シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

開智中学校

2020年03月掲載

開智中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.各教員の好きなことを織り交ぜながら、積極的な学習参加を目指した授業を展開

インタビュー2/3

受験後にも読んでもらえるような作問をしてきたい

では全体のことを聞いていきたいと思いますが、入試問題はいろんな先生が相談されながら作成しているのですか?

高田先生 これは社会科の授業のやり方と似ているのですが、各教員の好きなものを作るということになっていまして、作成段階で他の教員と事前の相談することはありません。そのため持ち寄ってみると「この視点は自分にはない」というようなことがあって面白いです。

たとえば私は世界史の教員ですが、担当の教員の専門性によって、それぞれの分野でこれは知っていて当然ということが違います。そのためお互いが暴走しないように調整はしています。出題の過程でなるべくそれぞれのオリジナリティは残していきたいという意識は持っています。

本当は30分と言わずもっと時間をかけて解いてほしいな、と一教員としては思いますが、受験生は入念には読んでいる時間はないので、受験後に読んでくれたり、次の代の受験生にゆっくり読んでもらったりして、何か感じてもらえればうれしいですね。今年で終わったセンター試験も、よく読んでみると面白い文章などもあって、生徒にも「二次試験までの間にもう一度読んでみよう」と指導することもあります。

社会科責任者/高田 学先生

社会科責任者/高田 学先生

大人の視点の萌芽を持っているかを問う問題も

向井先生 先端特待のリード文は「おとなとこどもの違いは何だろう」ということを考えるものでした。中高は大人の階段を登ってくる時期なので、大人の視点の萌芽を持っているか?というのを聞いている問題を多くしています。例えば今年の問題でいうと問4には「選挙に行くことの意義」について聞いている問題がありますし、問6で「社会の中でなぜ時間を守ることが求められたのか」という問題もあります。大人になるまでに一度はしっかりと考えてほしい、現代社会に関わる問いかけを、歴史などともからませながら出題しました。

今年は特に方針がはっきり見えると感じる問題でした。記述においては「こんなことを聞いて、こういう資料を出している。子ども達にこのようなことを聞きたいのかな?」という意図が見える問題が多かったと思います。見せ方のバランスというのも問題を作るうえで意識されていたり、苦心されていたりするのではないかと思うのですが。

高田先生 オープンエンドとでも言うのでしょうか、今回のSDGsの問題のように趣旨に即した解答なら正解、という問題は社会科に対するポテンシャルが見えやすくなるとは思いますが、オーソドックスな暗記作業を重ねることも決して軽視しているわけではありませんから、そういう練習を積み重ねてきたお子さんにも開智に入ってもらえるような問題もしっかり出しています。

開智中学校 エントランスホール

開智中学校 エントランスホール

社会以外の教科と融合した問題作りも

高田先生 ここ数年は、科目融合型および横断型の問題を積極的に出していまして、一昨年には元寇と気候といった歴史と地理を融合した問題を出題したこともありました。

特定科目に固執せずいろんな視点から問題が出題されているので、子ども達の中には「社会科の問題ってこんなに楽しいんだ」、「こういう視点も社会科で使えるんだ」と感じる子もたくさんいるのではないか、そんな印象ですね。

インタビュー2/3

開智中学校
開智中学校心温かい21世紀のリーダーを育てるために環境・設備に最善を尽くし、研究を重ねた中高一貫の教育内容で、1997(平成9)年、現開智高校を設立母体として新設開校。綿密に練られた理念と教育計画は、開校当初より大きな注目と人気を集める。開智中高は一貫部、開智高校は高等部と区別改称。2004年、小学校(総合部)を開校。
5階までの中央の吹き抜けが、開放的な生活環境をつくる。質問コーナーを設置した開放的な職員室。ブース式で140席ほどある自習室。蔵書約4万冊の図書室。演劇発表や講演会ができる340席のホール。バスケ2面の体育館。広大なグラウンドなど施設に恵まれている。昼食は中1・2まで弁当持参。ただし希望者には給食弁当あり。中3から食堂などが利用可。
「創造型・発信型の心豊かな国際的リーダーの育成」を教育の目標に掲げ開智教育の3つの柱である「高質な知識と思考力を育てる教科の授業」「学ぶ力を育て探究力・発信力を養う探究テーマ・フィールドワーク」「行事・部活動・生徒会活動などによる自主性の育成」に取り組む。
難関大学を目指す徹底的な中高一貫進学校型カリキュラム。2年ごとに3つのステージに分類。I類・II類、文系・理系分けなど、目標や適性に合わせ複合的にコースを組みあげている。週2回の英会話はネイティブとのチームティーチング。『フォニックス』『トレジャー』を使い、英語で自分の意見を発信、ディスカッションできる高度な英語力を養成。英・数は習熟度別分割授業。補習・講習、プリント、小テストなどメニュー豊富できめ細やか。本(知識)を前提とせず体験から学ぶ「フィールドワーク」や、一人ひとりがもつ「探究テーマ」は、受験レベルを超えた創造的学力を養う同校ならでは。2009年に「先端創造クラス」を新設。自ら考え学ぶ創造的学力を高度に育成する。
フィールドワークは、中1は磯、中2は森林へ行く。中3で関西・広島、高1で首都圏、高2でイギリスへと活動範囲が広がる。クラスの枠を越え、探究テーマを深めながら、発表、取材、討論をとおして、国際的視野に高めていく。中2~高1の希望者対象にニュージーランド・オーストラリア語学研修もある。生徒会・部活動などに自主性が生かされ、THEグリーン委員会、ボランティア委員会など、生徒からの声で作られた委員会もある。高1・高2では「学部学科探究」を実施。いろいろな分野の大学の教授から講義を聞き、学問への興味付けをはかる。クラブは、運動部13、文化部9、同好会2あり、週4日活動。