出題校にインタビュー!
神奈川大学附属中学校
2020年04月掲載
神奈川大学附属中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.200文字以内という制約の中、1つのテーマで一貫した文章が書けるかどうかを見る問題
インタビュー1/3
神奈川大学付属中学校の問題は難しい?
まずは出題の意図を教えてください。
松本先生 「神奈川大学付属中学校の問題は難しい」と塾の方々などから言われることがあります。それは文の内容や問題の量もかなり多いということもありますし、とんちやなぞなぞのような発想力を問う問題がここ数年出題されていました。
本校の授業としては、生徒を一律で力を伸ばすというよりもそれぞれの個性を尊重し、みんなと違うことが言いたい子にはその独自性を活かし文章が活きるように個別のアプローチをしたり、思考力を伸ばすための指導をしているのですが、そのような内側の教育と外側に向けた入試の難しさがあまりリンクしていないと最近は感じておりまして、全体のコンセプトをどうしていこうか考えたときに、まずなぞなぞっぽい問題をやめようと考えました。そして、複数の力を同時に見られるようにと、この作文問題に行きついたんです。
この問題形式であれば、独自性の高い文章を書いてくる子どもがいるかもしれませんし、コツコツと文体を整えて点数を取ってくる子どももいるかもしれないけれど、それぞれの良さで点数を取れるのではないか、ということでこのような問題の設定に至りました。
そのような経緯で今年から問題形式を変えたこともあり、事前に何もお知らせしていないと不誠実ということもありますので、入試説明会ではサンプル問題を作成し配布させていただきました。
問題文がとても短いように感じました。
松本先生 そうですね、今までは論説だと最低2ページ、多い時では3~4ページということもありました。さらに小説だと6ページというのが当たり前だったのですが、長文だとどうしても速読力が必要であることや見落としがたくさん出てくることもあり、問題全体のコンセプトとして制限を設け、説明文に関しては1ページ前後、物語に関しては2ページ前後に収まるようにしました。
それに伴って説明に必要な情報量が減ってしまうため、文章から派生して考えられる問題も聞いてしまおうと思い、他の問題と併せて、自分の中に留め置いて発信する力を試すような問題を出題することにしました。
実際の子ども達の反応はいかがでしたか?
松本先生 試験を見る限りはどの子ども達も結構頑張って書いてくれました。本校を受験してくれる子はそれなりに意識してくれていたと思いますし、何人か6割程度しか書けていなかった子もいましたが、何も埋まっていない子はいなかったと思います。完全な空欄はゼロでしたね。
国語科/松本 卓実先生
複数の採点基準を設け、いろいろな能力を測る
解答について教えて下さい。子ども達はどのようなことを書いていたのでしょうか?
松本先生 観光地がテーマになっていたこともあって「ごみの増加という問題が出てくるのではないか」といった内容を書いたものが圧倒的に多かったです。そこからごみが増える原因は何か?を連想していくと、「文化の違い」や「言葉の違い」について語っている子が多く、さらに解決策として「これから先英語や中国語の表記を増やしていけばよい」と言っている子が多数いました。
この問題では3つの点が挙げられていたため、番号に従って1つずつ答えていっただけの子もいたのですが、それだと文章としてつながっていないものとなり、論の構成も点数の基準としておりましたので、そのような部分で点数に差がついてしまっています。そのようなものも含めて内容面や構成面、誤字脱字といった複数面での採点基準を設けることで、いろいろ能力を試しています。
本番のプレッシャーや時間制限がある中、この短時間でよくこれを出せたなと特に印象的だったものとして「無線LAN」について書いてきた子の解答がありました。
公衆無線LANは海外では当たり前のように利用されているものの、日本ではまだインフラが整っていない場所も多く、日々利用している大人であればこのことに気が付きやすいと思うのですが、子どもの立場ということ、ましてや受験本番のコンディションの中ではなかなか出てこない解答のように感じました。
実際の解答としてはなかったものの、同じレベルの解答として「現金決済が多すぎる」というものも出てきてよかったかな、とは思いましたね。
神奈川大学附属中学校 校舎
生徒の思考を狭めてしまわないよう具体的な解決策を求めない配慮も
この問題は200字以内で書かせるものでしたが、実際何分程度で答えることを想定し作成した問題だったのでしょう?
松本先生 構成の時間を含めて10分から長くても15分ぐらいですかね。15分かけてしまうとそのあとの問題はかなりスピーディに進めないといけなくなってしまいますが、監督していた先生方の話を聞くと順番通りに解いていく子が多かった印象ではありますが、中には他の問題を早く済ませてこの問題をゆっくりやろうとしている子もいましたし、この問題の対策をしっかりしてきた子は、先にパッとやってしまって残った時間を別の問題に割いているようでした。
問題作成時点では具体的な解決策をある程度想定していたのでしょうか?
松本先生 さすがにそれは小学生には酷だということから、子ども達には具体的な解決策を求めないようにしようと思ってこの問題を作成しました。その結果として3番として書かれているように、将来どうなっていくかという予想だけにとどめました。解決を求めてしまうと子どもが「学校はこういう答えを期待しているんだろうな」というのを感じとってしまうんですね。それは私たちが望んでいることではなかったので、解答を期待させてしまう問題にしないようにということは3日程いずれにおいても意識して作りました。
解答の傾向としてはどのようなものでしたか?
松本先生 6割ぐらいはごみについて書かれていて、2割程度が騒音や交通量の問題についてでした。内容について点数をつけるというのはなかなか難しいので、客観的な視点を持ってきちんと書けているかどうかを中心に見ています。よって、余程の誤字脱字がなければ何かしらの点数はあげています。
この問題の正答率はどれくらいだったのでしょうか?
松本先生 ここの正答率は全体としては55%、合格者では64%という結果になりました。
神奈川大学附属中学校 校舎内
考える力と発信する力が試される問題
気になる点として、問題文の中に書き方についての注意が書かれていますがこれはあえて入れたのでしょうか?
数字についての注意書きがされているので、実際数字を使わないといけないと思った子もいたのではないでしょうか?
松本先生 そうですね、基本的には原稿用紙の一般的な使い方を伝えている部分ではあります。
数字については意見が分かれるところで、これが書いてあることで何か具体的な数値を知らないと点数が下がるのではないか?と思った子が少なからずいるのでは、とは思いました。しかし説明会の場で、専門的な知識を試すのではなくアンテナは立っていたほうがいいとは思うけれども実際はそこを中心に見ているのではなく、立ち止まって自分で内容をきちんと受け取ってから発信していく力を見ていきたい、とお伝えしていたこともあり、考える力と発信する力を試すことが国語科の担うべきところだとは思いました。実際のところこの問題で数字を使ってきた子はいませんでした。
神奈川大学附属中学校 くすのき
インタビュー1/3