出題校にインタビュー!
鷗友学園女子中学校
2020年05月掲載
鷗友学園女子中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.ワクワクできる未来を自分で作れる時代。主体的に学ぼう
インタビュー3/3
選択する力はこれまで以上に必要になる
福井先生 「アフターコロナ」を考えると、これまでどおりには行かないことが出てくるでしょう。例えば自分の将来にしても、これからは社会がどう変化するのか、予測を立てた上で考えなければいけません。ですから生徒には、他者をリスペクトする、命を大切にする、戦争は絶対にいけないなど、絶対に譲れない価値観を押さえるとともに、今まで以上に選択する機会をたくさん設けてあげたいと思っています。
選択をした時に、少数派の答えを選択した生徒に対するフォローは行いますか。
福井先生 少数になった理由を熟考することは重要なことです。ただ、「どちらを選びますか」と聞くと、周りを気にしたり、恥ずかしがったりしながら手を挙げる生徒がいます。本当の結果かというと、そうとはいえないところもあったのですが、オンライン授業では、誰の影響も受けずにパッと答えを出せます。テレビのクイズ番組のように、瞬時に意見を書いて、出してもらうことができるので、周りを気にして出た答えではない、本当の結果を得られます。ですから、少数になった理由を熟考するにはオンライン授業が適していると思いました。新しい試みとして可能性を感じました。
鷗友学園女子中学校 授業風景
質が飛躍的に上がる反転授業
福井先生 オンライン授業を1日分作るのは本当に大変なんです。ただ、この苦労は来年再来年につながると思っています。生徒が題材を事前に見てから授業に臨む反転授業を行うと、質の高い授業ができます。非常に手応えを感じるので、そういうことを意識しながら学びのフェーズアップをしていきたいと思っています。
反転授業は今後も行う予定ですか 。
若井先生 学校が始まっても継続している教科はあります。もともとやっていた教科もあります。
福井先生 反転授業を全くやっていなかったわけではないのですが、(オンライン授業を実施して)反転授業で提供するものがシャープになった感じがします。
また、グーグルクラスルームでやりとりをしているので、私が担当しているクラスだけでなく、担当していないクラスの情報も見ることができます。私の担当クラスに他の教員が入って来ることもあります。これまでも、その学年を担当する教員で話し合って定期考査を作っているので自然とすり合わせはできていましたが、さらに見える化が進んでいると思います。
高校生は自分の端末を授業で活用
自分専用の端末を持っているのは高校生だけですか。
福井先生 そうです。高校生はBYOD(Bring Your Own Device/ノートPC、タブレットなど個人所有の端末を持ち込むこと)です。その理由は、これも社会につながる学びだからです。少なくとも大学生は自分で選んでいますので、特定の機種を指定せず、「自分の好きなものを使いなさい」と言っています。自分の機種に愛着を持ってほしいという意味もあります。
機種が異なると不便ではありませんか。
福井先生 機種による違いは多少ありますが、生徒同士が教え合うので何の問題もなく行っています。
高校生が端末を持つようになったのはいつからですか。
福井先生 今年で3年目になります。今年度から高校生全員が自分の端末を持っていて、我々が仕事をする時と同じように、タブレットを使いながらスマホで調べたり、PCを使いながらタブレットで調べたり、写真を撮ったりと、必要に応じて複数の端末を使って作業しています。
中学生は便利さよりもリスクがあるので今は持たせていません。必要な時に学校所有のタブレットを貸し出しています。ですから、中学生のオンライン授業はご自宅にあるもので対応してもらいました。「早く買ったほうがいいのでは?」という保護者の声もありましたが、高校生になる時に自分で選んでほしいので、「親が選んで与えることはやめてください。今、家にあるもので結構ですからできる範囲で参加してください」と言いました。高価なものなので、保護者への感謝の気持ちなどをきちんと説明した上で、ワクワクした気持ちで選んでほしいと思っています。
鷗友学園女子中学校 ステンドグラス
進路選択に影響を与える中3の探求活動
社会科の授業に感化されて、社会で活躍する卒業生も多いのではありませんか。
福井先生 そうですね。経済の仕組みにおもしろさを感じて財務省に入った卒業生がいます。商社で働く卒業生もいます。そういう子たちは、会社よりも何をしたいかで進路を決めています。在校生の中には、街づくりに興味を持って大学選びをしている子もいます。
中3の現代社会が、生徒の進路選択に影響を与えているように思います。そこで社会の諸問題を取り上げると同時に、自分で研究テーマを設定し、レポート・小論文を書きます。その研究成果をプレゼンテーションします。一連の活動を通して、自分で探究するという術を得る、というのが大きいと思います。過去に、香港と中国はなぜ仲が悪いのか。そこに疑問を持った生徒がいました。中国大使館や立教大学で香港を研究している教授を訪ねて、「なぜ仲良くできないのですか」と聞いていました。その生徒は国際関係に興味をもって東京大学に入学しました。そういう経験をすると、学びが大学や社会につながっているということを実感するのではないかと思います。
鷗友学園女子中学校 図書館の掲示物
主体性を引き出すことが鍵
内面から湧き上がるものが育っている。そこがすごいですね。
福井先生 探求のテーマについては、ほぼフリーにしています。SDGsなどという枠がないので、「私は広島カープがとても好きなのですが、現代社会のテーマになりますか」などと言ってくる子がいます。「選手の一覧や記録などではダメだよ」と話すと考えてくれて、経済効果や地域との関連性など、こちらのアイデアを超える研究をしてくれるのでおもしろいです。「自分の興味があるもの、ワクワクするものを調べてごらん」と言うと、意外と今の子はやれるのではないかと思います。
本校では主権者教育にも力を入れていますが、選挙にも興味をもつ生徒が多いです。高3で扱うので、有権者とそうでない生徒がクラスに共存しています。そういう中で選挙の話をすると、投票に行けない生徒が「いいな」と言います。「投票日に一早く投票所に行くと、投票箱の中が空かどうか見せてくれるんだよ」と言うと、頑張って行く子がいます。年配者はもっと早くて、私が話した経験はできなかったと言っていましたが、主体性を引き出せば自ら行動するので、それが鍵かなと思っています。
鷗友学園女子中学校 流れの小径
自分たちが主役。それを忘れないで学びに励もう
最後に、福井先生から受験生に向けてメッセージをお願いします。
福井先生 以前は「社会科は暗記科目ではないんですよ」ということをすごく伝えたいという思いがあって、こうした機会でも伝えてきたのですが、今、改めて思っているのは、きちんと基礎を押さえることが大切だ、ということです。小中学校の問題は基礎と応用に分かれていますが、基礎は応用につながります。どこからが応用、ということではないので、まずは基礎をしっかり身につけてください。そして基礎を使いこなせるようになってください。因果関係を押さえながら基礎を理解することが大切だと思います。
また、ワクワクできる未来を自分で作れる時代です。自分たちが主役であることを忘れないで学びに励んでほしいと思います。
インタビュー3/3