シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

開智中学校

2020年03月掲載

開智中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.SDGsの問題を通して、自分たちがどのような社会を作りたいか、生きていきたいかを考える

インタビュー1/3

社会というものを考える問題

それでは、まず出題の意図を教えてください。

向井先生 入学試験は学校の現場の教師と生徒が初めて出会う場所でもあると考えていますので、その場を借りてこうした生徒が欲しい、というメッセージを作問の中に含めています。この問題に関してですが、「社会」というものを考えてほしいという設問になっています。社会保障などからイメージされるように、「社会は自分に何かをしてくれるもの」と思いがちですが、同時に自分たちが「社会」の形成者でもあるので、将来大人になるにつれて「自分がどんな社会にしていきたいか、どんな働きかけをしていきたいか」ということをぜひ考えてほしいという想いがあって、この設問を作らせてもらいました。

さらにもう一点ありまして、SDGsはグローバルな視点ですごいことをやっているもの、と捉えられがちなのですが、実はこの問題自体が「さいたま市の目標」といっているように、ローカルな視点がグローバルな視点につながっているということもぜひ考えてもらいたい、そんなことも盛り込んだ問題です。

目の前の自分の住んでいる場所をよく知って行動していこう、ということも世界全体を変えていくことにつながっていく。そういうことが、「社会」というものを考えるにあたってとても重要な視点なんだよ、という想いに込めて、SDGsを地域の問題と結びつけて出題しました。

一人一人が社会の形成者だということに気づいてもらうということで、問題の問いかけでも「あなたが住んでいる都市」や「あなたはどんなことができますか」という言葉が、子ども達が自分自身で「今の自分に何ができるのか?」を考えることができる問題だと思います。

通常SDGsの問題が出る場合、多くの学校では最初に項目が選ばれたうえで、その項目に対して「あなたはどんなことができますか?」を答えさせるものが多いのですが、17全部が示されているケースは非常に珍しいです。子ども達はどれを選んでどんなことを書いたのかが非常に気になります。
17も選択肢があると人気のもの、そうでないものは結構はっきりしていたのでしょうか?

向井先生 8番(働きがいも経済成長も)は子ども達にイメージが付きにくかったのではないかと。反対に2番(飢餓をゼロに)、4番(質の高い教育をみんなに)、17番(パートナーシップで目標を達成しよう)などは書きやすかったと思います。ただ、まったく選ばれていないSDGsの項目はなく、いずれかは書かれていました。埼玉なので地理的に14番(海の豊かさを守ろう)は少ないと思ったのですが、海洋プラスチックのことなどを書いてきた受験生もいました。

この問題の採点における基準とはどのようなものだったのでしょうか?いろいろ書けるだけに採点は難しかったのではないでしょうか?

向井先生 まずはこの問いにきちんと向き合って答えているかというのは見ました。SDGsの項目とからめてきちんと答えているか、誇りに思える都市になるために周りに働きかけて変えていくという行動があるか、というのがポイントです。
先端特待の入試では記述問題が全体で9題ありましたのでどうかと思ったのですが、空欄の答案はほとんどありませんでした。ここは最後の問題でぜひ解答してもらいたいものではありました。ここまでたどり着けるかな?と多少不安でもありましたが、皆さん頑張ってくれて解答してくれましたね。

社会科/向井 哲和先生

社会科/向井 哲和先生

身近な体験や経験を解答にする

この問題の解答についてもう少し詳しく教えていただいてもいいでしょうか?

