出題校にインタビュー!
富士見中学校
2020年01月掲載
富士見中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.自分と、他者と、課題と向き合う探究プログラム
インタビュー3/3
授業の始めと終わりのペアワークで理解度を確認
授業はどのように進めているのですか。
藤川先生 従来は始めに教員が前回のおさらいをしていましたが、最近は生徒が隣同士で2~3分ふりかえりをします。「話す」というアウトプットによって内容が整理されます。授業の終わりも隣同士で2~3分復習します。
ペアワークは学んだことを記憶から引き出す想起練習に効果的ですし、相手にうまく説明できるかどうかで自分の理解度を確認できます。
中1は毎日席替えをするので、ペアもその都度変わります。いろいろな人と話す中でコミュニケーション能力が鍛えられ、異なる視点に気づくこともできます。
私の場合、50分授業のうち、アウトプット10分、残り40分がインプットのイメージで授業をしています。知識の引き出しがあればこそ、中身のあるアウトプットができます。
富士見中学校 レポート
中学の探究は学年ごとに重点テーマを設定
藤川先生 富士見では、社会に貢献できる自立した女性が身につけるべき「17の力」を設け、探究学習を通して6年間かけて育みます。探究学習は、「課題の設定」「情報収集」「整理・分析」「まとめ・表現」「ふりかえり」のプロセスを、学年ごとに1年かけて取り組みます。
どんな活動のときにどの力を意識するのか、前もって教員と生徒で共有します。そうすることで生徒の取り組み方が能動的になり、ふりかえりもしやすくなります。授業でも、始めに今日の授業のねらいを話すと、生徒は「聞き逃すまい」として授業を受けます。
中1は「問う」、中2が「調べる」、中3が「伝える」が重点テーマです。中1は生きものの「なぜ?」を探究し、中2は2度のフィールドワークを通して上野・浅草の魅力を調べ、中3は中学の集大成として個人で卒業研究に取り組み、ポスターセッションで発表します。
不足点は面談の質疑応答で生徒自身に気づかせる
藤川先生 卒業研究は10年以上続く取り組みです。以前は各自が冊子(卒研本)にまとめ、発表は優秀作品の生徒のみでしたが、卒業研究でも17の力を効果的に育めるように取り組み方を大きく変えました。
1学期の教員面談は中3の受け持ちではない教員が担当することで、生徒は緊張感を持って臨みます。1分間のテーマ説明は時間厳守。アドバイスではなく質疑応答するのは、生徒自身に気づかせるためです。アンケートを採るのであれば、回答サンプル数、年齢層や性別など対象者の属性についても踏み込んで聞きます。
面談で気づいた足りない部分を夏休みに調べて文化祭で中間発表します。来場者のコメントを参考に、テーマをブラッシュアップさせて3学期に発表します。発表は2回行うので、1回目にうまくいかなかったところを2回目に生かすことができます。
このように途中に他者の目に触れる機会があることで、生徒はモチベーションを保てます。どうすればステップアップできるか、ルーブリックで自分の立ち位置を確認して、何を、どうがんばるかが明確になります。
保戸塚先生 中1から人前で話す機会が増えたことで、中3だけで卒業研究に取り組んでいた頃と比べ、堂々とプレゼンテーションできるようになっています。質疑応答で予想外の質問が飛んできても、「それは調べていません」などと答える対応力がついてきました。発表の場数を踏んで、どんなときにどう対処すればいいか経験値を高めています。
富士見中学校 卒業研究
留学生と丸1日交流する「グローバルヴィレッジ」
貴校は校内でも多文化交流が盛んですね。
保戸塚先生 中1・中2対象の「グローバルヴィレッジ」は、日本の大学に通う約20カ国からの留学生(アジア・アフリカ中心)と1日かけて交流します。留学生の母国の自然や文化について話を聞いたり、こちらの疑問に答えてもらったりしたことをまとめて、留学生の母国を紹介するポスターを作ります。
藤川先生 今の生徒たちが社会人になる頃は、異文化の人とチームを組んで仕事をするのが珍しくなくなるでしょう。自分の価値観と相手の価値観は合致しないのは当たり前です。だからこそ、コミュニケーションを取って互いに歩み寄り、共有しようとすることが大事です。
富士見中学校 図書館
模擬選挙・模擬裁判を通して社会を知る
藤川先生 社会人になる前に学校でシミュレーションすることで、社会との接点を意識してほしいと思っています。
中3以上を対象にした模擬選挙は、実際の選挙の投票箱を使うなど本番さながらに行いますから、主権者としての自覚が高まるのではないかと思います。世界を見渡すと、投票できることが当たり前ではありません。生徒にはよく「日本がスタンダードではないよ」と言っています。
保戸塚先生 中3は弁護士の先生にご協力いただき模擬裁判を行います。被告人以外の役は生徒から募ります。判決を決める裁判員と裁判官役の生徒は、弁護士の先生と一緒に評議します。有罪か無罪かは第一印象によらず、検察官と弁護人の話をよく聞いて、とらえ方は本当にそれだけなのかを吟味して結論を出しています。
藤川先生 生徒は模擬裁判を通して、世の中は単純に白黒はっきりつけられないことを学んでいると思います。
富士見中学校 掲示物
社会への興味関心をどんどん広げよう
藤川先生 高3の世界史の授業は2019年12月現在まで取り上げます。「最近、国際ニュースがわかるようになった」という声があり、日常生活の中で世界のニュースに目を向けるようになっているのはうれしい変化です。興味関心を持って社会と向き合ってほしいですね。
教員は興味の入口までは導くけれど、その扉を開けて進むかどうかは生徒次第です。中学・高校の段階で視野を狭めてしまうのは実にもったいないことです。ちょっとでもおもしろそうだなと思ったら、怖がらずにやってみてほしいですね。
インタビュー3/3