シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

捜真女学校中学部

2020年02月掲載

捜真女学校中学部の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.現実社会で生きていくうえでは非常に重要な条件や制約を考慮した問題

インタビュー1/3

今自分に何ができるのか?を気づかせる設問を作成

それでは、まず出題の意図を教えてください。

照下先生 子ども達を選抜するための問題というよりも、「子ども達に今この問題から考えてもらいたい」「新たな視点をぜひ持ってもらいたい」「今ここであなたができることがある」ということを気づかせる、そのための設問を出題しようという意図が根底にありました。

この問題は資料Aの意見に対し、BおよびCという制約を課すという形にしたのですが、条件や制約に配慮する力というのは現実社会で生きていくうえでは非常に重要なのではないかと思うのですね。学校生活の中でも「文化祭でイベントやりたい」ということや、「校外の方と何か交流を持ちたい」という場合に、様々な障害が現れてくるわけです。そこでへこたれてしまうのでなく「こういう制約があるからこのようにしていこう」とか「この条件があるから逆にこういう発想が活かせないか?」という気持ちを持つところが非常に大事なのではないかと思っています。

条件や制約などを不便なものや私たちを縛るもの、としてとらえるのではなく「条件があるから工夫ができる」とか、「制約があるから配慮ができる」という前向きな気持ちでチャレンジできる子ども達を育てられるといいな、という気持ちがあります。

国語科/照下 千恵先生

国語科/照下 千恵先生

受験テクニックだけで解ける問題にはしたくなかった

照下先生 このような意図で設問を作ったわけですけども、正答例を考える上では、高い受験技術や時間をかけた訓練を積んだ生徒でないと解けないという問題だと困るかな、と思ったんです。むしろ子どもの素直な言葉や常識的な生活力など、普段の生活の延長上にある考え方や発想を持ち、自分のほうから一歩前へ出て何かを考えるという視点を持ってさえいればできる、そういうことが測れるとよいと考えて配慮いたしました。

その中でも2点ほど特に配慮した点としては

・子どもの言葉で表現できる解答であること
・自然な感覚で理解できる範囲で正答を決めること

がありました。難しいことを駆使して立派なことを言うことを求めているのではなく、あなたが今できることは何なのかということを素直に問いたい、ということです。受験のために知識を詰め込むことや蓄えることは決して無駄ではないし広がりは出ると思うのですが、注目したいのは「それを今持っているか」「完成された知識があるか」ということではなく、わずかな知識であっても活用できる能力があるかどうかです。

また捜真として大切にしたいことは、「他者のために」活用するということです。困っている人がいた際に、自分ができることを人のために駆使したり情報や知識を使ったりする、という考え方や生き方というものを持てたらよいのではないかと思っています。

子どもの素直な言葉、というのは実際の答案からはどれくらい垣間見られたのでしょうか?思ったような解答は得られましたでしょうか?

照下先生 解答用紙を見ていただくとわかるのですが「たくさん書きなさい」というものではありません。一言、二言でもかまわないのですが、その限定した範囲の中での解答は十分得られたと思います。添削をしてみてわかったのですが、子どもって案外いろんなことを考えるんだなと。たとえば「ベルを置いて鳴らしてもらう。そうすればバックヤードで忙しく仕事をしていても気づいてもらえる」そんなことを書いた子もいましたし、「テープを作っておいて今日のおすすめについて放送すればお金もあまりかからないのでいいだろう」というものなど、結構楽しんで書いてくれている印象を受けました。解きながらいろいろ考えてくれたならよかった、という気持ちで採点していましたね。

普段の授業でも、アクティブラーニングにしてもこちらが設定して準備をするのですが、実際の授業で子どものほうから「先生、こうしたほうがいいんじゃないですか」とか「こういう班分けにしましょう」といったようにアドバイスしてくれることのほうが理にかなっているというケースが多くて、子どもの力って柔軟ですし、特に小学校6年ぐらいの子どもっていかようにも伸びる時期だと思うんです。小学校6年生のころから中学入試を経て入学してきて、という1年間で、どういう方向に伸ばせるかというのはすごく大切なことだな、と日ごろから感じています。

捜真女学校中学部 校章

捜真女学校中学部 校章

子どもの力を邪魔しない教育を目指す

中学1年生の子どもに接するにあたって大切にされていることはどんなことですか?

