シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

清泉女学院中学校

2020年07月掲載

清泉女学院中学校【社会】

2020年 清泉女学院中学校入試問題より

次の文を読み、あとの問いに答えなさい。

 (略)
みなさんの生活の中にもSDGsにつながることはたくさんあります。たとえばストローやレジぶくろ、ペットボトルなどに使われる石油を原料としたプラスチックは便利な一方で、そのゴミが海に流れ込むことによって、海の生物に影響(えいきょう)をあたえます。地球の問題を自分の問題だと考え、日々の生活を送る必要があるのではないでしょうか。

(問)下線部について、地球の問題に対して、私たちが実行できる例として「古い電気機器を新しいものに買い替(か)える」ということがあります。なぜそれがSDGsを達成することにつながるのですか。達成できるSDGsの番号を2つ書き、それぞれについて説明しなさい。

SDGsの17の目標

【SDGsの17の目標】
[1]貧困をなくそう
[2]飢餓(きが)をゼロに
[3]すべての人に健康と福祉(ふくし)を
[4]質の高い教育をみんなに
[5]ジェンダー平等を実現しよう
[6]安全な水とトイレを世界中に
[7]エネルギーをみんなに そしてクリーンに
[8]働きがいも経済成長も
[9]産業と技術革新の基盤(きばん)をつくろう
[10]人や国の不平等をなくそう
[11]住み続けられるまちづくりを
[12]つくる責任つかう責任
[13]気候変動に具体的な対策を
[14]海の豊かさを守ろう
[15]陸の豊かさも守ろう
[16]平和と公正をすべての人に
[17]パートナーシップで目標を達成しよう

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この清泉女学院中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

例1:(番号)13
(説明)省エネルギーになり、温室効果ガスを減らすことができるから。(29文字)

例2:(番号)5
(説明)家事の負担が減る分、女性が社会に出て働きやすくなるから。(28文字)

例3:(番号)12
(説明)リサイクルしやすくなり、限りある資源を有効に使えるから。(28文字)

解説

さまざまな種類がある電気機器のうち、何をイメージしながら取り組むかで、達成できるSDGsも変わってきます。買い替える電気機器の機能や特徴を具体的に想像し、それが自分の選んだSDGsの番号とどうつながっているのかを考えると、記述しやすくなります。

「なぜそれがSDGsを達成することにつながるのですか」という問いかけなので、そのつながりが伝わる説明が求められます。例えば「今までは食器を手洗いしていたが、食器洗い機だと自動で洗えるから」などの書き方だと、食器洗いが楽になった理由は伝わりますが、SDGsとのつながりは伝わりません。

日能研がこの問題を選んだ理由

ここ数年の中学入試において、SDGs(持続可能な開発目標)に関する出題は増加傾向にあります。SDGsという用語を答える問題や、17ある目標のうち、いくつかについて考える問題は複数出題されていますが、17すべての目標から受験生が自由に選んで考える問題はそれほど多くありません。さらに、この清泉女学院中の問題は、達成できるSDGsの番号を「2つ書く」という設定が印象的です。おそらく、多くの受験生にとって、電気機器とのつながりが見つけやすいSDGsの番号を1つ説明することは難しくないでしょう。しかし、2つ目を見つけるためには、電気機器とSDGsのつながりを違う角度から考えることや、1つの答えを見つけて満足するのではなく、その後も考え続ける姿勢が必要になります。

SDGsの目標には「貧困」や「飢餓」、「気候変動」といった地球規模の問題が並んでいて、ともすると、自分からは遠い世界のできごとで、自分ができることは何もないように感じてしまいがちです。しかし、この清泉女学院中の問題に取り組むと、「古い電気機器を新しいものに買い替える」という、日本でくらす私たちが日常生活のなかで実行できる行動が、ひいては地球の問題を解決していくことにつながっているのだということに改めて気づくことができます。「地球の問題」は「自分の問題」であり、だからこそ、それを解決できるのは他ならぬ自分たちなのだ、という力強いメッセージは、この先の未来をつくっていく受験生たちにも響いたのではないでしょうか。

以上の理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。