詞一語がものすごく雄弁に物語っているのです。文法を学習すると楽しく古典作品を読めるのですが、面倒くさいので、ツールの使い方を習得する以前に嫌になってしまう人が多いのです。コンピューターでも何でもそうですが、ツールを習得して使いこなせるようになれば楽しいので、ぜひ学習してほしいと思っています。

インタビュー2/3

フェリス女学院中学校
フェリス女学院中学校フェリス女学院の教育理念“For Others”は、誰か特定の人によって提案されたものではなく、関東大震災後に、誰が言い出すともなくキャンパスに自ずとかもし出され、フェリス女学院のモットーとして自然に定着したものだということです。フェリス女学院では、“For Others”という聖書の教えのもと、「キリスト教信仰」・「学問の尊重」・「まことの自由の追求」を大切にしています。そして、生徒一人ひとりが、6年間の一貫教育を通して、しなやかな心を育み、つねに与えることができる、“For Others”の精神を持った者へと成長することをめざしています。校章には、盾に創設時の校名Ferris SeminaryのFとSの二文字がデザインされています。盾は外部の嵐から守る信仰の力を表し(「エフェソの信徒への手紙」6章16節)、白・黄・赤の三色は信仰、希望、愛(「コリントの信徒への手紙一」13章13節)を表しています。
外国人墓地や歴史的な建造物の多い異国情緒あふれる地域にある、落ち着いた雰囲気の学校です。創立者メアリー・E・ギターがこの地に開学して以来の歴史が、校舎を包む木々などから感じられます。2000年の創立130周年において新校舎建築となり、2014年には新体育館、2015年夏には新2号館が完成しました。中高の図書館には、図書・視聴覚資料・雑誌・新聞などの94,000点を超える資料があります。授業の課題制作や調べものや自習のほか、昼休みや放課後にも多くの生徒が利用しています。書庫は開架式で、図書を手に取って自由に選ぶことができます。
クラブ活動がたいへん盛んで、同好会、有志も合わせると約60近い団体が活動しています。中学生では、ほぼ100%の生徒がクラブに参加しています。ほとんどのクラブが中1から高2まで一緒になって活動し、同学年だけでなく、先輩・後輩という他学年との人間関係が築かれています。中3からは、クラブ以外でも、気のあった仲間同士で同好会や有志を結成して文化祭に参加するなどの活動もあります。