シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

昭和学院秀英中学校

2020年03月掲載

昭和学院秀英中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.計算で求めた結果が何を意味するのかを考えてみよう。より理解が深まるはずだ。

インタビュー3/3

できるかできないか、そのさじ加減で力とやる気を引き出す

松永先生 6年間あるので、中学生の間は考える問題を多くしていますが、高校生になると時間に追われがちです。そういう状況の中でも少しでも力をつけてほしいので、あとちょっとで手が届くという問題を選んで出すということをしています。できるかできないかあたりの問題を出せるのは、中学から接していて生徒1人ひとりのことをだいたいわかっているからです。それは中高一貫で学ぶメリットだと思います。

できるかできないかあたりの問題を出すというのは、入試問題も同じですね。

嶽本先生 入試問題でも本当は最後の問題を問いたいんです。でも、それだけを出題したら受験生の多くが解けずに、あってもなくてもいいような問題になってしまうので、その問題に行き着くためのステップとして小問をいくつか入れています。授業でも、本当に難しい問題を出したいという気持ちはあるのですが、それでは生徒の実力に見合わず、他人事になってしまってはもったいないので、ちょっと手を出せそうなところまで誘導する、そういうアプローチは必要だと思っています。

数学科/嶽本 航先生

数学科/嶽本 航先生

来年度より英語に続き数学も習熟度別授業を開始

長谷川先生 来年度(2020年4月)から、新中3の数学で習熟度別授業を開始します。今年度の中3は英語で先行してやりました。来年度は英数で行うことになります。本校では中3から数Ⅰに入ります。カリキュラム上は高2で数Ⅲまでを一通り終えるという内容になっています。数学が苦手な子に対して、その出だしをきっちりとケアしていく。得意な子はさらにその力を伸ばしていく。そういうことを目的としています。
背景には国立大学を志望する生徒が増えていることがあります。土台をしっかり作ることができる体制を作る必要がある、ということで導入しました。

算数の入試を通して、入学後に伸びる素養のある生徒さんが入って来ているという手応えはありますか。

長谷川先生 2年前から午後入試に算数の配点を多くした入試を実施しています。その学年を担当する教員に話を聞くと、やはり数学が好きな子が集まってきているようです。それもあって習熟度別クラスを行うことにしました。

昭和学院秀英中学校 掲示物

昭和学院秀英中学校 掲示物

学習を次に生かしていく力を問いたい

算数の入試で求めている力を教えてください。

松永先生 先ほど嶽本も言っていましたが、小問1、2、3を解いていく中で学んでいく力です。小問1を解いたことでなにかしら学習しているはずなんですよね。その学習を次に生かしていく力を問いたいと思っています。この問題もそうなのですが、実験したことをいかに学びにつなげられるか。そういうことを考えて出題しています。

嶽本先生 初見の問題に関して何かしらのアイデアをもって手が動く生徒を育てたいので、そういう力をもった小学生に入ってきてほしいという思いがあります。論理的な肉付けをする力は、入学してから数学の授業を通してつけてもらおうと思っていますが、その時に手を動かすことができず、問題を前に立ち尽くされてしまうと、先に進めません。6年間という限られた時間の中で、大学受験で使えるところまで数学の力をつけるということを考えると、小学生の時から自分で考えて手を動かすことを大事にしてきてほしいと思います。まず手が動けば試行錯誤ができます。それは自主的にものごとを考える、という本校で育みたい力につながると思っています。

1問1問にじっくり取り組もう

長谷川先生 受験生は問題を解くために多くの時間を費やしていると思います。テストでは時間が限られていますが、自分で学習する時は1問に時間を取れるでしょうから、学年が低い時には特に1問に対して真摯に向き合ってほしいと思っています。こちらも相当の時間を費やして問題を作っています。先ほど小問で誘導するという話がありましたが、個人的には解ききってほしいという思いを込めてどのように導くかを考えています。結果的には、小問をどこまで解くことができるかが難易度となって点数のバラツキにつながるのですが、自分で学習する時には最初から順に、流れに乗って、最後まで楽しみながら解いてほしいです。

記述問題では、中学生よりもよく書けている子がいますが、多く見られるのは式の羅列です。自宅でこの問題を解く際にも、考えたことをお父さん、お母さんに説明するなど、親子でやりとりをするといいと思います。そのやりとりの内容が完璧ではなくても、それが訓練になって自分で記述できる力がついていくのではないかと思います。記述問題に限らず、過去問にじっくりと取り組むことが解ききる力につながると思いますので、丁寧に学習してほしいと思います。

昭和学院秀英中学校 プール

昭和学院秀英中学校 プール

計算で求めた結果が何を意味するのかを考えよう

嶽本先生 話をしていて気づきましたが、文章題で言葉を式に変えるという問題はよく出ますが、今回のような式を言葉に変えるという問題はあまりないかもしれませんね。数学を理解する時に、いわゆる「逆」にあたる、式を言葉に変えることは大事なことだと思います。計算で求めた結果が何を意味するのかを考えることは、数学を理解したり深めたりすることにつながります。それが本質だと思うので、そういうことを入試問題の中で問えたことは、試みとしていいことだったのではないかと思います。

インタビュー3/3

昭和学院秀英中学校
昭和学院秀英中学校1940(昭和15)年、市川市で開校した昭和学院。昭和学院秀英高等学校の設立は1983(昭和58)年で、総合教育機関としてさらに社会的に貢献するとともに、地域社会の発展に寄与するため、国際都市・幕張新都心に隣接する現在の地で開校した。その2年後の1985(昭和60)年には中学校を併設。千葉市の文教地区というきわめて恵まれた環境の中で、「質の高い授業」「きめ細やかな進路指導」「豊かな心の育成」という3つの柱をもとに、真の学力を身につける教育を実践している。
もっと学びたくなる、受けたくなる「質の高い授業」、一人ひとりの夢の実現に導く「きめ細やかな進路指導」、明るくのびのびした人格を育む「豊かな心の育成」という実践目標のもと、秀英独自の充実したカリキュラムを、じっくり腰を据えて展開してきた結果、大学進学実績は毎年向上している。進学に特化した特進コースや習熟度別クラスを設けているわけではない。生徒一人ひとりが真の学力を身につけるという、あたりまえのことを、高いレベルで着実に行うことを追求している。
中学校では、毎日の家庭学習を習慣づけるとともに、基礎・基本の確実な習得を図る。毎日の授業はもちろん、「朝自習」や各教科の課題、「補習・講習」などにおいて、わかるまで丁寧に細やかに指導し、応用力を高める高校3年間の学習へとつなげている。高校1年はクラス別授業で実力を養成、高校2年から文系・理系のコース制を導入し、高校3年では受験対策を徹底して、その成果として確かな合格実績をつくられている。
施設としては、物理・化学・生物・総合実験室など、特別教室が充実している。また、全面人工芝グラウンドや太陽熱利用プールなどもある。恵まれた環境のもと、クラブ活動も活発で、剣道・柔道・水泳・新体操などの運動部や文化部のほとんどの部は、中高合同で活動している。また、歌舞伎、文楽、能の鑑賞教室や、各界の第一線で活躍される人の文化講演会などの実施は、生徒の視野を広げて将来の進路を考える機会となっている。