向井先生 面白かったのは、小学校ですでにSDGsについてくわしく知っている受験生もいたのか、とても具体的に書いているものが見受けられたことです。

具体的な解答として、昨年の入試問題でトランスジェンダーについての問題があったのですが、その過去問を解いていたと思われる受験生が5番(ジェンダー平等を実現しよう)で「学校の制服をスラックスに変える」「校則を変える」といった解答をしたものが何人かはありました。それは非常に印象に残っています。

他には1番(貧困をなくそう)で「リユースとして様々な物資を集めて困っている人に送る」というものや、3番(すべての人に健康と福祉を)などで「老人ホームに演奏会をしに行く」というものもありました。小学校でSDGsに取り組んでいる経験をそのまま書いたものもとてもいい解答に感じました。身近な体験や経験、家庭の会話、実際のニュースの中から見知ってイメージできるものでないと、書く時間も非常に短いため厚みのある答案にはならないかもしれませんね。

聞いて終わりだと自分と離れたところで終わってしまいますので、自分のこととして当事者意識を持って問題と向き合ってもらいたいというのを感じます。
この解答の中で、これは点をあげられないな、というような解答はどのようなものだったのでしょうか?

向井先生 先ほどの要素があってそれに合致しているかどうかが採点基準でありますので、「この番号とこの内容は一致していない」というものや、「この言葉知っています」というだけのものは解答として不十分と言えます。とはいえ、問題の趣旨に沿って書いていれば何かしらの点数をつけています。個々のアイデアに関しては、努力して考えて出題に沿った内容であれば大丈夫です。

開智中学校 フィリアホール

開智中学校 フィリアホール

インタビュー1/3

開智中学校
開智中学校1997年に岩槻に開校して以来、「平和で豊かな社会を作ることに貢献できる、創造型・発信型の国際的リーダーの育成」を教育理念とし、探究型の学びを中心とした新しい学習のあり方を模索し推進している。
岩槻キャンパスの自然豊かな敷地にある一貫部棟校舎は中央に5階までの吹き抜けがあり、開放的な空間となっている。その一階部分にはテーブルが複数置かれ、生徒たちが自習やミーティングなどで使用している。蔵書3万冊を超える図書室、広大なグラウンド、バスケコート二面がとれる体育館のほか、ステージ発表や講演などが行われるホールが複数あり、自習室にはブース式の学習スペースが140席程度用意されている。昼食は中2まで弁当持参だが、希望者には給食弁当もある。中3からは食堂などが利用できる。
入学時に入学者自身が自らの志望に応じてIT(目標の大学が決まっている人のコース),MD(医療従事者を目指す人のコース),GB(グローバルな仕事を志望する人のコース),FD(志望をこれから考えたい人のコース)の4つのコースのいずれかを選択する。加えて、全員がS特待生で構成される「創発クラス」を2024年度入学から設置。創発クラスでは数学の特別授業「ガウス数学チーム」など各教科でより発展的な授業を展開する。この4コース制と創発クラスは高1までで、高2からは志望大学別のクラス編成となり、医学部を目指す医系クラスも設置される。高2からは放課後の特別講座が開始され、生徒の多くが塾や予備校に頼ることなく難関大学への進学を目指す。さらに国際バカロレアのディプロマ・プログラムの候補校ともなっており、2025年4月以降はこの資格を利用しての海外有名大学への進学も視野に入る。
開智の教育の核となる探究活動は、中1から生徒全員が個人のテーマを決め、疑問・仮説・検証・結論のサイクルを何度も繰り返し、考察を深めていく。毎年行われる探究発表会ではポスター発表、スライド発表など様々な方法で生徒全員が発表を行う。フィールドワークは、中1は磯、中2は森で「はかる」「くらべる」をテーマにグループワークを行う。中3は関西をフィールドとして地域調査を行う。高1では首都圏で個人の探究テーマに関わる調査を実施し、高2ではイギリスの大学で現地の大学生を相手に探究の成果を発表する。中2~高1の希望者対象にオーストラリア・アメリカ・シンガポールなどへの語学研修もある。
生徒の自主性を重んじる校風で、生徒主体で作られた委員会や部活動もある。それ以外でも生徒の自主的な活動が活発で、SDGsなどの活動も盛ん。部活動は運動部18、文化部12、同好会1。ディベート部や文芸部かるた部門などは全国レベルでの活躍もある。