シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

栄東中学校

2020年10月掲載

栄東中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.入学後の授業内容がイメージできる入試問題を出題

インタビュー1/3

この問題の出題意図はどのようなものかを教えてください。

大塚先生 毎年「体験したことを書きなさい」といった内容の問題を出題しております。栄東では自分を表現する場をたくさん設けているので、入試においても受験生の表現を見られたら面白いかな、という想いから出題に至りました。普段の授業の中で「読書ノート」というオススメ本を紹介するノートを書かせているのですが、作問していく中でそういった本校生徒の活動を絡めて問題が作れないか、と考えた結果です。
学校としてこういうプログラムをやっていることを広く知ってもらいたい、という想いも込めて作問しています。

佐藤先生 受験生にとっては、国語や算数は合格のためのハードルとしか考えていないこともあって、入学後にはどんな学びが待っているかをイメージしてほしい、という意図もありました。

国語科/大塚 翔先生

国語科/大塚 翔先生

独創性のある解答が書ける生徒を求めている

採点はどのように行われているのでしょうか?

大塚先生 解答の具体性と独自性を見ていますが、特にオリジナリティのある解答を求めています。具体的に言うと「あらすじや要約といった内容だけではなく、考えや感想を中心に書いていること」と問題文にあるので、「その考えにどれだけ自分を出せるかどうか」というのが、丸が付くかどうかの大きな分かれ目です。同じ本でも考えること、学び取ることは十人十色なので、どれだけ考えたことを表現できたかどうかで丸が付くか三角が付くか大きく分かれますね。

具体的であってもあらすじにとどまっていると丸になるのは難しいのでしょうか?

大塚先生 そうですね。自分の考えを書いてほしいというのが自由記述問題の解答の軸となっていますので、それをしっかりと書いてほしい問題ですね。
また同じ本を紹介しているものはどうしても出て来てしまいますが、自分の考えが書かれているものは「本当にこの子はこの本が好きなんだな」という気持ちが伝わってきて丸がつきやすいです。

選んだ本のジャンルではなく、文章構成ができているかが採点対象

子ども達が選ぶ本にはどういったジャンルのものが多いですか?先生方が全く知らない本もあるのでしょうか?

大塚先生 小説が多いとは思いますが、我々教員もなんとなくは知っているものが大半です。教科書の内容や推薦図書を読んで書いてきている子もいます。森鴎外の高瀬舟とか、平家物語などジャンルは様々です。とはいえ、さすがに高瀬舟は驚きまして、小学生で高瀬舟を読んでいる、と教員でもかなり話題になりました。また、自分が読んだものと同じ本を選んだ子には「この子もこんな本を読んでいるんだ!」と親近感がわきますね。

書き切れずに終わってしまった子もいますが、本が好きな子なら問題なく書けるんだろうなという気がします。好きな子は作者まで書いてきます。別に作者を書くことまでは求めていないのですが、ちゃんと重松清やミヒャエル・エンデなど書いてきますし、思い入れがあるなということが伝わってきます。空欄といったものはほとんどありませんでした。

本のジャンルは特に指定していませんが、漫画を選んだ子はいませんでした。ただ、漫画のノベライズ本のようなものを書いてきた子は何人かいましたが、選んだ本で減点といったことはしませんでした。問題文に明確に記載はないけれども、何となく漫画はダメだろうという認識は子ども達にもあったのではないかと思います。

ただし漢字の間違いは減点対象です。そこまで厳密には見ていないですが、明らかに「てにをは」が変な文章や、文章のつじつまが合わないものについては減点しています。

栄東中学校 校舎

栄東中学校 校舎

文章読解スピードは簡単には鍛えられない

次に入試問題全体の構成などについて教えてください。

佐藤先生 当校の場合は全般的に文章が長くなってしまうのですけれども、それは読むスピードを担保したいからです。読むスピードはなかなか鍛えられない部分でもあり、中学・高校と6年間見ていても、中学受験の入り口である程度スピードがある子どもはその後もそのスピードが保てます。
言葉というのは、中学の入り口である程度の差が歴然とあることを感じてしまいますね。

伊藤先生 言葉が違うということは持っている意味が違う、ということですが、言葉をたくさん知っている子はそのことを理解していて、状況や心理の細かな違いを言い換えようとします。

たとえば「学校に行く途中で、すごい人がいた」という文を書いた場合、その「すごい」とは、どんな内容を指すのでしょう。「おびただしい人数」だったのか、「有名人」だったのか、「格好が奇抜」だったのかなど、すごいという言葉はあまりにも意味が広すぎてざっくりとしているわけです。だからこそたくさんの言葉を見つけ、自分の心と向き合ってそれに合った表現をすることを大切にしてほしい、と思っています。

栄東中学校 建学の精神

栄東中学校 建学の精神

読書量や普段の生活で使う語彙力の差が合否のポイント

大問2の問題ですが、語彙のレベルが高く、文脈の中で判断しないといけないような問いということもあって、小学6年生には難しいのでは?と感じたのですが。言葉の力を大事にしている問題でしょうか?

