シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

昭和学院秀英中学校

2020年03月掲載

昭和学院秀英中学校【算数】

2020年 昭和学院秀英中学校入試問題より

スポーツクライミングの複合競技は、スピード,ボルダリング,リードの3種目をこの順に行い、各順位の積をポイントとします。複合競技はポイントの小ささで順位が決まります。ただし、各種目で同順位はないものとします。次の問いに答えなさい。

(問1)A,B,C,Dの4人の3種目の順位が以下のようであるとき、4人を複合競技の成績が良い順に左から並べなさい。

問1 図:3種目の順位

(問2)順位の積をポイントとした場合と順位の和をポイントとした場合とで、複合競技の成績が変わります。その特徴(とくちょう)を比較(ひかく)して述べなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この昭和学院秀英中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(問1)D、C、B、A

(問2)[例]積をポイントとした場合は、和をポイントとした場合と比べて1種目だけでも順位が良い人が、成績が良くなるという特徴がある。

解説

(問1)
A~Dの各順位の積を求めると、次のようにポイントが決まります。
8×7×4=224 …… Aのポイント
6×6×6=216 …… Bのポイント
11×2×9=198 …… Cのポイント
14×14×1=196 …… Dのポイント
ポイントが小さい方が、成績が良くなります。ですから、成績が良い順に並べるとD、C、B、Aとなります。

(問2)
ここでは、(問1)の数値を使って、順位の積をポイントとした場合と順位の和をポイントとした場合とを比較します。

【順位の積をポイントとした場合】
スピード、ボルダリングの2種目が終わった時点でのそれぞれのポイントは次の通りです。
8×7=56 …… 2種目終わった時点でのAのポイント
6×6=36 …… 2種目終わった時点でのBのポイント
11×2=22 …… 2種目終わった時点でのCのポイント
14×14=196 …… 2種目終わった時点でのDのポイント
この時点で、成績が良い順に並べるとC、B、A、Dとなり、Dは他の3人に大差をつけられているように見えます。
(問1)より、3種目終わったときは、成績が良い順にD、C、B、Aとなるので、最終種目のリードで1位を取ったDが、大きく複合競技の順位を上げたことがわかります。

【順位の和をポイントとした場合】
スピード、ボルダリングの2種目が終わった時点でのそれぞれのポイントは次の通りです。
8+7=15 …… 2種目終わった時点でのAのポイント
6+6=12 …… 2種目終わった時点でのBのポイント
11+2=13 …… 2種目終わった時点でのCのポイント
14+14=28 …… 2種目終わった時点でのDのポイント
この時点で、成績が良い順に並べるとB、C、A、Dとなります。

また、3種目が終わった時点でのそれぞれのポイントは次の通りです。
15+4=19 …… Aのポイント
12+6=18 …… Bのポイント
13+9=22 …… Cのポイント
28+1=29 …… Dのポイント
成績が良い順に並べるとB、A、C、Dとなり、最終種目の結果で大きく順位を上げたといえる人はいません。

以上より、1は何度かけても積が変わらないため、順位の積をポイントとした場合は、順位の和をポイントとした場合と比べて1種目だけでも順位が良い人が、成績が良くなるという特徴があることがわかります。

日能研がこの問題を選んだ理由

今年の東京オリンピックの新種目でもある、スポーツクライミングの複合競技のポイントの計算方法を題材とした問題です。2021年から実施される大学入学共通テストや、新しい学習指導要領でも大事にされている「日常生活や社会の事象を数理的にとらえる」ことともつながる問題といえそうです。
(問2)では、3種目の順位の積をポイントとした場合と、3種目の順位の和をポイントとした場合の成績の変化の特徴を比較し、説明します。この複合競技は、ポイントの小ささで順位が決まります。数としての「1」は何度かけても積が変わらないという特徴を持っているので、一度でも1位を取ると、大きく複合競技の順位を上げることにつながります。この問題に取り組んだ子ども達は、この問題を通して、「1」という数が持つ特殊性が、日常生活や社会の中で使われているということを感じることでしょう。
このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。