シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

富士見中学校

2020年01月掲載

富士見中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.基礎・基本が身についていれば初見の問題でも太刀打ちできる

インタビュー2/3

初見の資料でも、その中に問題を解く手がかりがある

貴校の入試問題は、この問題のように、絵や写真、表やグラフなど、資料を読み取る力を試していますね。毎回出される地形図は、ほとんどの受験生が初見だと思います。

保戸塚先生 地形図はその場所を知っているかどうかで差がないように、あえて知らなそうな場所を出すようにしています。

藤川先生 その場所の地形図は初めて見るけれど、よく見るとその中に習ったことがあるはずです。地形図から読み取った情報と、習ったことを組み合わせて考えることができれば、正解にたどりつけるようにしているつもりです。
初見の問題であっても、本校の入試問題は基礎・基本が中心ですから、落ち着いて問題と向き合えば解くことができると思います。

社会科/保戸塚 諒先生

社会科/保戸塚 諒先生

地形図から面積を求める問題は合否に影響

第1回入試では、東京オリンピック選手村建設予定地の東京都中央区晴海付近というタイムリーな場所の地形図を使い、指定した面積を求める算数との融合問題を出していますね。

藤川先生 この問題の正答率は合格者は約75%でしたが、全体では60%に届かず、合否の分かれ目になった問題の一つと言えます。
学校説明会で配布している受験ガイドには、受験生全体の正答率と合格者の正答率を分けて掲載しています。正答率の差が大きい問題ほど合否に影響します。苦手な単元や形式の問題があるでしょうが、合格者の正答率を見て、合格の一つのめやすにしてもらえればと思います。

富士見中学校 グラウンド

富士見中学校 グラウンド

歴史の流れは出来事の因果関係でつかむ

藤川先生 例年、受験生が苦手にしているのが歴史の出来事を並べ替える問題です。出来事の年号を知っているかどうかを聞いているわけではありません。「○○があったから●●になった」という因果関係をつかんでいればできると思います。常に「なぜ?」を意識して学習すると、覚えた知識がつながって歴史の流れが見えてくると思います。
苦手といえば、公民分野もなかなか得点できていません。小学校ではそれほど広く深く学習しませんから、こちらが問うことは限られます。公民は基礎・基本をしっかり押さえれば比較的得点しやすいでしょう。

富士見中学校 センターホール

富士見中学校 センターホール

カタカナ用語は書かずに覚えたつもりになっている

保戸塚先生 中1を教えていて気になるのはカタカナ用語の間違いです。「カタカナ用語は書いて覚えていません」というのが理由です。
チェックマーカーを引いて赤シートで隠す勉強で、読んだだけ、聞いただけで覚えたつもりになっているけれど、書くことができません。「フェアトレード」を「ペアトレード」と書いても間違いに気づけないのは、意味とセットで覚えていないからです。
用語の漢字指定は、なんとなくではなく、きちんと覚えているかどうか見ています。漢字から意味がある程度推測できますが、見た目や音から「こんな感じ」と思い込んで違う漢字を書いてしまう。知っておいてほしい用語を出しているのですが、漢字の間違いは結構あります。
社会科では「書く」という能動的な作業はどうしても必要です。覚えたと思ったら一度書いてみるようにしましょう。

インタビュー2/3

富士見中学校
富士見中学校1924(大正13)年に富士見高等女学校として発足。40(昭和15)年に財団法人山崎学園が経営を引き継ぎ、47(昭和22)年に富士見中学校、48(昭和23)年に高等学校を設立。山崎学園は、山種グループの総帥・山崎種二(初代理事長)が教育事業に進出するために設立。
「純真・勤勉・着実」を建学の精神とし、「良識ある判断力、自主・自律の精神、協調・連帯の精神」を持つ国際的な現代女性の育成を目指している。大学現役合格を目指す進学校として、基本は勉強に置くが、進学実績だけでなく生徒の個性と可能性を伸ばすことを重視し、一人ひとりの生徒を大切にする。教育=人間として、生徒と教師の信頼関係も厚く、自由でのびのびとした雰囲気がある。休み時間や放課後では、いたる所で生徒が質問している姿が見られる。
駅から徒歩数分の環境にある。現在の校地には、中高校舎、体育館のほか地下温水プール、高3自習室、学習ホールなどを備えた50周年記念館、550名収容の山崎記念講堂、百人一首なども行われる茶室・和室などがある。各教室は冷暖房完備で校内はすべて無線LANになっている。探究学習に適した図書館 ”Learning Hub”(略してL-Hub/エルハブ)は別棟となっている。また校内には様々な絵画・彫刻が飾られ、情操教育に役立っている。
6年後を見据え、学校の勉強だけで希望大学へ進学できるように組まれているカリキュラム。高1までは全教科を幅広く学習。教科によって学習速度を早めた先取り授業を行い、中3で高校課程に入る数学、英語は2クラス3分割の習熟度別授業を行う。また、中3では、調べ学習の集大成として卒業研究をまとめる。授業では各教科の先生によるオリジナルのテキストを使用。あえて特進コースを作らず、高校は文系・理系の2コース制で、国公立大学・難関大学にも対応。さらに、選択制による授業に加え、放課後や夏期・冬期の講習、朝に行う週1回の英語、国語の小テスト、放課後の英会話講座、予習・復習のサポートなどバックアップ体制も充実。
自主性が重んじられ、校則は常識的な範囲。生徒会活動やクラブ活動が活発。中1のクラブ活動参加率は100%以上。また、全ての教員がクラブ顧問を務めている。ダンス部は全国大会などで活躍。フットサル部もある。
中1では学びに向き合う姿勢を育み、中学では保護者や社会人OGによる講演、中2~高校では大学の各学部の教授の講義を体験する「模擬授業ウィーク」なども行う。他にも、文化祭、スキー教室、また山崎記念講堂で狂言、京劇、音楽などの鑑賞会、合唱大会などがある。体育祭での高3の創作ダンス「扇の舞」は圧巻。教師や生徒同士の協力のなかで、交流を深め、体を鍛えることに役立っている。高1の希望者には、夏休みにアメリカとオーストラリアでのホームスティがあるほかに、ニュージーランド・オーストラリアへの短期留学・長期留学、台湾への教育旅行、ヴェトナムへのグローカルリーダー研修などがある。中学の制服はセーラー服、高校の制服はブレザー。2021年度より中高共にスラックスも導入。