シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

東京女学館中学校

2020年04月掲載

東京女学館中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.実験での「気づき」を大切にする

インタビュー3/3

中学の授業は2回に1回が実験・観察

鈴木先生 中学はおおよそ2回に1回が実験・観察です。
5つの理科実験室(中学理科実験室2、化学実験室、生物実験室、物理・地学実験室)を備えること、理科実験助手2名のサポートがあることで、数多くの実験ができています。

阿部先生 最近はいろいろな素材や道具が入手しやすくなっており、おもしろいものを見つけられるかどうかも教員の腕の見せ所になってきています。生物の教員は100円ショップのグッズをうまく使っていて、できるだけ多くの生徒が体験できるようにしていて参考になります。

広報室長/鈴木 龍馬先生

広報室長/鈴木 龍馬先生

実験プリントをファイリングして自己管理する

小関先生 実験の結果と考察は実験プリントに書き込み、回収して添削して生徒にフィードバックしています。プリントは専用ファイルにまとめて定期試験の勉強に活用します。

阿部先生 専用ファイルにまとめるのは、自己管理できるように長年続けている取り組みです。
中にはプリントをなくす生徒もいます。ファイリングがきちんとできているかどうかは成績にも表れます。小学生のうちは親任せだったかもしれませんが、中学生になったら自分で整理・整頓できるようでなければなりません。中1はまず勉強する以前のことがきちんとできるように、学習習慣を身につけるようにしています。

実験は知っている通りにならないこともある

小関先生 中学の始めは中学受験で勉強していて「知っている」ことが結構あります。けれど、それがすべてではありません。やってみるとその通りだったこともあれば、そうならなかったこともあるのが現実の実験です。入学直後ならではの刺激を新鮮に感じているようで、楽しそうに実験しているように思います。

阿部先生 知識と経験が結びついて「そういうことか!」と気づくと、理科が楽しくなると思います。中学ではそうした「気づき」を大切にしています。
中1で始めに学習する単元が植物です。校内にあるビオトープに咲いている菜の花(アブラナ)の観察から授業を始めるのが本校の定番です。ビオトープの活用は生物の学習はもちろん、自然を身近に感じてもらえますし、学校を知ることにもなります。

東京女学館中学校 作法室

東京女学館中学校 作法室

考察から応用できる思考法を身につける

実験の考察はどんなことを指導されていますか。

小関先生 私は答えにたどりつくまでの思考法が身につくような工夫をしています。
例えば、ダンゴムシは「右に曲がったら左に、左に曲がったら右に曲がる」という習性が顕著です。中1の実験では、まず、その習性の理由(行動範囲を広げる)と利点(エサを見つける確率、異性と出会う確率を高める)を考察します。
知識としてはここで完結しますが、さらに、左右交互に進む理由を考えるために、右方向だけに曲がるという逆の条件で実験を行います。このように、あることについて聞かれたら、そうならないことから考える思考法は応用できます。問題のアプローチがわかれば、思考問題が苦手な生徒も取り組みやすくなるのではないかと思います。

阿部先生 私は中学生のうちは実験の結果や考察、感想を自由に書かせています。生徒は模範解答的にまとめたがります。「実験を通していろいろなことがわかった」といったものは、「“いろいろ”とは例えばどんなこと?」と赤字を入れて返します。
着眼点がユニークな考察には「よく気づいたね」とコメントしたり、授業で取り上げたりすると、成績が振るわない生徒でも「授業に参加している」意識を持てます。

東京女学館中学校 食堂

東京女学館中学校 食堂

中学は「理科はおもしろい」気持ちを育む

阿部先生 中学の学びは高校につながるように、「理科っておもしろい」と思ってもらえることを意識しています。それが学び進む原動力になります。
おもしろがる心を育むためにも、中学の理科では体験を重視して、急ぎすぎず、詰め込みすぎず、興味・関心をふくらませるように意識しています。
例えば解剖は苦手な生徒に配慮して、イカやハマグリ、アジといった食卓に並ぶ素材を使っていますが、もっと学びたい生徒は希望制の「学習講座」でニワトリやマウスの解剖ができます。生徒は心臓の解剖しながら、「こっちの方が筋肉の壁が厚いね」「血液を全身に送り出すのはこっちだね」などと実感できている様子でした。

「もっとおもしろいことが待っている」と思えばがんばれる

阿部先生 本校は理系大学に進学する生徒が増えていて、国際クラスを除く5クラス中、少なくとも2クラスが理系クラスです。
高校になると学習内容が難しくなり、相当な演習量を積まなければなりません。それは決して楽しいことではありません。
それでも、中学受験で身につけた知識が中学での体験と結びついて「理科っておもしろい」と思ったように、高校でがんばれば、大学ではもっとおもしろいこと、高度なことができると思えば、がんばろうと思えるのではないでしょうか。生徒たちに刺激を与えるシカケができないか、大学との連携などを検討しているところです。

小関先生 今、勉強していることが実社会とどのようにつながっているか、授業では最新のトピックスを取り上げて、生徒の興味・関心を引きつけるようにしています。
高校生になると、どんな仕事に就きたいか徐々に考えるようになるので、社会に役立つ仕事や夢のある研究開発についても紹介します。最近は実験器具や設備が充実して簡単な遺伝子操作などおもしろい実験ができます。そうした実験と新薬開発を結びつけると、将来の目標が具体的になってきます。高校ではモチベーションを維持する手助けをするのも教員の役目だと思っています。

東京女学館中学校 授業風景

東京女学館中学校 授業風景

インタビュー3/3

東京女学館中学校・高等学校
東京女学館中学校・高等学校伊藤博文が創立委員長として発足した「女子教育奨励会」が母体となり、1888(明治21)年に設立。建学の精神は「諸外国の人々と対等に交際できる国際性を備えた、知性豊かな気品ある女性の育成」です。インクルーシブ・リーダーシップ(共生し協働する力)を養うために、生徒会、クラブ、さまざまな行事を生徒による実行委員会方式で実施。
「国際学級」は英語に特化したカリキュラムで、実践的な英語力を養成。一般学級でも英語習得を中心とした国際教育を重視。英語や英会話はクラスを2分割します。アメリカ文化研修は、働く女性の職場から家庭まで密着するというユニークな文化交流。さらに、日本の文化にも力を入れ、茶道・華道体験、歌舞伎や能楽の鑑賞、京都・奈良への修学旅行(高2)などを実施。中3の修学旅行は沖縄で、平和や環境問題を学びます。
白のセーラー服に青いリボンの制服は1930(昭和5)年に制定され、「品性を高め、真剣に学ぶ」精神を象徴。中1では60歳以上の卒業生へのインタビューも交えたスクールアイデンティティ学習を実施。体育大会では、17世紀のフランス宮廷ダンス「カドリール」を高3が制服で踊るのが伝統。クラブではオーケストラ、ダンスが人気。茶道部は表千家・裏千家があります。食堂の手作りパン、ソフトクリームは大人気。