シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

鷗友学園女子中学校

2020年05月掲載

鷗友学園女子中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.記述問題では問われていることに対して、きちんと答えることが大切

インタビュー1/3

ワクワクした気持ちで未来に思いを馳せてほしかった

出題意図からお話いただけますか。

福井先生 鷗友学園の社会科では、受験生がこれまでに取り組んで来た学習の成果を見る問題も出題しますが、中学受験で学びを止めてほしくないという思いから、高校、大学、社会につながる視点を提示する問題も出題しています。この問題もその1つです。AIについては、「AIが導入されることにより失われる職業がこれだけある」など、危機を煽るような情報が目立ちます。それを見て、親世代は心配しがちですが、その時代を生きる子ども達にはフラットな立ち位置で、主体的に意見を持ってもらいたいと思いました。12年間、自分が育んできたものをベースに、未来に対してワクワクした気持ちで政策・発案的なものを自由に出してほしい、というのが、この問題を出題した意図です。

入試問題は、本校の教育理念や求める生徒像を発信するとても良い機会です。問題を作ったのはコロナウイルスが広がる前ですが、コロナ禍を経験した今、(これから解く人のためにも)このような出題をしてよかったのではないかと思っています。

教務・学習指導統括部長 社会科/福井 守明先生

教務・学習指導統括部長 社会科/福井 守明先生

「比較して論じる視点が必要」

AIが不得意なことと人間が得意なこと、両方を投げかけた意図を教えてください。

福井先生 今後の国際社会においては、論理性と論理性で意見を戦わせることが非常に重要になると思います。 その時に、プラスの部分、マイナスの部分を比較して論じていくというような視点が必要だと思ったので、両方を聞く問題にしました。

また、近年、科学技術の進歩もあって理系の重要性がクローズアップされていますが、人間が人間たる所以といいますか、人文学的、社会学的な視点でものを見ることも必要で、バランスよく持っているべきだと思います。コロナウイルスにしても、重症のお年寄りをなるべくケアしようという発想に対して社会が納得するのは、人が人文的な部分(人の心)で判断しがちだからです。そういう考えが私自身の中に非常にあって、AIにとって不得意なところ、人間にとって得意なところは小学生でも十分に考えられると思いました。

受験生の多くが問題文をよく読んで解答できていた

解答はきちんと書かれていましたか。

福井先生 学校説明会で「初見の問題に関しては半分くらい問題文の中にヒントが隠されているので、それを活用して解いてください」と話していますので、問題文をよく読んで解答できていた受験生が多かったように思います。解答の書き方(作法)に関しても、過去問をきちんと解いて準備をしてきてくれた受験生が多いという印象でした。

採点の基準は設けていましたか。

福井先生 (記述問題では)問われていることに対して、きちんと答えることができているかを見ています。この問題ではAIの不得意の部分と人間の得意な部分がきちんと書かれているか。それが表裏になっていないか。そういうところを基準に採点しました。

AIについての問いは、受験生がパッと見て「わからないや」と投げ出さないようにしなければいけないと思いました。ですから医療現場を例にあげて、まずAIのプラスの部分を問いました。ステップを踏んだので考えやすかったと思います。知識を出そうとするあまり、聞かれていることからずれてしまった解答も見られましたが、概ねAIにとって不得意なところ、人間にとって得意なところに触れて解答できていました。

鷗友学園女子中学校 正門

鷗友学園女子中学校 正門

AIをコントロールするのは人間の使命、と解答した子も

目を引く解答はありましたか。

福井先生 「人間の思考」という単語を使って「機械(AI)を作ったのは人間なのだから、それをコントロールするのは人間の使命」というようなことを書いてくれた受験生がいました。それは良い解答だと思いました。また「共存する」や「ともに」などという言葉がよく使われていました。どちらかが支配する、支配される、ということではなく「より良い形で使っていく」という解答が多く見られました。
採点をしていて気づいたこととしては、将来に関して自分なりの思いや考えを持っていて、それを言いたい、伝えたいという受験生がかなりの割合でいるということです。 それはとても嬉しいことでした。

ここ10年で書く力、話す力は向上している

福井先生 今の小学生は学校でアクティブラーニングなどに取り組み、プレゼンテーションをたくさん経験しています。自分の意見を書くこと、話すことについては、過去と比べると随分慣れているように思います。入試の記述問題にしても、以前は白紙で出す受験生がいましたが、今はほとんどいません。そういう意味では頼もしいのですが、聞く力や、与えられている情報を客観的にとらえて分析する力は少し弱くなっているように感じます。それは中学生の授業をしていても感じることです。情報を自分のフィルターでとらえる前に、一旦受け取って、自分以外の人はどう感じるのだろう、どんな意見を持つのだろう、などということを考えてほしいと思っています。人前で話すことには時間を割いているので、臆することなくできるようになっていますが、(聞く力、分析する力なども)同等に扱うには時間が足りないのでしょう。

