シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

サレジオ学院中学校

2020年07月掲載

サレジオ学院中学校【算数】

2020年 サレジオ学院中学校入試問題より

朝日新聞掲載の住民基本台帳に基づく人口調査のデータは、朝日新聞社に無断で転載することを禁じます。(承諾番号:20-1405)

下表は2019年7月11日付朝日新聞朝刊に掲載(けいさい)された住民基本台帳に基づく人口調査のデータです。これを見て、タカシ君とリョウ君が次のような会話をしています。会話文を読んで、次の問いに答えなさい。

【都道府県別の日本人と外国人の人口(1月1日時点)】
  日本人(万人) 前年比増減率(%) 外国人(万人) 前年比増減率(%)
合計 12477.6 ▼ 0.35 266.7 6.79
北海道 526.8 ▼ 0.74 3.6 13.66
青森県 128.7 ▼ 1.28 0.6 12.72
岩手県 124.3 ▼ 1.17 0.7 8.85
宮城県 228.2 ▼ 0.44 2.1 5.39
秋田県 99.6 ▼ 1.48 0.4 4.55
山形県 108.8 ▼ 1.11 0.7 9.21
福島県 188.7 ▼ 1.04 1.4 9.88
茨城県 287.1 ▼ 0.62 6.5 4.98
栃木県 193.5 ▼ 0.59 4.1 4.67
群馬県 192.5 ▼ 0.64 5.7 5.77
埼玉県 720.0 0.02 17.7 7.87
千葉県 615.8 0.03 15.4 7.08
東京都 1318.9 0.56 55.2 5.79
神奈川県 897.7 0.05 21.3 7.08
新潟県 224.3 ▼ 1.02 1.7 7.91
富山県 104.5 ▼ 0.74 1.8 9.72
石川県 113.1 ▼ 0.53 1.5 11.82
福井県 77.2 ▼ 0.71 1.5 9.15
山梨県 81.7 ▼ 0.81 1.6 4.07
長野県 206.6 ▼ 0.71 3.5 7.62
岐阜県 199.1 ▼ 0.73 5.4 8.84
静岡県 363.7 ▼ 0.63 8.9 8.06
愛知県 731.2 ▼ 0.06 25.4 7.73
三重県 177.4 ▼ 0.71 5.1 6.23
滋賀県 139.1 ▼ 0.16 2.9 10.27
京都府 249.5 ▼ 0.45 6.0 5.61
大阪府 861.3 ▼ 0.21 23.6 4.75
兵庫県 546.2 ▼ 0.43 10.8 4.08
奈良県 135.0 ▼ 0.71 1.3 6.38
和歌山県 95.8 ▼ 1.10 0.7 3.43
鳥取県 56.1 ▼ 0.89 0.5 6.42
島根県 67.7 ▼ 0.92 0.9 15.42
岡山県 188.4 ▼ 0.59 2.8 8.60
広島県 278.7 ▼ 0.48 5.2 6.69
山口県 136.7 ▼ 1.01 1.6 5.52
徳島県 74.5 ▼ 0.97 0.6 7.92
香川県 97.5 ▼ 0.69 1.2 8.11
愛媛県 137.0 ▼ 0.93 1.2 2.73
高知県 71.3 ▼ 1.11 0.4 5.10
福岡県 505.5 ▼ 0.09 7.6 7.17
佐賀県 82.2 ▼ 0.62 0.6 11.86
長崎県 135.5 ▼ 1.02 1.0 3.16
熊本県 176.5 ▼ 0.62 1.5 14.17
大分県 114.7 ▼ 0.85 1.3 7.53
宮崎県 109.7 ▼ 0.81 0.6 13.39
鹿児島県 163.3 ▼ 0.84 1.0 15.22
沖縄県 145.9 0.18 1.7 13.48

【注】日本人および外国人の人口は小数第2位を,前年比増減率は小数第3位を四捨五入した数となっています。
また、▼は前年よりもその割合だけ減っていることを表しています。

 (略)

リョウ 今度は、外国人の数をみてみようか。外国人の数はすべての都道府県で増えているね。新聞にも『総人口(日本人と外国人の人口の合計)のうち外国人の割合がはじめて2%を超えた』と書いてあるよ。

タカシ 本当だ。じゃあ、各都道府県の日本人の数の減少と外国人の数の増加にはどのような関係があるのかな?調べるデータの個数が多すぎると大変そうだから、近畿地方と中国・四国地方の15の府県(表中の滋賀県から高知県まで)のデータをグラフにまとめてみようか。どんなグラフにしたらいいだろう?

リョウ 15の府県では、日本人の前年比増減率のすべてに▼がついている。だから、横軸を▼をはずした日本人の前年比増減率、たて軸を外国人の前年比増減率としたグラフにしたらどうだろう?