照下先生 捜真の生徒の資質としてとてもよいと感じていることとして、いたわりの心があることを挙げたい。たとえば中学1年生の授業で欠席の生徒がクラスに1人ぐらいいるとしてアクティブラーニングをやりましょう、班を組みましょう、となり、いざ発表ということになると、4人で班を作っても欠席の生徒の分を誰が負担するのか?ということや、実際来るのか来ないのか?といった現実的な問題が生じます。それをこの人たちはどんな風に対応するんだろうと思って見ていると、もし1人が来なかった場合にどうするかを自分たちで話すんですね。私としては「どう?」と聞くだけなのですが、「心配しないでください、万全です」と返してきたりするので、非常にしっかりしているなと思いますし、こちらが働きかけてもなかなか教室に入ってこられなかった生徒が、アクティブラーニングの授業で班活動するときだけは授業の最初から座っているんです。

子どもの力はあなどれないというのがまずあって、それを邪魔しないことが優先と思っています。できない人が切り捨てられやすいという環境が学校教育の中にあるとよく言われますが、捜真では、それがいたわられる、活かしてもらえるというのがすばらしいと思ってみています。

確かに、そのような想いが問題にも表れているなと感じます。

照下先生 おそらく捜真生だったら「もっといいアイデアあるね」「私だったらこう出す」と、喜んで解きますね。ちなみにラップ部分は元の写真はケースだったんです。この問題を出すためにいろいろな鮮魚コーナーに行ってみたんですが、市場のようなところでは覆いをかけずに魚がお皿の上に乗っている状態で、もう少しこじんまりした店舗の魚屋さんだとラップ掛けなんですね。ところが大手スーパーだと子どもがつついたりしないようにプラスチック製のケースに入っています。そういった部分でも距離感が変わってくるのかな、という部分で気づくことがありました。

捜真女学校中学部 カンヴァース・メモリアルチャペル

捜真女学校中学部 カンヴァース・メモリアルチャペル

社会における制約や条件は子どもであっても無視してはいけない

この解答では点数をあげられないな、というようなものはありましたか?

照下先生 厳しくつけたところとして、制約や条件を無視しているということがあげられます。たとえば、生ものを取り扱わないと書いてあるのに「食べないとわからないから食べさせる」というようなものです。それは衛生面や食中毒の可能性がある点でNGとしています。また、店舗の改造など巨額の予算がかかるものに関しても現実問題として大変なのでNGとしました。制約は現実社会を生きる上では無視できないものですので、そこを無視するものは子どもであってもだめなのだ、という基準をはっきりとしておく必要があると思うんですね。よってそこは厳しくつけました。
ただし、言葉の拙さに関してはなるべく意図を組む形で採点しています。

意図の部分ですが、結果として条件や制約を守っていないように受け取られる解答はありましたか?

照下先生 その部分はわりとはっきりしていました。表現しようとしているし気持ちはあるのだけれども、具体的名称がわからない中でも一生懸命伝えようという姿勢があれば好感を持って受け止めました。入試問題の採点をしていて一番つらいのは、こちらがどんなに力をかけて作っても真っ白というのがさみしいですよね。それは受けに来る子たちの力とこちらの期待度のずれであって、出題意図が伝わらなかったというこちらのミスなわけです。でもこの問題に関しては結果としてほぼ全員書いていました。ですから正答率は悪くなかったです。1人2人時間が足りなかったかなという子がいたぐらいで、書いてくれたことは本当に良かったです。

授業の準備の中で素材が見つかって、入試問題にしたら面白そうだな、と思うようなものはありますか?

照下先生 ありますね。定期試験の際には中学校であっても応用問題を出すようにしているんですね。担当者が1学年を全部持つわけでなく、割とフレキシブルに2~3人で持ったり内容で分けたりする学校なので、必ずほかの教員に相談をすることになります。たとえば、平家物語をやったので平家物語の古文の知識を問うのではなく、現代文で平家物語の面白さを語っているものを使いたいね、と。じゃあ探そう、となって準備するわけです。その中で気づいたり、これが面白かったと紹介したりといった流動的な動きが絶えずあるかな、と思っています。

捜真女学校中学部 教室

捜真女学校中学部 教室

今日よりも明日、何かが良くなるためにどうしたらいいのか?という視点を持って生徒には生きてもらいたい

言葉に対するこだわりを感じますね。全体におけるこだわりのようなものはありますか?

