シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

学習院中等科

2020年08月掲載

学習院中等科の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.机上の学習だけでなく世の中の動きにも敏感になろう

インタビュー1/3

ハザードマップから自宅は大丈夫か、踏み込んで考える

田中舘先生 理科は生活と密接に関わっている教科です。地学は外に出れば、地層、気象、天体など学ぶ題材があちらこちらにあります。
この問題では中野区のハザードマップを取り上げました。問題を解いて、できた・できなかっただけで終わりにせず、「自宅はどうだろう?」と踏み込んで考えてほしいですね。

最近はインターネットで古地図や航空写真を検索・閲覧できます。この問題をきっかけに自分が住む地域のことに興味・関心を持ってもらえたらうれしいですね。
この明治期の地図を見ると、昔は川沿いが田んぼでした。ということは、この地域の地盤は水はけが悪い、つまり浸水に注意しなければならないとわかります。自分が住む地域がどのように利用されてきたか、土地の履歴を調べてみるのもおもしろいのではないでしょうか。

理科/田中舘 宏橘先生

理科/田中舘 宏橘先生

道路の上り下りや曲がりくねりには理由がある

明治期の地図にあった河川が、現在の地図には載っていません。どうなったのでしょうか。

田中舘先生 おそらく、暗渠(あんきょ)になっているのではないかと思います。河川は完全に埋め立てず、地下に埋設したり、ふたをかけたりして、その上を道路にするのです。東京は道路の下に中小河川が流れている場所が結構あります。

そういうことを知っていると、いつもの散歩が楽しくなりそうです。

田中舘先生 新しい道路はまっすぐ作るのが普通ですが、蛇行している場合はかつて河川だった可能性があります。
私たちは普段、道路の上り下りや曲がりくねりを気に留めることはないでしょう。けれど、当たり前のことに疑問を持ち、立ち止まって考えてみてほしいと思います。

学習院中・高等科 校門

学習院中・高等科 校門

提示した3つの地図を活用して答える

正答率はいかがでしたか。

田中舘先生 出来具合はよかったと思います。予想通りというところでしょうか。聞いていることは理科の教科書の範囲外ですが、それぞれの情報を組み合わせれば解答できる問題だと思います。
文章記述問題は通常いろいろな答えが見られるのですが、この問題の解答パターンは予想より少なかったですね。ただ、採点していて感心するような解答も見られなかった印象です。今の道路の曲がり具合が昔あった河川に沿っていることを指摘してくれたらと思いましたが、そうした答案はありませんでした。

得点できなかった解答はどのようなものでしたか。

田中舘先生 現在の地図しか見ていない、つまり、ハザードマップと明治期の地図が結びついていない解答が、少数ですがありました。地図が3つあるので見逃してしまったのかもしれません。

知らない用語はリード文に手がかりがある

田中舘先生 この問題は「ハザードマップ」を知っていれば解きやすかったでしょう。たとえ知らなくても、どんなものかわかるようにリード文で説明しています。

受験生は社会科でハザードマップに触れていると思います。

田中舘先生 教科の枠を超えた内容を取り上げる際は、リード文にヒントになることを盛り込むようにしています。したがって、ていねいに読む力も求めています。問題中に知らない用語があっても、あきらめないことです。リード文に当たれば手がかりがつかめるように作問しています。

土屋先生 ハザードマップについては、洪水被害が多い昨今、ニュースで見聞きしていると思います。机上の学習だけでなく、世の中のことに目を向けていろいろなことに興味を持ってもらいたい。この問題にはそうしたねらいもあります。

田中舘先生 洪水ハザードマップの浸水想定区域と実際の浸水エリアはほぼ一致しています。ハザードマップの確認は防災のスタート。わが家は大丈夫か、小学生なりに防災を「自分ごと」として考えるきっかけになればうれしいですね。

学習院中等科 学習院生徒像建立の記

学習院中等科 学習院生徒像建立の記

インタビュー1/3

学習院中等科
学習院中等科1847(弘化4)年、孝明天皇により京都につくられた公家の学問所が始まり。「ひろい視野、たくましい創造力、ゆたかな感受性」の育成に力を入れている。早い時期から帰国生を受け入れ国際化する現実にも即応。アメリカ・メリーランド州セント・ポール高校と、高等科との交換留学も行われている。
中等科は大学までの基礎と位置づけられ、じっくりと基礎学力を養成する。近年は学習院大学への進学は5割程度。JR山手線・目白駅からすぐの学習院大学と同じ敷地内にあり、校地の広さと緑の多さは都内でも随一。
中高が独立しているため生活環境ははっきり違う。中等科では規律正しい指導をするが、高等科は自主性を重んじた自由な校風となる。クラブ活動は原則として、中等科は週4日。硬式テニス部、陸上競技部、囲碁将棋部は全国大会に出場する実力派。天体観測や化石採集を行う地学部は文化部でもっとも人気がある。