鷗友学園女子中学校 図書館

鷗友学園女子中学校 図書館

人の意見にも耳を傾けてみよう、と思わせることが必要

福井先生  ですから、単純に「クリティカルシンキングを養いましょう」ということではなくて、いろいろな題材でいろいろな見方ができるように、いろいろな機会を与えていくということが必要です。こうした機会の積み重ねによって、自分の言いたいことだけを言うのではなく、人の意見にも耳を傾けてみようかな、と思うようになるのではないでしょうか。高校生と進路の話をする時に、私たち大人が解決できなかった問題をいろいろな形で提示する、ということです。我々が若かった時に描いていた未来は、今、実現できていないので、「問題は残っている」ということと、「あなた方はその問題と向き合って解決に導く方法を探せるんだよ」ということを、きちんと伝えています。生徒が当事者意識を持つことにより、自分の言いたいことだけを言うのではなく、人の意見にも耳を傾けてみようかな、というところにつながるのではないかと思っています。

今、私たちは社会が大きく変わる分岐点にいる

福井先生 今後の入試では中学にかぎらず、高校、大学でもコロナ関連の問題が増えそうですね。

いろいろな方面の問題がクローズアップされましたからね。

若井先生 私は今年度、高2を担当しているのですが、先日、分散登校で登校していないクラスに向けたホームルームをZoomで行った時に、私たちは今、社会が大きく変わる分岐点にいることを伝えました。コロナの前と後とでは仕事が変わります。私の仕事も変わったので、例えば建築の道に進みたいと思っている生徒にとって、人が快適に過ごすための建築はきっと変わると思うのです。「自分の進路と照らし合わせて、社会がどう変わるのか、業界はどう変わるのか。そういうことを把握するために、コロナ前に出版された本とコロナ後に出版された本を読み比べて違いを探すとか、新聞やテレビなどで見聞きしたことの中で気になったことを、すべてポートフォリオに入れておきなさい。それが大学入試や社会に出てから役に立つから」と話しました。もうだいぶたまっていると思います。

鷗友学園女子中学校 グラウンド

鷗友学園女子中学校 グラウンド

インタビュー1/3

鷗友学園女子中学校
鷗友学園女子中学校1935(昭和10)年、東京府立第一高等女学校(現・都立白鷗高等学校)の同窓会鷗友会により、母校創立50周年事業として設立。今日の繁栄の基礎を築いたのは、女子教育の先覚者で第一高女の名校長とうたわれた市川源三と、内村鑑三・津田梅子の薫陶を受けた石川志づ。
「慈愛と誠実と創造」の校訓のもと、キリスト教精神を取り入れた全人教育をおこなっている。「女性である前にまず一人の人間であれ」の教えのもと、一人ひとりが自分の可能性に挑戦し、社会の中で自分の潜在的な能力を最大限に発揮することを目指す。生徒・教師が一体となり<よろこび>と<真剣さ>のあふれる日々を送っている。
全館冷暖房完備で、ゆとりと明るさを追求した特別教室・図書室・ホールを整備。非常災害時のための危機管理システムも整った太陽光発電や雨水利用システムなども導入している。実習園、屋外プールなどもある。校外施設として、軽井沢に追分山荘をもつ。
ていねいな指導に定評があり、教師陣はハイレベルな指導のためにカリキュラムの研究検討を重ね、独自の教材を使った授業も展開する。中学では先取り学習をしつつ、聖書・園芸・書道も正課に取り入れている。英語は「使える英語」を目指し、すべて英語で授業を行っている。中2の英・数はクラス2分割。英語と数学は高校で習熟度別授業を導入する。中1では自分レポートを作成。高2で文系(芸術系を含む)・理系コースに分かれ、選択科目を多く設定し、きめ細かく進路に対応している。高3では主に演習を実施。数多くの特別講習や小論文の個別指導など、進学指導も充実している。
2期制を実施。進路指導では、自分史・環境・福祉・職業・平和などに取り組む。社会で活躍する先輩の話を聞く機会もあリ、自分を見つめ、社会を知り、生き方を考える。70年の伝統を持つリトミックを全学年で週1時間実施し、身体表現を豊かにし、運動神経を高める。課外活動として、茶道、華道、書道、手話、英会話、Debate Workshopもある。文化祭や運動会のほか、スクールコンサート、クリスマス会、中1の軽井沢追分山荘生活学習、中2のスキー教室、中3の沖縄修学旅行などの年間行事を実施。チョート校サマースクールやチェルトナム・レディース・カレッジ研修など、国際理解教育にも力を入れている。クラブ活動は、学芸部8、運動部13、同好会15で、中高合同で活躍している。