シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

鷗友学園女子中学校

2020年05月掲載

鷗友学園女子中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.入試問題を通して社会科の楽しさや「こんな問題があるんだ」という驚きを与えたい

インタビュー2/3

自粛期間中は全教科でオンライン授業を実施

オンライン授業ではどのようなことを行いましたか。

福井先生 2020年3月にZoomを使って、授業とホームルームを実施することにしました。

若井先生 最初にZoomを使ったのは咋年、熊本で行われた「全国女子高生サミット」です。そのイベントで、全国の女子校とZoomを使って会議を行いました。

福井先生 高校生は全員IC機器を持っていますので、「Zoomで授業を行います」となっても違和感はなかったです。本校はすべてが主要科目、という考えに立っているので、体育、園芸などもオンライン授業を行っています。自宅学習を支援するために各家庭に教材を送ったのですが、園芸を行う中1、高1の箱の中にはラディッシュのタネや土も入っていました。箱を開けた時の様子を聞くと、期待どおり驚いたようです。

若井先生 中1は鉢の様子が気になるのでしょう。「数時間おきに見ています」と言う生徒がいました。Zoomで高1の保護者会を実施した時も、やはり話題はラディッシュで、「(大事に育てているので)食べるのがかわいそう」などという話が出ていました。

広報部部長/若井 由佳先生

広報部部長/若井 由佳先生

コロナで気づいた!自分たちは大人と同じスタートラインに立っている

福井先生 今回、オンライン授業でも、情報の供給によりいろいろなことが学べるということがわかりました。それと同時に分散登校ですが学校が始まって、生徒もZoomとは違う、対面することの大切さを再確認しているように思います。

コロナを経験して生徒さんに変化は見られますか。

福井先生 生徒はワクワクしています。なぜなら、大人たちが解決できていない問題がたくさんあることが浮き彫りになったからです。「自分たちは大人と同じスタートラインに立っている。そう考えると「アフターコロナ」に対して、学びに対して非常に意欲が出た」と話す高2がいました。その考え方はすごいなと思いました。

知っていることは大人も学生も一緒ですからね。

福井先生 そうなんですよ。その話を中学から高校に上がるタイミングで高1に話したら、「そうだ」「そうだ」という感じになって、「だから頑張る!」という雰囲気になりました。

全教科で身につけさせたい力を言語化

福井先生のご専門はなんですか。

福井先生 政治経済です。高3の政治・経済や倫理の授業を担当しています。中学の授業は専門に関係なく、誰もが教えられるようにしようということでやっていますので、ルーブリック評価表やシラバスを作る際に、社会科としてどういう力をつけさせたいか、ということをしっかり考えて、共有することを大切にしています。

6年間を通じて身につけさせたい力を言語化しているのですね。

福井先生 本校では「慈愛と誠実と創造」という校訓に基づいて、キー・コンピテンシー(社会において必要となる能力のこと)に対応したルーブリック評価表を社会科だけでなく、全教科で作成しています。生徒には自分の学習を客観的にとらえ、成長する材料にしてほしいと思っています。

鷗友学園女子中学校 校舎内

鷗友学園女子中学校 校舎内

社会科が求める6つの力

社会科のキー・コンピテンシーを教えてください。

福井先生 社会科では6年間を通じて「問題発見・解決力」「知識に関する力」「情報に関する力」「コミュニケーションに関する力」「平和に関する力」「主権者としての力」を身につけさせたいと考えています。
問題を発見したり解決したりするには当然知識が必要です。これからは情報の取捨選択など、情報の扱いも非常に重要になります。また、問題を自分1人で考えるのではなく、他者の多様性を認め合いながら議論する力も欠かせません。平和に関する知識も持たせたいと思っています。その素養を問うために、入試でも関連した問題を出すことが多いです。

入試問題を通して学ぶ楽しさを感じてほしい

貴校の入試問題はカラーですし、記述問題もたくさんあります。個人的には、過去に出題された沖縄の住民投票の問題が印象に残っています。投票用紙がわかりにくい。どう直せばわかりやすくなるか、という問題でした。貴校は中学入試で常に先端を走り続けているように思いますが、先生方はどのような思いで臨まれているのでしょうか。

福井先生 入試問題は受験生が点数を取れる問題でなければいけません。公民は、地理や歴史と比べると学習時間が少ないので基礎的な問題を入れることを意識していますが、その上で考える問題を出題しています。
かつては「記述問題ばかり」「答えづらい」と言われたこともありましたが、私たちはできるだけ早く解答にたどり着く一問一答の入試問題よりも、学ぶ楽しさを感じることができる入試問題を目指してきました。過去問を解く中で「こういう問題もあるのか」「社会科って楽しいんだな」と気づいてほしい、という思いがあるからです。結果的にそれが「先端を行っている」という評価につながっているのだと思います。

