シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

青山学院横浜英和中学校

2020年09月掲載

青山学院横浜英和中学校【社会】

2020年 青山学院横浜英和中学校入試問題より

次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。

(略)日本の自販機のあゆみを見てみましょう。(略)
さらに、子供や車椅子の方でも押しやすいようにボタンを低い位置に設置してある自販機や、「とろみボタン」つきのカップ式自販機など、さまざまな立場の方に配慮(はいりょ)した自販機が登場しています。自販機はわたしたちの “いま” を見つめ、そしてわたしたちの “未来” も見すえて存在している、まさに社会の鏡なのです。

(問)下線部について、近年、下の地図記号が示す施設などにおいて、コーヒーやココア、緑茶などに少しねばり気のある “とろみ” をつけることができる自販機の設置が進んでいます。このような施設に「とろみボタン」つきのカップ式自販機を設置することの利点を1つあげて、簡潔(かんけつ)に説明しなさい。

地図記号

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この青山学院横浜英和中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

例1:飲み物があやまって気管に入るのを防げるので、高齢者でも安心して飲むことができるようになる。

例2:飲み物にとろみをつける作業が自動化されるので、病院や老人ホームで働く人の作業時間が節約され、他のことに時間をかけられる。

例3:自販機でとろみをつけられれば、病院や老人ホームの利用者は、今までより幅広い選択肢の中から飲みたいものを選ぶことができる。

解説

「地図記号で示す施設などにおいて」、「“とろみ”をつけることができる自販機の設置が進んで」いることが手がかりとなります。地図記号で示されているのは、病院と老人ホームです。とろみをつけられる自販機の設置が進んでいるということは、そこに飲み物のとろみづけを自動化することへの需要があるということです。なぜ、病院や老人ホームにはそうした需要があるのかを考えてみると、「とろみボタン」つき自販機を設置する利点が見えてきます。

日能研がこの問題を選んだ理由

この問題では、「とろみボタン」つき自販機を設置する利点を考えます。多くの人が最初に思い浮かべるのは、飲み物にとろみをつけることで誤嚥(ごえん)を防止できるという利点でしょう。ここで着目したいのは、「利点を1つあげて」という問題文です。この言葉は、「とろみボタン」つき自販機を設置する利点は複数あることを示しています。そこで、「なぜ誤嚥防止のとろみづけを自動化するといいのか」を考えてみると、病院や老人ホームが慢性的な人手不足に陥っていることや、それによって施設利用者の希望する飲み物が十分に提供されていない可能性があることに気がつきます。つまり、飲む人の立場だけでなく、飲み物を提供する人の立場にも、目を向けることができるのです。

自販機の「とろみボタン」のような新しい機能は、日々開発されていきます。そうした進化・変化を知った時、「その機能には、どのような利点があるのか」を考えることは、「その機能によって、“今”がどのようにより良くなるのか」を考えたり、「今の社会がどのような課題を抱えているのか」を知ったりすることにつながります。

この問題からは、“さまざまな立場の人がくらしやすい未来を、社会全体でつくっていくことの大切さ”が伝わってきます。また、“今を見つめて、1つずつ変えていく・工夫していくことで、目指す未来に近づくことができる”というメッセージも込められているように感じます。子どもたち一人ひとりが“今”を見つめる目を養うことは、“未来”をつくる社会の一員として、欠かせないといえるでしょう。

以上の理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。