森川先生 日常生活の中で気づきがあるかないかというのはものすごく大きいと思います。今日と同じ明日が訪れて、また次の日も同じような明日が訪れる、という認識のもとで生きていくのではなく、ここはもっと何か良くならないか、ここを改善したらもっと社会がよくなるよね、といった視点を持って生きていくことはとても大事です。そのようなことがこの入試問題の中にあって、それを捜真女学校に入学しなくても受験した児童が、「こんな問題が出たんだ」と家で話してくれて話題になり、社会に出た際、視覚障がい者に対して何かを考えてくれたらそれは素晴らしいことだと思うんです。

問題を作るうえで、この子を選抜するということはもちろんあるものの、それ以上に何か気づきがあったらなということは必ず問題の中に入れたいと思いますし、この問題をもとに誰かと会話する際のきっかけとなり社会に目を向けるような人になってくれたらいいなと思っています。

照下先生 普段の生徒指導を見ていても、一人一人の子どもの言葉や行動によく付き合っているな、と感じます。今この場で完成させることよりも、今気づいて何年かあとでいいから何かの芽が伸びる、そこを願っている、そんな気がします。

森川先生 小中高で学ぶ日数は限られています。卒業後社会に出て自分で問題を解決して様々なことを変えていく力が必要な期間が40数年にもわたってあるわけです。その長い期間の中で培う大事なものが学校教育の中で提供できるのならば、入試問題というのはその入口であり、こちらがその姿勢を示せるものだ、と思います。

インタビュー1/3

捜真女学校中学部
捜真女学校中学部1886(明治19)年、横浜山手に米国バプテスト派宣教師ブラウン夫人により英和女学校が創立。プロテスタントの日本バプテスト同盟に属する。1892(明治25)年に現校名に改称した。1986(昭和61)年の創立100周年にチャペルにパイプオルガンを設置。1991(平成3)年には新校舎を落成。2016年に、創立130周年を記念して食堂と自習室のある新校舎を建設。
校名のとおり、「真理を捜し求める」ことを建学の精神として、礼拝・聖書の時間、自然教室や修養会などをとおして、イエス・キリストによって示されている神の愛に基づく人格形成を行っている。校名の頭文字を白い富士と青い海に重ねた校章は、学院精神を象徴したもの。独自のプログラムにより国際性も育成するほか、保護者との連絡も密で、PTA活動も盛んに行われている。
小・中・高校が同じ敷地にある。体育館(含室内プール)も含めた7つの校舎、土の運動場、ベタニアガーデン、テニスコートなどを擁する。校内の施設にはパイプオルガンのあるチャペル、コンピュータ室、同校の教師だった日本画家・小倉遊亀に因んだユキホールなどがある。静岡県御殿場には自然教室ももっている。
特に英語に力を入れており、中高とも全学年で英語は少人数クラスでの授業を行っている。英会話は外国人教師による授業。中2以上の英語、中3以上の数学、高校生では、国語・社会で習熟度別授業も実施。高2・高3では大幅な選択科目を採用し、個々の進路を尊重した受講を可能にしている。聖書は高3まで必修科目。土曜日、放課後、長期休暇中に必要に応じて補習もある。4年制大学への進学率は9割に達し、早慶上智大、MARCHなど難関私大への合格者も増加している。
毎日20分の礼拝がある。共練会(生徒会)は、積極的、自主的に運営されている。クラブ活動は体育部門13、文化部門19あり、ソフトボール部、バトン部、水泳部、放送部は県内でもトップクラスの実力。母の日礼拝やクリスマス礼拝などの宗教行事のほか合唱コンクール、古典芸能鑑賞会、体育祭など、楽しい行事も盛りだくさん。共練会とは別にJOC(クリスチャン生徒の集まり)、YWCA(キリスト教女子青年会)、聖歌隊があり、聖書研究や奉仕など宗教的活動を行う。中1から参加できる春のアメリカ短期研修のほか、高1以上の希望者には、メルボルンでのオーストラリア夏期短期研修も。