出題校にインタビュー!
山脇学園中学校
2020年02月掲載
山脇学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.SIで科学的な思考力を鍛える
インタビュー3/3
自ら学ぶ意識が高いグループワーク
藤村先生 理科の授業では、グループ内で考えをまとめて発表するグループワークを積極的に行っています。実験の前にどんな結果になるか、実験後にはなぜこの結果になったのか、結果をどうグラフ化するか、話し合います。
西森先生 グループワークは中1から行っています。実験結果のグラフを書かせると、少しずつ違います。すぐに模範解答を写すのではなく、互いに見比べて「ここが違う」と指摘し合い、正解を見つけます。グループワークは「自ら学ぶ」意識が高まると感じます。最後に模範解答を見て「合っている」と確認して終わると、「わかった」という実感があります。
中学は毎週、席替えをするので毎回違うメンバーと話をします。馴れ合いにならず、新鮮な発想に触れることを生徒も楽しんでいるようです。授業は議論が活発で賑やかな場面も増えていると感じます。
山脇学園中学校 科学技術系継続研究室
通常授業とは別枠でサイエンスと向き合う
大島先生 本校では、これからの時代に求められる創造的な学力を育む場として「3つのアイランド」を設けています。サイエンスアイランド(SI)が思考する場、リベラルアーツアイランド(LI)が判断する場、イングリッシュアイランド(EI)を表現する場として、それぞれ特化した活動を行っています。
藤村先生 中1・中2は「サイエンティストの時間」を週1時間行います。中1は問いかけを重視して、実験結果から何がわかるか、どのように分析するかを考えます。中2は他者に伝える表現力にも力を入れます。また、自分でテーマを見つけられるように、どんな実験をすれば結果がどうなるか、仮説を立てて検証もします。
大島先生 中3は「探究基礎」といって、理科のSIと社会科のLIが統合したカリキュラムで一つのテーマに取り組みます。
例えばDNAがテーマなら、まず1カ月間、SIで効率的なDNAの抽出方法について仮説、検証します。次の1カ月間は、LIで遺伝子組み換えの倫理的問題について議論します。理科と社会科の教員がそれぞれ交代で受け持ちます。1つのテーマを両面から考えることで、技術を社会で生かすにはどうすればよいかバランス感覚が養われます。
山脇学園中学校 ポスター発表掲示物
1つのテーマを深掘りできる余裕がある
藤村先生 サイエンティストの時間は、通常授業と違い、一つのテーマを約1カ月じっくり取り組むことができます。テーマを深掘りでき、振り返って工夫することもできます。
大島先生 中1の夏休みに取り組んできたのが「プランクトン図鑑」の作成です。顕微鏡観察室では双眼式の顕微鏡が1人1台使えますから、スケッチはかなりシビアに指導します。正確にスケッチするには、しっかり見なければなりません。中1の始めにしっかり観察することの大切さを伝えています。
西森先生 理科の授業ではスケッチに時間をかけて指導する余裕がないので、サイエンティストの時間でしっかり取り組めるのは大きいですね。
大島先生 ミジンコといっても、実はいろいろな種類があります。生徒は参考図鑑を見ながら「これは○○だね」と楽しそうです。よく観察してスケッチすると、「この特徴があるから●●だ」とわかります。物事にじっくり向き合うことで思考力の養成につながります。
山脇学園中学校 顕微鏡室
湧き上がった疑問をとことん探究
大島先生 探究基礎をきっかけに、確実に視野を広げている生徒もいます。
例えば、DNAの抽出量を増やす方法として、入手が簡単な冷凍食品のブロッコリーを選んだ生徒がいました。抽出できなかったので、別のメーカーのものも調べました。抽出できない理由を知ろうと、メーカーの製造工程の動画を見たり、電話で問い合わせたりしていました。
湧き上がった疑問をそのままにしておけなかったのでしょう。疑問の始まりは技術的なことですが、視野を広げて解決に必要があると思ってアクションを起こしたことを頼もしく感じましたし、発表もおもしろく聞きました。
自分にしか語れない内容が聞き手を引きつける
藤村先生 発表時間は学年が上がるにつれて長くします。その際、自分の視点で、自分にしか言えないことを述べるようにします。
ポスターの作成も、始めはわかったことをすべて盛り込もうとしますが、それでは見る人がどこを見ればいいかわかりません。また、書いてあることをそのまま読んでも伝わりません。一度、伝わらない失敗を経験してから、どうすればいいか考えさせます。中2にはポスターのプレゼン資料と原稿は別にするように指導します。
また、どんな発表がおもしろかったかも聞きます。においや手ざわりといった体験談を入れるとわかりやすいなどの共通点を見つけて、自分の発表に生かすようにします。
大島先生 発表の評価ポイントは教員と生徒で共有します。中3の探究基礎では生徒も発表者を評価するので、他者の発表を自分ごとに置き換えるようにしています。
いろいろな活動を通して経験値を高める
大島先生 科学に興味がある生徒は、中3で「科学研究チャレンジプログラム」という希望制のクラス(1クラス)を選択できます。生物班、ロボット班、PC班に分かれて、実験室とは別の専用の研究室で年間を通して研究ができます。
本プログラムでは「西表野生生物調査隊」の活動も行っています。マングローブ林などのフィールドワークを通して、西表島の豊かな生態系を観察・調査します。昨年12月の日本マングローブ学会大会では、中3から高2まで4グループが口頭発表しました。中3のプログラム終了後、高校でも研究を継続することができます。
高校の探究活動は、高1が富士山・伊豆半島のフィールドワークを、高2は長崎・沖縄のフィールドワークを行います。高1のポスターセッション形式の発表会には、静岡大学の先生や学生の方にもご参加いただきました。外部の方からは厳しい指摘もありますが、評価していただけると生徒の自信になります。
高1のテーマが進学先につながった卒業生もいます。なぜ、その学問を学ぼうと思ったのか、その背景にある経験値を、本校でのさまざまな体験で積み重ねていけたらと思っています。
山脇学園中学校 ポスター発表掲示物
インタビュー3/3