シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

神奈川大学附属中学校

2020年04月掲載

神奈川大学附属中学校【国語】

2020年 神奈川大学附属中学校入試問題より

次の話題について、後の指示に沿った文章を書きなさい。

特定の観光地において、訪問客の著しい増加等が地域住民の生活や自然環境に悪影響(えいきょう)を及(およ)ぼし、観光地の魅力(みりょく)低下にもつながる事態が起きています。これをオーバーツーリズムといいます。

(問)この問題について、以下の点に触(ふ)れながら、あなたの考えを二百字以内で書きなさい。
① 訪問客の著しい増加が引き起こす悪影響の例。
② ①の例が起きる原因。
③ 今後社会がどう変化していって、①の例がどうなっていくと考えられるか。

【書き方についての注意】

  • 原稿(げんこう)用紙の一般的(いっぱんてき)な使い方にしたがって書くこと。
  • 数字や数値を使う場合は次のように書いてもよい。

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中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この神奈川大学附属中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

訪問客の著しい増加が引き起こす悪影響の例としては、地元住民の生活に使う交通手段が混雑して、通勤通学などに不便が生じるといったことがある。
この問題が起きる原因は、訪問者の数が、観光地で普段生活している人々が使う交通手段の輸送可能量を超えてしまうことにある。
今後も日本は観光立国をうたい、訪問客の呼び込みに力を入れていき、この問題はますますひどくなっていくと考えられる。

解説

まず、「訪問客の著しい増加が引き起こす悪影響」の例を、授業で学んだことや普段の生活の中で見聞きしたことも手がかりにして考えます。観光地住民の生活環境や自然環境、文化財など、いくつかの視角から迫れるでしょう。そのうえで、自分が例示しようと考えた「悪影響」の原因を探るとともに、今後の社会の変化を見据え、「悪影響」の行く末を予想します。

200字という字数を考えると、書く必要がある内容をどの順番で書くのか、事前に考えておく必要があるでしょう。設問にある①から③の指示に沿って、「『悪影響』を例示する→例示した『悪影響』の原因を挙げる→例示した『悪影響』の行く末を、今後の社会の変化も交えて述べる」という構成で書くと、読みやすい文章を作ることができます。
なお、設問では、「悪影響」の解決策を考えることまでは求められていません。しかし、自分であれこれ考えてみるのも、面白いでしょう。

日能研がこの問題を選んだ理由

設問では、「オーバーツーリズム」、具体的には、観光地における「訪問客の著しい増加が引き起こす悪影響」に焦点が当てられています。

「悪影響」の例を示し、例示した「悪影響」が起きる原因を探るとともに、今後の社会の変化に伴う、「悪影響」の行く末を予想します。200字以内という、比較的多めの字数で記述する必要があるので、わかりやすい文章にするには、設問で求められている内容を筋道立てて書くことが大切です。

SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」のように、住環境に関して現在、世界で達成がめざされている目標にもつながる、社会科と国語を融合したような設問だと言えるでしょう。

昨今、さまざまな問題の解決に向けて、科目や学問の専門分野をこえ、問題を多角的にとらえることの重要性が高まっています。オーバーツーリズム一つとってみても、観光地住民の生活環境や自然環境、文化財などへの影響というように、いくつかの視角から問題に迫る必要があります。

その意味で、神奈川大学附属中学校の設問は、今、求められている学びの形を体現していると考えます。オーバーツーリズムを題材に、子ども達は社会科や国語で学んだことと結びつけながら、問題を「多角的にとらえること」や「筋道立てて考えること」の面白さが味わえると考え、この設問を□○シリーズに選ぶことにいたしました。