シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

自修館中等教育学校

2020年06月掲載

自修館中等教育学校【理科】

2020年 自修館中等教育学校入試問題より

脱(だつ)プラスチック社会。今、世界全体でプラスチックの生産や消費を抑えようという動きが加速している。ある国では、もうすでにビニール袋の使用を禁じる法律がある。またある国では、使い捨てのプラスチック容器などの使用を全面的に禁止することを表明した。
 (略)
ところで、プラスチックと同様に、利便性が高く様々なものに使われていたが、環境負荷が大きいことが判明し、使用が規制されたものが他にもある。フロンガスだ。これは冷蔵庫などの冷媒(ばい)(温度を下げるもの)として使われていたが、上空に達すると塩素を生じ、これがオゾンを分解してしまうことがわかった。

(問)上記のように、人間社会にとっては便利だが、環境や健康のことを考えると使用をひかえたほうがよい物質や製品というものがたくさんあります。それはどのようなものですか。物質や製品を選び、それを廃止(はいし)したり抑制したりしたほうがよい理由と合わせて書きなさい。
廃止したり使用をひかえたりしたほうがよい物質や製品は、下記の中から選んでも良いですし、自分で考えても良いです。ただし、プラスチックとフロンガスは除きます。また、物質や製品の重複は認めません。

【物質・製品例】鉄 紙 石油 ゴム ウラン 天然ガス 発泡スチロール 車 石炭 木材 ガラス 飛行機 アスファルト

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この自修館中等教育学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

(物質や製品)紙
(理由)紙製品の原料は木材なので、紙の使用量が増えると森林の伐採が進む。これによって、光合成量が減り、二酸化炭素の吸収量が減るため、空気中の二酸化炭素の増加につながり、温暖化が進むと考えられるから。

(物質や製品)車
(理由)多くの車では燃料としてガソリンを使っているので、車の使用を控えると、二酸化炭素の排出量が減り、地球の温暖化をおさえることにつながるから。

(物質や製品)飛行機
(理由)飛行機は石油を原料とした燃料を使うので、大気中の二酸化炭素が増えるとともに、大気中の高いところを飛ぶので、上空の大気に与える影響が大きいと考えられるから。

解説

問題には、いくつかの物質や製品の例が挙げられています。それぞれのものが、どのような用途や目的で使われているのかを考えてみると、人間社会でどのように役立っているのかがわかりそうです。

一方、環境や健康にとってよい影響をあたえないという点については、すぐには思いつかないということもあるでしょう。そのような場合には、それぞれのものがどのような性質を持つのか、どのようにして作られているのか、原料となるものは何か、などといったことに着目してみると、手がかりをつかめるかもしれません。

なお、この問題では、自分で考えた物質や製品について説明することもできます。自分の身の回りのものや、これまでに見聞きしたことの中にあてはまる例があれば、ぜひ理由を説明することにチャレンジしてみてください。

日能研がこの問題を選んだ理由

人間社会にとっては便利だが、環境や健康を考えると廃止したり使用を控えたりした方がよいと思うものを選び、その理由を説明する問題です。

近年、プラスチックに対する関心がさまざまな側面から高まっていることは、子どもたちにとっても覚えのあることでしょう。この問題に取り組むことで、子どもたちは、プラスチック以外のさまざまな物質や製品についても、社会的な役割と環境や健康に及ぼす影響の両方から検討することになります。多角的な視点からものごとを見るチカラを使いながら、世の中で今起こっているさまざまな課題と、学んできたことがらがどのようにつながっているのかに気づくきっかけにもなるでしょう。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。