シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

森村学園中等部

2019年12月掲載

森村学園中等部の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.進んで体験し、新鮮な疑問や感動を持ち続けてほしい。

インタビュー1/3

日ごろから星を見ていますか、と問いかけたかった

作問の意図からお話いただけますか。

上野先生 単純に知識で答えるだけでなく、客観的な理由をできるだけ見つけながら、それを積み重ねて答える力を見たいと思って出題しました。小学校の教科書に「人の体で手を伸ばした形が…」という記述があります。その記述を利用して、この場合ならどう当てはめるか、ということを考えて答えを導き出してもらいたいと考えて出題しました。

谷川先生 何気ない自然現象に目を向けている子ども達に入学してほしいと思っています。「日ごろから星を見ていますか」という問いかけでもあります。

大人にも難しい問題だと思いました。

谷川先生 一緒に星を見ていて「あの星」「あの星」と言ってもなかなか伝わらないということはよくあると思うんですね。どうすれば相手にその星であることを伝えられるか、それを教科書の記述から説明してほしいと思いました。

理科/上野 英一先生

理科/上野 英一先生

『握りこぶし1個分が10度』を意外と知っていた

谷川先生 採点の結果、『握りこぶし』という言葉は結構出てきました。『握りこぶし1個分が10度』という記述も出てきていたので、子ども達にとってそれは知識としてあるんだなと感じました。
ただ、問題文の『高さが40度』というところに目が行き過ぎて、『40度上を見る』という漠然とした答えも結構ありました。それは不正解としました。

上野先生 おそらく星の観察会に行くと、全員で共有しなければならないので、「腕をまっすぐ伸ばしてごらん」「そこからこぶしを1つ、2つ、3つ、4つ重ねて、はい、その方向を見て」という説明の仕方をしているのではないかと思います。それが40度になるわけです。その時の記憶が答えにつながったのではないかと思いました。そういう、本当に新鮮な疑問や感動を持ち続けてほしいので、受験生が星を見ている気分になりながら問題を解いてくれていたら嬉しいです。

受験生の出来はいかがでしたか。

谷川先生 『握りこぶし』をズバリ書いた子が2~3割くらい。それ以外でも正解にしていたり、部分点もありますので合格者の平均が50%。不合格者の平均が30%。合わせると40%くらいの得点率でした。予想よりは『握りこぶし』を知っているんだな、とうのが率直な感想です。空欄はほぼありませんでした。困りながらも40度上げるということを何とかして書こうとはしていました。

森村学園 テニスコート

森村学園 テニスコート

他の星を使って答える子は少なかった

他の星を使って答える子は少なかったですか。また、出題する際にそういう答えを引き出したいという意図はありましたか。

谷川先生 他の星を使って答える子は少なかったです。出題意図は『握りこぶし』でしたが、他の星を使って説明した答えも丸にしています。

他に想定していた解答はありますか。

谷川先生 望遠鏡で見るとか、何も考えられずに困る子が多いのではと思いました。『握りこぶし』もそれほど出てこないのでは?と思っていたので意外でした。意図通り、観察会などに足を運んでいた子が多かったなと思っています。

上野先生 想定していたのは、正解よりもむしろ不正解です。どういう解答が不正解になるのかを想定していたので、採点ではまず不正解に当てはまる解答を除外しました。その上で、こういう考え方もあるんだ、こういう観点があるのか、ということがわかると、採点者みんなで共有しながら採点しました。

問題文にある条件をどう活用して考えるかがポイント

斬新な解答はありましたか。

上野先生 それはなかったです。

谷川先生 指で40度を作って、それを活用して見るという答えはありました。

上野先生 非常に多かった不正解は「エ」から40度見上げる、という解答でした。どういう方法で40度を伝えるかというところが書けていない解答が多く見られました。

最後の「なお、・・・約40度あります」という一文はなくても問題として成立すると思うのですが、加えたのは『握りこぶし』を意識させたいからですよね。

谷川先生 そうですね。握りこぶし1個分が10度なので、あえて10の倍数に設定しました。

上野先生 もう1つは、ここで40度と指定しておかないと、受験生は基準がわからなくなると思いました。40度と書くことで、彼らはこの40度をどう説明するかを考えればいいわけです。具体的な角度を書かなければ、知識がないと説明できなくなります。知識偏重ではなく、ここに書かれている条件をどう活用して書けるかが大事なポイントになるので、これは非常に大切な一文(条件)ということになります。

