出題校にインタビュー!
山脇学園中学校
2020年02月掲載
山脇学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.失敗したときの対応力を試す問題
インタビュー1/3
失敗した!あなたなら、どうする?
藤村先生 この問題は、「うまくいかなかった」実験について聞いています。日常生活でも、きちんと準備したつもりでも、思う通りにいかないことがあります。失敗したとき、「次にどうするか」こそ大事です。
失敗を次に生かすには、ふりかえりをして、原因を分析し、工夫します。では、受験生はどう考えるか聞いてみたいと思い、頭の中であれこれ試行錯誤する思考実験のつもりで出題しました。
外遊びなどの実体験が豊富なお子さんは、失敗をたくさん経験しているでしょう。そうしたお子さんは、失敗から学ぶ力があるのではないかと思います。
理科/藤村 文美先生
ポンポン船は『崖の上のポニョ』から
この問題は、体積変化をポンポン船の実験で聞いているのがおもしろいと思いました。
藤村先生 ポンポン船は『崖の上のポニョ』を見て、自分の子どもと一緒に作りました。始めはうまく動かなくて、あれこれ直してようやく動きました。
さらに、本校のサイエンスアイランド(SI)部の生徒にもポンポン船を作ってもらうと、銅パイプをきれいに曲げられないなど悪戦苦闘の連続でした。水を噴出・吸入する銅パイプの長さは同じでなければまっすぐ進みません。なぜぐるぐる回ってしまうのか、どうすれば解決できるか、生徒に考えてもらうと、次はこうしよう、ああしようと話し合い楽しんでいました。
このとき、ポンポン船の原理は中学生にもわかりやすかったので、入試問題に取り上げることにしました。ポンポン船を知らなくても、リード文を読めばその原理がわかるようにしたつもりです。実験するようにリード文を読み、ポンポン船がどのようにして動くのかを読み取り、理解する力も求めています。
船そのもの以外の工夫が思いのほか多かった
どんな解答がありましたか。
藤村先生 6割程度が「風よけを取り付ける」というものでした。屋外で火を使っているので、思いつきやすい答えです。
一方で、「池の藻がからまるから、池を掃除する」「魚がつつくから、網を囲って防ぐ」のように、船そのものを工夫するのではなく、池の環境や池にすむ生きものに注目した答えが思いのほか多く、印象に残りました。ある意味、子供らしい自由な発想と言えます。あるいは、「船のつくりは“完璧”だから、うまく動かないのは船以外に原因があるはず」と考えたのかもしれません。
うまく動かすにはどうすればいいか、自分なりのアプローチを考えてもらいたかったので、正解・不正解にかかわらず、こちらのねらいに沿って答えてもらえたと思います。
山脇学園中学校 白塔
正解は実現可能で科学的な方法であること
この問題の採点基準を教えていただけますか。
藤村先生 一つは、現実に可能な方法であること。「池の藻を掃除する」はできなくはありません。もう一つは、間違っていないこと。つまり、科学的な原理・原則に反していない、常識から外れていないことです。
解答の多くは、この条件をおおよそ満たしていたと思います。風よけに傘を付ける、銅パイプの水の出入口にゴミが入らないように網のカバーを掛けるなど、効果のあり・なしにかかわらず、実際にできそうなアイデアには点数をあげました。
「風が吹くから波よけを付ける」では説明不足
藤村先生 解答は理由と工夫を書いてもらいましたが、両者に整合性がない答えもありました。例えば、「風が吹くから、波よけを付ける」という答えは、合っていそうですが、論理が飛躍して説明不足です。受験生が本当にわかっているかどうか判断しかねます。「風が吹くから、波が立ち、船が揺れて炎もゆれるので、波よけを付ける」と説明してほしいところです。
また、リード文をきちんと読んでいない、実験の条件を読み取れていないと思われる答えもありました。「室内で動かす」という答えでは、実験室でうまく動いたから、環境を変えて「屋外の池で」やってみようという実験の目的に合いません。
山脇学園中学校 武家屋敷門
文章記述問題は挑戦しようとする解答が増えた
この問題を含め、文章記述問題の出来具合はいかがですか。
藤村先生 言いたいことはなんとなく分かるけれど、言葉足らずな記述が目立ちました。何とか受験生の意図を読み取ろうと、採点に時間がかかりました。
文章記述問題は、主語と述語がかみ合わないなどの伝わらない表現は減点対象になります。普段から他者に伝えることを意識して書きましょう。短い文章で書くと、主語と述語の関係がはっきりして言いたいことが伝わりやすくなります。
普段から他者に伝えることを大事にしてもらいたいですね。文章記述問題は、あきらめずに何とかして答えを導き出そうとする粘り強さも見ています。
西森先生 文章記述問題を出した当初は、しっかり書けているか、無答かの二極化でした。最近は、「挑戦しよう」と前向きに取り組んでくれる受験生がとても増えたと思いますし、無答はかなり減ってきている印象があります。入試説明会で説明している出題のねらいをしっかり受けとめて対策しているように感じます。
山脇学園中学校 屋外実験場
インタビュー1/3