シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

森村学園中等部

2019年12月掲載

森村学園中等部の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.自分の興味関心を追求する、充実した中高時代を送ろう。

インタビュー3/3

文理の比率は半々

上野先生 自然現象を楽しむこと、興味を持つこと、考えること。そういう生活の基本が、理科の目指すところです。

谷川先生 理科に興味を持って楽しんでほしい、というのが一番の狙いです。実験をやっていて、「これキレイ」と言ってくれるとすごく嬉しいんです(笑)。

上野先生 私が「この色、惚れるよ」と言って実験を行わせた時に、その結果を見た生徒から「惚れた」という言葉が出てくると、それが嬉しいです。

興味を引き出す授業により、進路にも変化は見られますか。

谷川先生 進路は景気によって変わります。

上野先生 文系・理系の比率は、基本的に半々くらいです。

谷川先生 ブレている子が景気に左右して決める子です。

上野先生 理科に一途な子はずっと変わりません。大学に入ってもそのまま走り続けています。大学の教官になるなど、卒業生の中で理系で活躍している子は、小学生時代から理科に一途な子が多いです。

谷川先生 なぜこんなことに興味をもったのかな、と思う子もいますよ。

上野先生(左)、谷川先生(右)

上野先生(左)、谷川先生(右)

理系の道を歩む卒業生は大学院に進む傾向

上野先生 理系に進んだ卒業生の、大学院に進学する割合が増えています。修士だけでなく博士課程まで修了し、そのまま大学に残って教員として勤める卒業生も増えています。すべての卒業生の進路を知っているわけではありませんが、たとえば東京大学に生産技術研究所の教授や特任講師をしている卒業生もいます。上智大学理工学部に准教授、東北大学にも助教がいます。

高等部時代に取り組んだ研究を発表して、いろいろな賞を受賞しているケースもあります。朝日新聞社が企画・実施しているJSEC(高校生科学技術チャレンジ/研究作品によるコンテスト)でファイナリストに入って全国から集まった人と発表に臨んだ生徒もいます。部活動で「ものの落下」の研究をしていた生徒は、東北大学の大学院に進み、念願の先生のもとで研究生として活動しています。在学中はいろいろな形のものをポッチャンポッチャンと落として、落とした時の水の形を高解像度の写真で撮り、いったい何が起こっているのかを継続的に調べていました。その研究内容は中等部在学中、高等部在学中ともに、神奈川県で賞をいただきました。その子にはその研究を防災に生かしたいという思いがあって、山梨大学の工学部土木環境工学科に進みましたが、東北大学のこの先生の下で働きたいという思いをかなえるために勉強して、東北大学大学院に進みました。

彼は、大学に進学した後に、大学生のサイエンスインカレに応募してグランプリを受賞しました。そうした縁もあって、文科省の中で情宣活動のキャンペーンなどの仕事に取り組んでいます。

やはり部活動は科学部ですか。

上野先生 2人とも科学部でした。

森村学園 トロフィー

森村学園 トロフィー

みんなの首里城デジタル復元プロジェクト

上野先生 東京大学の特任講師をしている卒業生は、もともとアンコールワットでタリバンに破壊されたもののデジタル復元をしていたのですが、その経験と技術を生かして、先般、火災で消失した沖縄の首里城をデジタル技術で再建を支援する活動を始めました。人々に「あなたが持っている写真や画像データを共有させてください」と呼びかけています。是非協力してあげて下さい。

「みんなの首里城デジタル復元プロジェクト」
https://www.our-shurijo.org

中高時代を自分らしく充実させよう

東京大学の生産科学研究所で教授をしている卒業生は、量子コンピューターの基本となるような、電子をきちんと制御して、そこからたくさんの情報を得る研究を行っています。おそらくこれも国内ではトップランナーではないかと思います。彼は中高時代、1つのことにこだわっている子でした。我々教員のちょっと上をいく知識を携えて話すことが好きでした。賢い上に積極性もあり、生徒会活動にも参加していました。高等部で部活動をやめて勉強に専念する、というタイプではありません。森村学園は中高時代を大切にしながらも、自分の興味のあることを追求するような子ども達を伸ばせる学校です。

森村学園 自習室

森村学園 自習室

インタビュー3/3

森村学園中等部
森村学園中等部大実業家であり、立志伝中の人物でもある森村市左衛門は、日本を担う人材育成の必要性を痛感。「独立自営」を建学の精神として掲げ、「社会の役に立つ人をつくる学校に」と1910(明治43)年、港区高輪に自宅の庭を開放し幼稚園と小学校を創立。幾多の星霜を経て78(昭和53)年現在地へ。
総面積8万m2の広大な緑地に、幼稚園・初・中・高等部がグランドを囲むように建つ。2010年に現在の校舎が完成。パソコン教室やホールなど、最先端の設備で一貫教育をより充実させる。図書館の蔵書は5万5千冊、自習室のパソコンでは予備校のサテライト授業が受講できる。
校訓は創立者自身が実業家人生のなかで学んだ「正直・親切・勤勉」。人間を磨き、学力や体力、情操を養いながら、真の国際人を目指して、幼稚園から高等部まで、それぞれの年齢に応じた教育を展開している。明るく品の良い家族的な雰囲気が情操教育の基盤。家庭とも連携を保ちながら、一人ひとりを把握した教師が、進路・進学指導にあたっている。
2019年度から導入した「未来志向型教育」は、「言語技術」を基礎に、「外国語(英語)教育」「課題解決(PBL)型授業」「ICT環境」の3要素から成り立つ独自の教育システム。予測不可能な未来社会をたくましく生き抜くために、教養ある自己表現を獲得し、自国はもとより国際社会に貢献する人財の育成を目指す。
「言語技術(Language Arts)」とは、世界標準の母語教育で、その特徴は、言語を用いる様々な手法を生徒の参加と作文によって指導する点である。それは、対話・物語・説明・論証に分類され、「問答ゲーム」を通して型に則って発信する方法を指導した後、大量の質問を浴びさせて対象を分析的に捉え、自ら発問する能力を獲得させている。これを基盤に全ての授業がアクティブラーニング(思考し発信する形式)で行われる。森村学園の言語技術は、「つくば言語技術教育研究所」と提携している。
「外国語(英語)教育」の特徴は、6年間の英語学習を2年ずつ段階的にアプローチを発展させながら「聞く・話す・読む・書く」の4技能の習得を目指すことにある。中1・中2では、英語を使えるようになることを目指す「コミュニカティブアプローチ」、中3・高1からは、より論理的に英語で考え、意見を述べる力を育む「ロジカルアプローチ」、高2・高3では、批判的・分析的に物事を捉え、自らの考えを発信でき、創造的で知的な英語の獲得を目指す「クリティカル・アナリティカルアプローチ」が指導の柱になる。2020年度の中1から「ルート別授業」が始まった。
入学前の英語学習歴に配慮し、海外製テキストを用いて「オールイイングリッシュ」で学ぶルートと、ニュートレジャーを用いて基礎から学習するルートを選択できる。さらに英語に磨きをかけたい生徒は、放課後に「イマージョンクラス」に参加でき、また海外大学を目指す高等部生用の講習もある。
ICTの利用環境整備を着実に進められている。2in1PCを授業に取り入れ、Microsoft(Teams)をハブとした連絡事項を一元化し、授業動画の閲覧や課題等の配布回収、データ共有、PBL型授業、プレゼンテーション、オンライン面談等において活用している。