タカシ わかった。このグラフをみると、(問2)

(問1)下線部のグラフとして最も適切なものを次の①~④から1つ選び、記号で答えなさい。

(問1)グラフ

(問2)   にあてはまる文として最も適切なものを次の①~④から1つ選び、記号で答えなさい。
①日本人の数が増えれば増えるほど、外国人の数も増えている傾向がある。
②日本人の数が減れば減るほど、外国人の数は増えている傾向がある。
③日本人の数の減少と外国人の数の増加の間に、特別な関係は見られない。
④外国人の数の増加率は、どの府県を見ても10%未満となっている。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、このサレジオ学院中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(問1)② (問2)③

解説

(問1)
グラフの横軸の値は「▼をはずした日本人の前年比増減率」、たて軸の値は「外国人の前年比増減率」を表しています。

滋賀県から高知県までの15の府県のうち、数値が極端なところに目を向けてみましょう。

  日本人前年比増減率(%) 外国人前年比増減率(%)
滋賀県 ▼ 0.16 10.27
京都府 ▼ 0.45 5.61
大阪府 ▼ 0.21 4.75
兵庫県 ▼ 0.43 4.08
奈良県 ▼ 0.71 6.38
和歌山県 ▼ 1.10 3.43
鳥取県 ▼ 0.89 6.42
島根県 ▼ 0.92 15.42
岡山県 ▼ 0.59 8.60
広島県 ▼ 0.48 6.69
山口県 ▼ 1.01 5.52
徳島県 ▼ 0.97 7.92
香川県 ▼ 0.69 8.11
愛媛県 ▼ 0.93 2.73
高知県 ▼ 1.11 5.10

すると、たて軸の値(外国人の前年比増減率)は、島根県がとびぬけて大きく15.42です。このときの横軸の値は0.92です。
これが表されているのは、①と②だけです(図の〇印)。

そして、たて軸の値が次に大きいのは滋賀県の10.27です。このときの横軸の値は0.16です。
①と②のうち、これが表されているのは②だけです(図の〇印)。

解説図

以上より、最も適切なグラフは②の1つにしぼれます。
その他の府県の値についても確認すると、②が正しいことがわかります。

(問2) 
(問1)の②のグラフを見ると、点の散らばり方に規則があるようには見えません。
したがって、③の「日本人の数の減少と外国人の数の増加の間に、特別な関係は見られない。」が答えの候補になりそうです。

その他の選択肢についても確かめてみましょう。

① 「日本人の数が増えれば増えるほど」とありますが、これらの15府県については、すべての県で日本人は減少しています。したがって、「日本人の数が増える」ということ自体があてはまらないので、この選択肢は適切ではありません。

② 横軸の値は「▼をはずした日本人の前年比増減率」を表しています。これは、「日本人の前年比減少率」と言いかえることができます。すると、「日本人の数が減れば減るほど、外国人の数は増えている傾向がある。」というグラフは、比例のグラフのように「右肩上がり」の形になるはずです。問1のグラフの中でこれにあてはまりそうなものは①だけですが、①は正しいグラフではなかったため、この選択肢は適切ではありません。

④ 外国人の数の増加率は、島根県は15.42%、滋賀県は10.27%なので、10%を超えています。ですから、この選択肢は適切ではありません。

以上より、最も適切なものは③と判断できます。

日能研がこの問題を選んだ理由

この問題を通して、出題者の2つのマインドを読み取ることができます。
一つは、「算数で学んできたことを、いかに日常生活や社会の中へ還元していくか」というマインドです。グラフを読み取る問題は、算数の問題でもよく出題されますが、「何のためにデータをグラフにしているのか」という、グラフにすることの目的、そして有用性に焦点が当たった問題は斬新です。「算数のチカラ」だけではなく、「算数を学ぶチカラ」「算数で学んだことを使うチカラ」にまで視野を広げた出題は、これからの中学入試の出題に大きな可能性を渡すきっかけとなりそうです。

もう一つは、「仮説を立てること」、そして、「仮説が正しいかどうかを検証すること」、さらには「仮説が正しくなかったとしても、それは決して無意味なことではない」という科学者のマインドを、問題を通して受験生に伝えている点です。

「グラフからどのような関係が読み取れるでしょうか」という問題は、社会や理科ではよく出題されます。そして、その多くは何らかの特別な関係を見出します。ところが、この問題では、あえて「特別な関係は見られない」という選択肢を用意し、しかもそれが正解となっています。この問題に登場する2人は、おそらく、「日本人の減少率と外国人の増加率には何かの関係性や法則がある」という仮説を立て、グラフ化することによってそれが見えると考えたのでしょう。ところが、グラフに表してみると、特に関係性や法則は見られませんでした。つまり、仮説は正しくなかったのです。このようなストーリーを展開することによって、「結果的に仮説が正しくなかったとしても、恐れることはない。それよりも、そこに行きつくまでのプロセスが大切なのだ。」というメッセージが感じられます。

サレジオ学院中学校では、昨年に引き続き、今年も中学入試の算数の世界に、今までにない新しい風を吹き込むような出題をしています。このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。