佐藤先生 確かに難しく感じるのですが、基本的には小学生の使う辞書からしか出題していません。漢字にしてしまうと、子ども達が知っている漢字より小学校の配当漢字は少ないんです。子ども達にはもっと伸びる要素があるのに、規制がかかってしまっているのが現状なんです。そのように漢字には規制があるものの、言葉に関しては規制がありません。私学である我々としては、その囲いの中から言葉の部分を引き出してあげたいと思っています。

伊藤先生 語彙力のある子は正答率が高いですね。ここは実力差が出る問題だと思います。あっさり解答する受験生もいれば、だいぶ苦戦したんだろうな、という子もいるので、普段の読書量や生活の言葉の力に左右されるのだと思います。

漢字はただの記号ではなくきちんとした意味があると知ってほしい

この問題がさらっと解ければ、その後の問題に時間をかけることができますね。他に、同音異義語や同訓異字の問題もありますが、何か意図があるのですか?

大塚先生 中学生でも漢字が覚えられない子は漢字をただの記号としか見ていない傾向が強いんですが、漢字はアルファベットと違って一つ一つに意味があります。無限にある漢字をそれぞれ覚えるというよりは、連想させていくほうが覚えられるのではないのかな?という想いもあって出題しています。正答率ですが7割くらいの受験生は正解でした。正解のほうが圧倒的に多かったですね。

この問題は言葉が出たというだけでなく、漢字の書き取りの面も見ているのでしょうか?

伊藤先生 当然、画数が違って見えるようなものはバツになってしまいます。できる子の場合、選択肢を見ないでもできてしまう子も中にはいるのではないでしょうか。そういう子は、問題を解いた後に選択肢をちらっと見て「やっぱりこれだ!」と進めているように感じます。

栄東中学校 図書館

栄東中学校 図書館

解いていくうちに理解が増していく問題が作問の理想形

物語文を選ぶのにはこだわりがあると伺いましたが、素材を選ぶときの基準は何かありますか?

佐藤先生 なるべく年度の新しい小説や論説を使おうと意識はしていますが、上手いものが見つからない場合は必ずしもその限りではありません。作り手の癖もあるので「これで作れそう!」というのは作問者によって違うのかなと思います。
「読んでいて感動する本を出したい」とこだわっている教員もいます。
字数が長くなってしまうのが課題ではありますが、読みやすいのであまり時間をかけずに読むことはできます。難しい題材の論説文は、取っつきにくいと感じる子もいるかもしれません。

あまり抽象的な内容は選ばないようにしていますが、作問にあたっては、問いを解いていけばある程度内容がわかるような工夫はしています。普通に素で読んでいくよりも、設問を解くことによって文章理解が深まっていくのが我々の理想とする作問なのですが、なかなか難しいですね。

インタビュー1/3

栄東中学校
栄東中学校平成4年に中学校が開校し、中高一貫教育が開始された。時代の変化に先駆けて、アクティブ・ラーニングを取り入れ、「①授業、②校外学習、③キャリア、④部活動」という4つを軸に分けて展開している。授業での工夫という枠を超えて、生徒の学びの場すべてをアクティブ・ラーニング実践の場ととらえ、学校そのものがアクティブ・ラーニングの場である。特定の教員が実践するのではなく、全教員がアクティブ・ラーニングの実践者であることが最大の特徴である。
大学入試結果は教育の成果であり、そこにいたるプロセスと大学卒業後、社会で生きる力の育成に関する学校としての方針をアクティブ・ラーニングという理論に基づいて計画して実践している。授業は常に見学可能であり、教員同士がいつでも授業を見せ合う環境となっている。中1の入学時点では人の前でプレゼンテーションすることが苦手な生徒でも、中3までの間に至極当然のこととなっていくということである。
建学の精神「人間是宝」の理念は、『人間はだれもがすばらしい資質を持った、宝の原石であると考え、その原石を磨き上げ、文字通り本当の「宝」として育てること』であり、そのために、校訓「今日学べ」(今日のことは今日やり、勉強も仕事も明日に残さない)を掲げている。
広大な敷地には、勉学に専念するための充実した施設があり、先生方も遅くまで生徒たちの学びにつき合うことも多いという。勉強だけではなく、多くのクラブ活動も盛んであり、それは学校での生活すべてがアクティブ・ラーニングであるということに通じている。