シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

麻布中学校

2020年10月掲載

麻布中学校【理科】

2020年 麻布中学校入試問題より

(略)

日本で一般(いっぱん)的に見られるウナギ(ニホンウナギ)は、日本から2000km離(はな)れたマリアナ諸島西側の深い海で産卵(さんらん)することがわかっています。生まれたばかりのウナギは①レプトセファルスと呼ばれ、海流に乗って西に移動します。そして東アジアの沿岸にたどり着くころには、体長6cmほどの②シラスウナギと呼ばれる稚魚(ちぎょ)に姿を変え、たまたま流れ着いた川をさかのぼります。

(略)

2014年に、ニホンウナギは絶滅危惧(きぐ)種に指定されました。今後のウナギの減少を止めるために、ウナギを卵から数世代にわたって大量に養殖するための研究が日々進められています。研究の成果を期待するのと同時に、私たちは自然のウナギを増やす努力もしていかなくてはなりません。

(問)下線部①、②について、次の写真の一方はレプトセファルス、もう一方はシラスウナギです。レプトセファルスは(ア)、(イ)のうちどちらだと考えられますか。記号で答えなさい。また、その形がどのような点で役立つのか説明しなさい。

レプトセファルスとシラスウナギ

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この麻布中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(記号)(ア)
(理由)体が平たい形をしている方が水の流れを受けやすく、海流に乗って移動するのに役立つから。

解説

文章や写真から、ウナギについて、どのようなことが読み取れるのかをさぐってみましょう。
文章からは、以下のようなことが読み取れます。

  • ウナギは日本から2000km離れたマリアナ諸島西側の深い海で産卵する。
  • 生まれたばかりのウナギをレプトセファルスと呼び、海流に乗って西に移動する。
  • 東アジア沿岸に着くころにはシラスウナギという稚魚に姿を変え、川をさかのぼる。

また、2枚の写真(ア)、(イ)を比べると、(ア)は平たい形をしているのに対して、(イ)は細長い形をしていることがわかります。

これらの情報を結びつけると、レプトセファルスは、海流に乗って運ばれていくのに適した形をしていて、シラスウナギは川をさかのぼるのに適した形をしていると推測することができます。(ア)のような平たい形をしている方が、水中を浮遊し、海流に乗って流されやすいので、レプトセファルスであると考えられます。また、(イ)のような細長い形をしている方が、川をさかのぼるときに水の抵抗を受けにくいので、シラスウナギであると考えられます。

日能研がこの問題を選んだ理由

文章や写真から読み取った情報をもとに、ウナギの幼生の形を推測し、その理由を説明する問題です。
子どもたちは、問題に示された文章や写真から情報を読み取り、読み取った情報を結びつけることによって、幼生がどのようなすがたをしているのかを根拠を持って推測していきます。

ニホンウナギが絶滅の危機に瀕しているというテーマは、近年ニュースなどでもとりあげられる機会が増え、多くの子どもたちにとって見聞きしたことがある話題だと思われます。この問題では理科的な視点でウナギの生態に目を向けていますが、知れば知るほど養殖や食糧生産などの問題とのつながりが深いことに子どもたちは気づくことでしょう。

また、この問題でとりあげているテーマは、まさに今、私たちが直面している課題でもあります。問題に取り組むことがきっかけとなり、自分自身の行動がどのようにこの課題につながるのかにも思いを馳せることができるでしょう。

このような理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。