シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

山脇学園中学校

2020年02月掲載

山脇学園中学校【理科】

2019年 山脇学園中学校入試問題より

ポンポン船の作り方図1~図4

クラブの活動で「ポンポン船」を作ることになりました。ポンポン船の仕組みを見ていきましょう。
ポンポン船(図1)のつくりですが、木材で船本体を作り、動力としてろうそくと水の入った銅パイプを使います(図2)。銅パイプの中の水がろうそくにあたためられて、水が水蒸気に変わります。水が水蒸気になると体積が約1700倍になるため、銅パイプ内の水蒸気が水を押(お)し出します。押し出された水は水中に噴(ふ)き出し、船は前に進みます(図3)。そして、水蒸気が冷やされて水となり、その体積が減るため、銅パイプ内に水が吸いこまれ(図4)、もとの状態(図2)にもどります。そしてまた、銅パイプ内の水がろうそくによりあたためられ……と続いていきます。「水が押し出される」と「水を吸いこむ」が交互(こうご)にくり返されていく時に「ポンポン」と音がするので、このような船のことを「ポンポン船」と呼ぶのです。
(略)
さて、いよいよ屋外の池でポンポン船を動かしてみようと思います。ところが実験室ではうまく動いていたポンポン船ですが、屋外の池ではなかなかうまく動きませんでした。

(問)屋外の池でうまく動かなかった理由は何だと思いますか。また、それを改善するための工夫について、あなたの考えを述べてください。

とうとう屋外の池でも上手に走るポンポン船が出来ました。しかし、池の真ん中で止まってしまった時に、どうやって船を回収したらよいのか……まだまだ問題はたくさんあります。しかし、自分たちで作った船が気持ちよく走ると、なんだか爽快(そうかい)な気分になりました。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この山脇学園中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

(理由)風によってろうそくの炎がゆれ、パイプに当たりにくかったから。
(工夫)燃えにくい素材でろうそくの周りに風よけを取り付ける。
など

解説

まずは、ポンポン船が動くしくみをとらえましょう。問題に示された文章を読むと、ろうそくの炎が銅パイプ内の水を温めて気化させることによって、パイプから水が噴き出し、船が進むことがわかります。

次に、屋外の池がどのような環境なのかを想像してみましょう。屋内の実験室とのちがいに目を向けると、屋外の池ならではの環境がはっきりします。たとえば、池では、風がふいていたり、水面が波打っていたりしている可能性がありそうです。

最後に、とらえた船が動くしくみと池の環境を結び付けて考察しましょう。もし、風がふいているとすれば、ろうそくの炎がゆれて十分に銅パイプを温めることができず、パイプから噴き出す水が減ると予測できます。この現象を改善するためには、風よけを付けるなどの工夫をして、ろうそくの炎が風の影響を受けないようにすればよいでしょう。

日能研がこの問題を選んだ理由

この問題では、問題に示された図や文章をもとに、ポンポン船が動くしくみをとらえたうえで、屋外でポンポン船がうまく動かなかった理由を考え、それを改善するための工夫を説明します。普段の生活の中でも、頭の中ではうまくいくと考えたにも関わらず、実際に試してみるとうまくいかないことはたくさんあります。

子どもたちは、この問題を通して、何かがうまくいかないときや、思いがけない現象が起きたときにはその理由に目を向け、どのように工夫すれば改善できるのかを考えることを学ぶでしょう。

また、問題文の結びにあるように、ものの見方によっては、問題はまだたくさんあり、ひとつのものごとの終わりは次のものごとの始まりでもあるということにも、気づくかもしれません。

このような理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。