シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

東京女学館中学校

2020年04月掲載

東京女学館中学校【理科】

2020年 東京女学館中学校入試問題より

近年、障がい者スポーツの用具は素材や加工技術、デザインなどが著しく進歩し、障がい者スポーツを取り巻く環境(かんきょう)は大きく変わりつつあります。車いすを例にとっても、一般的(いっぱんてき)に使われているもの(図1)と競技用の車いす(図2)とは、形が大きく違(ちが)います。その違いに目を向けてみましょう。

図1一般的な車いす 図2競技用車いす(テニス用)

(問)図2のテニス用車いすでは、一般的な車いすと違いハンドリムがついた車輪が「ハの字」の形に取り付けられています。テニス用車いすに乗った選手が、右手のハンドリムには前方に、左手のハンドリムには後方に同じ大きさの力を加えました。ハンドリムがついた車輪が地面に描(えが)く跡(あと)や、上空から見た車いすの回転の向きはどうなりますか。正しい文章を次の(ア)~(エ)から1つ選び、記号で答えなさい。ただし、テニス用車いすも一般的な車いすも、2つの車輪の中心の間の距離は同じであるとします。
(ア)一般的な車いすよりも車輪の跡は小さな円を描き、時計周りに回転する。
(イ)一般的な車いすよりも車輪の跡は大きな円を描き、時計周りに回転する。
(ウ)一般的な車いすよりも車輪の跡は小さな円を描き、反時計周りに回転する。
(エ)一般的な車いすよりも車輪の跡は大きな円を描き、反時計周りに回転する。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この東京女学館中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(エ)

解説

車輪がまっすぐについている一般的な車いすの場合と比べながら、車輪が「ハの字」になるように取り付けられている効果を考えてみましょう。

まずは、車輪を車いすから外して床の上で前方に向かって転がした場合に、どのように動くのかを考えます。(フラフープを転がす様子を思い浮かべてみるのもよいでしょう。)車輪が地面に対して垂直に立っているときは、車輪は直進するように転がっていきます。しかし、車輪が傾くと、傾いた方向に曲がっていく(回転していく)ように転がり、傾きが大きくなればなるほど、遠くへは進まず、その場で円を描くように動きます。

テニス用車いすの車輪は、前から見たときにハの字になるように取り付けられているので、右手側の車輪は左に向かって傾き、左手側の車輪は右に向かって傾いています。このことから、車輪の前方に向かって力を加える場合、右手側の車輪は左へ回転しようとし、左手側の車輪は右へ回転しようとします。反対に、車輪の後方に向かって力を加える場合には、右手側の車輪は右に回転しようとし、左手側の車輪は左へ回転しようとします。

したがって、問題のように、右手のハンドリムに前方への力を加え、左手のハンドリムに後方への力を加えると、左右どちらの車輪も左に回転しようとして、車いすは反時計周りに回転すると考えられます。また、地面に描く円の跡は、車輪の接地面を直径とした円になるため、傾いて下側が広がっている分だけテニス用車いすの方が大きな円を描きます。

日能研がこの問題を選んだ理由

この問題では、問題に示された図や文章をもとに、テニス用車いすでハンドリムに力を加えたときに、車輪が地面に描く跡や回転の向きがどのようになるのかを予測します。

テニス用車いすという題材は、多くの子どもたちにとって、実際に体験したことがないものだと考えられます。子どもたちは、示された図や文章を手がかりにしながら、頭の中で状況を思い浮かべ、車輪が動くようすをイメージしてみることになるでしょう。この問題に取り組む中で発揮されるチカラは、物理的な現象をとらえるときに大いに役立つものだといえます。

また、子どもたちはこの問題を通して理科的なものの見方・考え方を深めるとともに、障がい者スポーツへの関心が高まるなど、学んだことが世の中のできごととどのようにつながっているのかに目が向くようになるでしょう。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。