鷗友学園女子中学校 図書館

鷗友学園女子中学校 図書館

ステップを踏んで世の中の問題解決ができる力をつける

福井先生 「こういう問題もあるのか」という驚きを中1の地理、中2の歴史でも味わってもらいたくて、中1から正解のない問いを与えて考える機会を作っています。地理の最初の定期考査でよくあるのは、「亜寒帯が南半球にないのはなぜか」などという問題です(答えは陸地がないから)。通常はこれ(南半球には亜寒帯がない)が答えになります。そういう、今まで学習したてきたものとは異なる視点から出題することによって検証するのです。そして中2の歴史では、関ヶ原の戦いやパリ協和会議、第二次世界大戦など、歴史上の大きな出来事を取り上げて、生徒自身が当事者になって考える機会を設けています。関ヶ原の戦いで自分が小早川秀秋だったらどうするか。裏切るのか裏切らないのか、ということですね。中3は公民で社会の仕組みを学習します。合わせて、現代社会で現在の日本の問題点をたくさん扱います。なぜ、こんなことがまかり通るのか、という問題意識が高まって少し日本を嫌いになりますが、小学校時代から培ってきた思考力や目の付けどころのよさに驚かされます。

現在の社会のシステムは西洋中心の仕組みになっています。社会を理解するためには、思想的背景を知ることが大切だと思っています。表層の部分だけを学んでも、なぜ彼らがこういうスキームを作り、その歴史観を世界に広めたのかがわからないので、高1の倫理では西洋思想を中心に学びます。その上で、高3は全員必修で政治・経済の両面から社会問題の背景や構造を理解し、問題を解決するための提案を行います。大学受験用の授業とは別建てです。高3は社会科での学びに加え、学校生活の中でいろいろな経験をしてきていますから、溢れ出るような感じで熱い議論が繰り広げられます。

能動的学習者を育てたい

福井先生 私たちは学びを理系文系といった科目で分けるのではなく、すべては「サイエンス」をベースにつながっていると捉えています。生徒たちに「能動的学習者」になってもらいたいというのが、教科を超えたところのロゴスです。社会科では政策発案力を身につけることを目指しています。

社会では選択を迫られる場面がたくさんあります。選択をするということは何かを捨てるということです。エイヤーという感じで決めてしまう生徒もいれば、いい意味で慎重で勇気を必要とする生徒もいます。選択や決断をするということは、すごいチャレンジなのです。ですから選ぶ基準を設けて、どういう理由で選択したのかを明確にしてあげることがすごく大事なことだと思っています。

中3で行う株式学習ゲームも、先を見て決断するという要素があります。そういう訓練を中学生のうちから重ねていき、高3で政治的な発案や経済的な発案が出てきて、活動につながっていくというストーリーなので、おもしろいです。

鷗友学園女子中学校 実習園

鷗友学園女子中学校 実習園

インタビュー2/3

鷗友学園女子中学校
鷗友学園女子中学校1935(昭和10)年、東京府立第一高等女学校(現・都立白鷗高等学校)の同窓会鷗友会により、母校創立50周年事業として設立。今日の繁栄の基礎を築いたのは、女子教育の先覚者で第一高女の名校長とうたわれた市川源三と、内村鑑三・津田梅子の薫陶を受けた石川志づ。
「慈愛と誠実と創造」の校訓のもと、キリスト教精神を取り入れた全人教育をおこなっている。「女性である前にまず一人の人間であれ」の教えのもと、一人ひとりが自分の可能性に挑戦し、社会の中で自分の潜在的な能力を最大限に発揮することを目指す。生徒・教師が一体となり<よろこび>と<真剣さ>のあふれる日々を送っている。
全館冷暖房完備で、ゆとりと明るさを追求した特別教室・図書室・ホールを整備。非常災害時のための危機管理システムも整った太陽光発電や雨水利用システムなども導入している。実習園、屋外プールなどもある。校外施設として、軽井沢に追分山荘をもつ。
ていねいな指導に定評があり、教師陣はハイレベルな指導のためにカリキュラムの研究検討を重ね、独自の教材を使った授業も展開する。中学では先取り学習をしつつ、聖書・園芸・書道も正課に取り入れている。英語は「使える英語」を目指し、すべて英語で授業を行っている。中2の英・数はクラス2分割。英語と数学は高校で習熟度別授業を導入する。中1では自分レポートを作成。高2で文系(芸術系を含む)・理系コースに分かれ、選択科目を多く設定し、きめ細かく進路に対応している。高3では主に演習を実施。数多くの特別講習や小論文の個別指導など、進学指導も充実している。
2期制を実施。進路指導では、自分史・環境・福祉・職業・平和などに取り組む。社会で活躍する先輩の話を聞く機会もあリ、自分を見つめ、社会を知り、生き方を考える。70年の伝統を持つリトミックを全学年で週1時間実施し、身体表現を豊かにし、運動神経を高める。課外活動として、茶道、華道、書道、手話、英会話、Debate Workshopもある。文化祭や運動会のほか、スクールコンサート、クリスマス会、中1の軽井沢追分山荘生活学習、中2のスキー教室、中3の沖縄修学旅行などの年間行事を実施。チョート校サマースクールやチェルトナム・レディース・カレッジ研修など、国際理解教育にも力を入れている。クラブ活動は、学芸部8、運動部13、同好会15で、中高合同で活躍している。