シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

学習院中等科

2020年08月掲載

学習院中等科の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.たくさんの経験は後の学びにプラスに働く

インタビュー2/3

知識と経験を結びつけられるお子さんを歓迎

理科の入試問題で大切にされていることは何ですか。

田中舘先生 教科書で学習したことと身近な現象を結びつけて考える問題を出したいと思っています。
例えば、カーブした河川の外側は流れが速く、川底がえぐられて深くなっています。子どもは理由を聞かされていなくても、「あそこは危ないから遊んではダメ」と注意されたことがあるでしょう。
過去の入試問題でその理由を出題したことがあります。目に見える「流れが速い」ことは指摘できたものの、目に見えない川底の様子を挙げた受験生は少なかった。見えないところまで発想を巡らせることができるといいですね。
このように、知識と経験を結びつけて考える力のあるお子さんが解きやすい問題づくりを心がけています。

学習院中等科 地学実験室

学習院中等科 地学実験室

法則が実生活でどう応用されているかも問う

土屋先生 私は物理を教えています。物理の問題では、提示した実験データを用いて、条件を変えたとき結果がどうなるか考えます。また、実生活でどんなところに応用されているかも触れるようにしています。

2020年度第1回入試は、ふり子の運動の実験を出題しました。ふり子の長さ、重さ、ふれ幅を変えたときの往復時間のデータを読み取って答えます。さらに、ふり子の原理を応用したふり子時計やビルの免震システムについて考える問題を出して、学習したことと社会との接点も意識させるようにしています。

聞き流していては正解できない時事問題

土屋先生 大問1の自然科学の時事問題(選択問題)は、本校の定番です。この1年の自然科学の話題を取り上げます。日本人がノーベル賞を受賞したときは、ノーベル賞にちなんだ問題を出しました。

「なんとなく」聞いたことがある程度では正解できそうにない問題ばかりですね。

土屋先生 時事問題のねらいは、自然科学に興味・関心を持ってもらうことです。興味を持てば多少なりとも調べるでしょう。「聞いたことがある」だけでなく、調べたからこそ答えられるような問題にしています。難しい内容でも小学生が理解できる部分はありますから、興味を持ったら一歩踏み込んで調べてほしいと思います。
難しいことはご両親に聞いたり一緒に調べたりすると、理解が深まりますし、覚えやすいと思います。時事問題が家族の会話のきっかけになればいいですね。

田中舘先生 授業の中でも話題になっていることを取り上げています。地学関連なら、7月2日の火球の観測、6月21日の部分日食など、授業の始めに“小話”をして生徒を引きつけます。

土屋先生 そうして理科の学びと日常との接点を意識させることで、私たちの周りはいろいろな現象にあふれていることに気づいてほしいと思います。

理科/土屋 良太先生

理科/土屋 良太先生

理科もリード文をじっくり読む力が必要

土屋先生 受験生の答案を見ると、分野によって得意・苦手があるというよりも、データを活用して解く問題、長いリード文を読んでヒントを見つけて解く問題のように、「考える」問題に苦戦しているように感じます。
生物の問題はリード文が長いけれど、しっかり読めば問題を解く手がかりを見つけることができるはずです。「読解力」も求められます。

この問題に限らず、小学生の理科の文章記述力としてどの程度を求めていますか。

田中舘先生 「てにをは」が多少乱れていても、要点を押さえていればよしとしています。行間もできるだけ読み取って加点するようにしています。

土屋先生 ただ、理科の問題ですから、道徳的、社会的な視点ではなく、科学的な視点で書くことを忘れないようにしましょう。

学習院中等科 実験室の廊下に貼られた科学関連記事

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遊びの経験はどこかで理科の学びにつながる

受験生の学ぶ姿勢や日常生活における興味・関心の持ち方として、望まれることはありますか。

土屋先生 子どものうちからいろいろなことに触れて経験してほしいですね。例えばシーソー遊びは、体格差があっても、大きい子は中心側に、小さい子は外側に座ればつり合いが取れます。そのときはてこの原理を知らずに遊んでいたとしても、やがて学習したとき、「そういうことか」と合点がいくでしょうし、深く理解できるでしょう。経験の有無は後の学びに影響してくると思います。

インタビュー2/3

学習院中等科
学習院中等科1847(弘化4)年、孝明天皇により京都につくられた公家の学問所が始まり。「ひろい視野、たくましい創造力、ゆたかな感受性」の育成に力を入れている。早い時期から帰国生を受け入れ国際化する現実にも即応。アメリカ・メリーランド州セント・ポール高校と、高等科との交換留学も行われている。
中等科は大学までの基礎と位置づけられ、じっくりと基礎学力を養成する。近年は学習院大学への進学は5割程度。JR山手線・目白駅からすぐの学習院大学と同じ敷地内にあり、校地の広さと緑の多さは都内でも随一。
中高が独立しているため生活環境ははっきり違う。中等科では規律正しい指導をするが、高等科は自主性を重んじた自由な校風となる。クラブ活動は原則として、中等科は週4日。硬式テニス部、陸上競技部、囲碁将棋部は全国大会に出場する実力派。天体観測や化石採集を行う地学部は文化部でもっとも人気がある。