シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

武蔵中学校

2020年05月掲載

武蔵中学校【算数】

2020年 武蔵中学校入試問題より

5種類の球①、②、③、④、⑤が2個ずつあります。
このうち5個をAの箱に、残りの5個をBの箱に入れます。ここで、箱の中に入っている球に書かれた数の積の一の位の数を、その箱の点数とします。例えば、図1の場合の点数は、Aが0点、Bが6点です。次の各問に答えなさい。

問題 図1

(問1)A、Bのどちらにも⑤が入っているとき、少なくとも1つの箱の点数は0点となります。その理由を答えなさい。

(問2)AはBより点数が大きく、Bが0点でないとき、A、Bそれぞれの点数として、考えられるすべての場合を答えなさい。

(問3)最初、Aが5点だったそうです。次にそれぞれの箱から1個ずつ球をとり出し、箱の中に残った4個の球で同じように点数を考えます。
(ア)Aの点数が5点より大きくなったとき、最初にAに入っていた5個の球とそこからとり出した1個の球を解答欄(らん)に書きなさい。
(イ)BがAより点数が大きくなったとき、最初にBに入っていた5個の球とそこからとり出した1個の球として、考えられるすべての場合を解答欄に書きなさい。(解答欄は必要なだけ使いなさい)

問題 解答欄(ア)

問題 解答欄(イ)

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この武蔵中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(問1)例
偶数と5の積は10の倍数となる。よって、⑤と偶数が書かれた球が1個以上入っている箱の点数は0点となる。偶数が書かれた球は4個あるので、どちらか一方の箱には偶数が書かれた球が必ず入ることになるから。

(問2)「Aが5点、Bが2点」と「Aが5点、Bが4点」

(問3)

(ア)例

解答図 (問3)(ア)例

(イ)例

解答図 (問3)(イ)例

解説

(問1)
偶数と5をかけると、その積は10の倍数になります。A、Bのどちらの箱にも⑤が入っているので、②②④④の4個の球のうち、1個以上箱に入っていれば、その箱の点数は0点となります。
(参考)片方の箱の点数が0点で、もう一方の箱の点数が0点より大きくなる場合は、0点の箱に入っている球が②②④④⑤で、もう一方の箱に入っている球が①①③③⑤のときです。(その箱の点数は1×1×3×3×5=45より5点となります。)

(問2)
Bの点数が0点ではなく、Aの点数はBの点数より大きいので、Aも0点ではありません。(問1)より、A、Bのどちらの箱にも⑤が入っているとしたら、少なくとも1つの箱の点数は0点になるので、⑤はどちらかの箱に2個入っていることがわかります。
偶数と5をかけると、その積は10の倍数になるので、⑤が2個入っている箱には、偶数が書かれた球は1個も入っていないことがわかります。また、奇数と5をかけると、その積の一の位は5になるので、⑤が2個入っている箱の点数は5点になります。
⑤が入っていない箱には、偶数が書かれた球がすべて入っているので、その箱に入っている球は、②②④④の4個と、①か③のどちらか1個です。

②②④④①が入っている場合
2×2×4×4×1=64より、この箱の点数は4点となります。
4点は5点より小さいので、この場合は、Aが5点、Bが4点とわかります。

②②④④③が入っている場合
2×2×4×4×3=192より、この箱の点数は2点となります。
2点は5点より小さいので、この場合は、Aが5点、Bが2点とわかります。
以上より、「Aが5点、Bが4点」の場合と「Aが5点、Bが2点」の場合の2通りあることがわかります。

(問3)
⑤が1個以上入っている箱の点数は、0点か5点のどちらかになります。また、⑤が入っていない箱の点数が、0点や5点になることはありません。ですから、Aには、⑤が1個以上入っていたことがわかります。また、最初、Aの点数が5点だったことから、Aの残りの球はすべて奇数であることがわかります。

(ア)球を取り出した後、Aの点数が5点より大きくなったということは、最初、Aに⑤が1個入っていて、それを取り出したということになります。
Aの残りの球はすべて奇数なので、最初、Aに入っていた球は①①③③⑤であり、そこから⑤を取り出したことがわかります。取り出した後の点数は、1×1×3×3=9より9点となり、5点より大きくなっています。

(イ)「最初にAに⑤が1個入っていた場合」と「最初にAに⑤が2個入っていた場合」に分けて点数を調べます。
Aに⑤が1個入っていた場合
最初、Aに入っていた球は①①③③⑤なので、Bに入っていた球は②②④④⑤とわかります。
(ア)より、Aから⑤を取り出したら、Aの点数は9点となり、Bの点数がAの点数より大きくなることはなくなります。ですから、Aに⑤が残り、Aの点数は5点のまま変わらなかったことがわかります。
また、Bには、偶数が書かれた球が4個入っていたので、⑤以外の球を取り出すと、点数は0点となります。Bから⑤を取り出すと、取り出した後の点数は2×2×4×4=64より4点となり、5点より小さくなります。
ですから、Aに⑤が1個入っていた場合で、Bの点数がAの点数より大きくなることはないことがわかります。
Aに⑤が2個入っていた場合
最初、Aに入っていた球は①③③⑤⑤か①①③⑤⑤のどちらかになるので、Bに入っていた球は①②②④④か②②③④④とわかります。このとき、Aからどの球を取り出しても、Aに⑤が1個以上残るので、取り出した後のAの点数は5点とわかります。
Bに①②②④④が入っていた場合
ここから①を取り出した場合の点数は、2×2×4×4=64より4点です。
ここから②を取り出した場合の点数は、1×2×4×4=32より2点です。
ここから④を取り出した場合の点数は、1×2×2×4=16より6点です。
これらのことから、Bの点数が5点より大きくなるのは、④を取り出したときとわかります。
Bに②②③④④が入っていた場合
ここから②を取り出した場合の点数は、2×3×4×4=96より6点です。
ここから③を取り出した場合の点数は、2×2×4×4=64より4点です。
ここから④を取り出した場合の点数は、2×2×3×4=48より8点です。
これらのことから、Bの点数が5点より大きくなるのは、②を取り出したときと、④を取り出したときであることがわかります。
以上より、最初にBに入っていた5個の球とそこから取り出した1個の球は、次の3通りが考えられます。

最初にBに入っていた球 取り出した球
①②②④④
②②③④④
②②③④④
日能研がこの問題を選んだ理由

この問題は、「5」という数が持つ特殊性をテーマとしたものです。5の倍数の一の位は、0か5のどちらかしかありません。5は、偶数をかければその積の一の位は必ず0になり、奇数をかければその積の一の位は必ず5になるという、おもしろい性質を持った数です。ここでは、その性質をとことん利用します。

また、この問題では、理由を記述したり、考えられるものをすべて調べたりすることが求められています。何となくわかっている、とりあえず調べたというような状態では、これらの問題に正解することは難しいでしょう。筋道立てて説明したり、すべての場合を論理的に調べ上げたりする力が求められます。武蔵の建学の精神の一つである「自ら調べ自ら考える力ある人物」につながる問題ともいえそうです。この問題に取り組んだ子ども達は、この問題を通して、古代から人々を魅了し続けている数のおもしろさと、算数・数学が持つ論理性の両方を味わったのではないでしょうか。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。