シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

佼成学園中学校

2020年06月掲載

佼成学園中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.世の中の逆説を自分の言葉で説明

インタビュー1/3

物事を別の角度から見ることができる力を試す

関根先生 本校は2017年度入試から、この問題のような自由記述型の問題を出題しています。近年、求められる「国語の力」の変化に応じて、中学入試でも思考力・判断力・表現力を試しています。

この問題では、世の中にある「逆説(パラドックス)」の構造を自分の言葉で説明できるかどうかを問いました。本文の意図を読み取って、「急がば回れ」「負けるが勝ち」といったことわざのように、「一見矛盾しているように思えることも、ある側面からみると1つの真理をなしていること」を見いだします。1つの物事を別の角度から見ることができるかどうかは、思考力・判断力に通じます。

教務主任/関根 貴生先生

教務主任/関根 貴生先生

事例から受験生が何に興味があるかわかる

どんな解答がありましたか。

関根先生 例えば、「インターネット」を例に挙げた解答は、「同じ国の人のみならず、外国の人とも情報を共有できるようになり、便利になったが、人の悪口を平気で書き込んだり、詐欺などの犯罪のきっかけになったりしている」というものでした。ねらいと、その逆の結果の両方を指摘できており、満点の解答です。

「人工知能(AI)」で解答した受験生は1名だけでした。もう少しあるかなと思っていました。
その解答は、「人間が楽できるように開発されたが、このままでは人間がダメになってしまい、人間は絶滅するかもしれない」というものでした。設問で聞いているのは、「どんなねらいで作られ、どんな結果を及ぼしているか」ということです。「絶滅するかも」という予測は設問の要求から外れているので途中点としました。

「何を」例に挙げたかで、受験生がどんなことに興味・関心を持っているかがわかります。多かったのが、自動車や飛行機などの乗り物でした。「いろいろな場所に行けるけれど、排気ガスで地球温暖化や自然破壊を起こしている」というように、ねらいに移動の利便性、結果に環境問題を取り上げることができていました。

今どきの例、ユニークな例、事例はいろいろ

関根先生 本文の例がダイナマイトだったので、武器(兵器、凶器)を例に挙げる解答が多くなるだろうと予想していましたが、実際そうでした。
「ナイフ(包丁)」の例は、「固いものを切れるが、人を傷つけたり、殺したりする凶器、武器にもなり得る」というものでした。鉄砲の解答もありましたが、「よかれと思って」というねらいと合いません。

原子力発電や火力発電は、「たくさん電気を作ることができるけれど、事故が起これば、放射能被害や大気汚染を引き起こし、長い目で見ると人類に悪影響を及ぼしている」というものでした。
「キャッシュレス決済」は今どきの例だなと思いました。ユニークなのが「洋式トイレ」です。姿勢が楽な一方、和式トイレのときのようにしゃがまないため、足腰が弱くなると指摘していました。

佼成学園中学校 賞状

佼成学園中学校 賞状

満点以上に評価したい解答も

受験生の出来具合はいかがでしたか。

関根先生 7割ぐらいは何かしら書いていました。満点が全体の1割程度、何らか得点できた(得点率)のは66%でした。

国語の解答なので、句読点や言葉の使い方が適切でなければ減点しますから、内容的によく書けていても満点に届かないことがあります。それでも満点が取れるということは、「よくできました」ともっと点数をあげたいくらいです。適切な例を挙げ、採点者に根拠を示してわかりやすく説明できるということは、思考力、論理力、表現力を備えていると感じます。

一方、手がついていない無答は3割ぐらいありました。最後の問題なので、時間が足りなかった、あるいは、解答欄(3行)を見て「こんなに書けるだろうか」と構えてしまい、書き出せなかったのかもしれません。

自由記述問題は、書けるパターンと書けないパターンがあります。「あなたの経験から」という場合は、自分の土俵で書くことができます。「あなたは○○についてどう考えますか」「文中に挙げられている例以外で」という問いは、ハードルが一段上がります。今回は後者のパターンです。

説明は「ねらい」と「結果」を押さえること

採点基準を教えていただけますか。

関根先生 解答欄は、取り上げた例と、その説明(3行)の記入欄を分けて設けました。配点は10点、例に3点、説明に7点です。例だけ挙げて説明が空欄なら0点です。論理立てがあってこその例だからです。

まず、文中の例を参考に、逆説の構造を示す例を挙げます。本文の例のダイナマイトのように、世の中によかれと思って作られたものが、ことと次第によっては悪い結果を及ぼしている、ねらいとは逆の結果を及ぼしてしまっているものを取り上げます。

子ども達はダイナマイトを実際に見たことも、使ったこともありません。事例は、子ども自身の経験というより、ニュースや読書など、見聞きしたことの中からふさわしい例を取り上げます。世の中をどのように見ているか、すなわち、社会のことに興味・関心を持っているかどうかが問われます。

文章記述問題は、具体的かどうか、根拠が明確かどうかを見極めます。この問題の場合は、「ねらい」と「結果」を押さえているかどうかを見ます。挙げた例は同じでも、きちんと根拠を示して説得力のある文章が書けるかどうかは差がありました。
「~だが、~になった」というように、ねらいを逆接にして、結果とその理由を説明します。結果だけの解答が多かったのは、「ねらいは自明だから」と省いてしまったと思われます。

文章の体裁は厳しくチェックします。句読点、文末表現、「てにをは」の問題、漢字の書き間違い、誤字・脱字は減点対象になります。

佼成学園中学校 図書室

佼成学園中学校 図書室

インタビュー1/3

佼成学園中学校
佼成学園中学校「建学の精神」は、「法華経の精神に基づき、豊かな宗教的情操を培い、知に偏らず、情・意の教育にも力を注ぎ、心身一如の円満な人格をもった平和社会の繁栄に貢献できる人間を育成する」ことである。
一人ひとりが素晴らしい心を持っていることを知り、多くの人とともに生き、磨きあい、助け合いながら、現実の社会と積極的にかかわろうとすること、また、生涯にわたり自らを支える豊かな心と幅広い視野、そして確かな学力。一人ひとりがそんな「自ら育つ力」を身につけることを目指している。
機能的で広さや採光に十分に配慮された校舎は、伸び伸びと気持ちよく過ごせる空間になっている。また、コンピュータ教室、LL教室、音楽教室などの本格的な設備も完備し、全ての普通教室に電子黒板機能つきプロジェクターおよびWi-Fi環境が整備されている。 2015年度高校入学生より導入のタブレット端末とあわせて、新しい学びの形の実現がすすめられている。
生徒と先生の距離が近く、職員室ではいつも、気軽に先生に相談する生徒の姿が見られる。生徒同士、生徒と先生、先生同士という、その人と人との関係の強さが、東京大学に5年連続で合格者が出ているのを始めとして、年々、難関大学への進学者が増加という成果につながる。もちろん、勉強面だけではなく、数多くある体育系・文化系のどちらの部活動も盛んである。