シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

佼成学園中学校

2020年06月掲載

佼成学園中学校【国語】

2020年 佼成学園中学校入試問題より

次の文章を読み、後の問いに答えなさい。

 (略)
身近な石を削(けず)って道具とした時代に比べて、人の技術は、できないということはないくらいにまで進歩した。そのような面から人の文明と、それを育てる技術の今日と未来を見れば、賛美することこそあれ、厭世(えんせい)的〈注〉になることは何もない。にもかかわらず、人と自然の調和ある共存を説くとき、私たちは技術が及(およ)ぼす反自然の行為に批判的になる。それは、しかし、技術そのものへの批判だとは思えない。技術をどのような目的でどのように使っているかに、考えてみるべき点が多々あるのである。
 (略)
ノーベルはダイナマイトを発明し、人の技術にまさしく爆発(ばくはつ)的な力をもたらした。彼(かれ)は巨万(きょまん)の富を得て、自分の功績に満足しながら生涯の幕を閉じることができたはずだった。しかし、ダイナマイトは兵器として使われ、大量殺戮(さつりく)にめざましい力を発揮した。ノーベルは、自分の発明に充足(じゅうそく)を得ることができず、ノーベル賞が創設されることになった。
 (略)

〈注〉厭世的・・・世の中を悲観的にとらえる傾向(けいこう)。
(岩槻邦男『生命系』岩波書店より)
※本文は設問の都合上、一部表記を改めてあります。

(問)人々の幸せのために作られたものが、結果的に悪いことにつながっているものの例を一つ挙げ、それがどういうねらいで作られ、どういう悪い結果をおよぼしているかを説明しなさい。ただし、本文に挙げられている例以外で答えること。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この佼成学園中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例(学校解答)

人工知能
人間の生活を便利にするために開発された人工知能は、その能力が高まっていくにつれて人間の仕事や役割を奪うようになり、人間の生活を脅かすような結果になってきている。(80字)

解説

文章中にはノーベルの発明した「ダイナマイト」の例が挙げられています。これは、「人々の福利のために創り出されたのに、それに反する使い方をされるようになってしまったもの」の一つでもあります。まずは、普段の生活の中で不可欠となっているものや、自身の身近なもので、当てはまるものはないかを考えます。普段の生活に不可欠なものとして、電気から「原子力発電」の例を考えたり、身近なものとして、スマートホンから、「マナー」などの例を考えたりしてもよいでしょう。また、「もの」でなく、「ことがら」を挙げてもよいでしょう。大切なのは、例として挙げたものについて、プラスとマイナスの両面を述べることです。

字数の指定はありませんが、100字程度を目安に答えを組み立てていくとよいでしょう。
「人々の幸せのために作られたものが、結果的に悪いことにつながっているものの例」を挙げるわけですから、設問の「どういうねらいで作られ、どういう悪い結果をおよぼしているかを説明しなさい」という指示に沿って、プラス面(ねらい)→マイナス面(結果)という順序で書いていくことが必要です。無理に一文で書こうとせずに、二文に分けて書いてもよいでしょう。読みやすい文を書くことを心がけましょう。設問では、「悪い結果」の原因や解決策を考えることまでは求められていませんが、自分でそれらを考えてみるのも面白そうです。

日能研がこの問題を選んだ理由

設問では、「人々の幸せのために作られたものが、結果的に悪いことにつながっているものの例」を考えさせ、「作られたねらい」と、「およぼしている悪い結果」の行き違いについて具体的に説明することを求めています。

普段当たり前のようにそこにあるものが、どういうねらいで作られ、どういう悪い結果をおよぼしているかについて、子どもたちは考える機会が希薄であろうと考えられます。あらためて問題を目の前に提示することによって、ものやことがらの存在を再認識することにつながります。どういうものの例を挙げているかによって、潜在的に持っている問題意識の一端を垣間見ることもできそうです。

また、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」のように、「持続可能な消費と生産のパターン」に関して、現在、世界で達成がめざされている目標にもつながる設問だと言えるでしょう。理科的な話や社会科的な話題につなげて、掘り下げて行くこともできます。

昨今、さまざまな問題の解決に向けて、科目や学問の専門分野をこえ、問題を多角的にとらえることの重要性が高まっています。「科学」や「技術」に関しても、それらがもたらしているメリット、デメリット両面からとらえて、活用に関して総合的に判断していくことが求められます。

その「ねらい」が意に反して「悪い結果」をおよぼしている例は、「もの」だけにとどまらず、法や制度、人間関係などをふくめ、生活してくうえで至る所に存在している問題でもあります。「意識しておいてしすぎることはないかもしれない」と文章の筆者が述べているとおり、子どもたちにも身につけておいてほしいものの見方であるといえます。

その意味で、佼成学園中学校の設問は、今、求められている学びの形を体現していると考えます。「科学」や「技術」の進歩を題材に、子どもたちは理科や社会科で扱うようなものを、国語で学んだことと結びつけながら、問題を「多角的にとらえること」や「筋道立てて考えること」の面白さが味わえると考え、日能研ではこの設問を□○シリーズに選ぶことにいたしました。