森村学園 創立者 森村市左衛門像

森村学園 創立者 森村市左衛門像

大人には難しい問題?

上野先生 先ほど「大人にも難しい問題」とおっしゃっていましたが、本当にこの問題で解けるのだろうかという議論が当初ありました。子ども達を集めた星の観察会に出ている教員もいますので、「そういうことを経験している子ども達に答えを出してほしい」という意見も出てきて出題に至りました。大人はまさに『シカクい頭』ですよね。完全に先入観で見てしまいますよね。

解答例の1番目を考えてしまいます。

谷川先生 最初は星の絵も一等星、二等星、三等星の区別をしませんでした。ただ点々をひたすら書いて試したのですが難し過ぎて…。

上野先生 我々の中でも正解を出せませんでした。

谷川先生 ですから一等星、二等星、三等星、それぞれの明るさを大きさにして表しました。

上野先生 本当に絵は5,6枚書き換えましたね。最後にいきついたのがこの形です。

星を全部暗記して、地図のように説明する、ということも出来たと思いますが…。

上野先生 それは、もっとも森村の出題方針と対極にある方法です。普段、星を見に行く会ではライトを使って「これがこれで、これがこうだよ」と説明することが多いですが、『それでもうまく伝えられない』という設定の中で、自分たちの記憶を呼び起こしてくれたのではないかと思います。

森村学園中等部 図書館

森村学園中等部 図書館

問題のための問題は作りたくない

森村の記述問題は、序章と結果の途中をターゲットにしている気がします。それとこの問題との関連性はありますか。

谷川先生 そうですね。本校の入試問題は結果に至るまでの過程を重視していますね。

上野先生 逆に結果の部分が知識になって、その途中が自分で考えるということになります。考えることを重視したいということで自然と多くなっています。

実験もよく出題していますよね。

上野先生 中等部に入学してから、非常に多くの実験を経験させています。ほとんどの実験を実際に行います。中庭みたいなところをドロドロにしてみたり、何かを飛ばしてびっくりさせてみたり。そういう教育方針を取っていますから、その実験をどう見るかという姿勢を問いたいんですよね。

たしかに実験に対して、あなたはどういうふうに取り組みますか、というメッセージが、問題から伝わる気がします。

上野先生 私たちは、問題のための問題は作りたくないんです。その子の持っている体験や、考える力を引き出してあげたい、という話をよくしています。

教育方針に基づいた入試問題を作る

その方法で確かめられないのはなぜなのか、というような問題も出していますよね。

上野先生 そこには必ず何か要因があるんです。それを聞いてみたいのですが、入試問題を作る上で難しいのは、そこにスポットライトを当ててしまうと、いわゆる受験勉強をしてきた子が点を取れなくなる可能性があります。ですから勉強してきた子がきちんと点数を取れて、尚かつその中でよく考えられる子が点数を取れるような問題を出題できればいいと思っています。

教科書と違う部分を聞くなど、少し外れた問題については非常に聞き方が難しいですね。勉強をそれほどしていない子が直感や第一印象で答えたものが正解になることが時々あるので、そういう可能性をできるだけなくすような問題作りを心がけています。

最初は小学生が理科で何を理解しているのか手探りの状態でしたが、回を重ねるごとにだんだんと聞き方がこ慣れて来たのかもしれません。こういうところも聞けるね、というのがだんだんわかってきますので、それに伴い入試問題の質も上がってきているのではないかと思っています。

いつ頃から実験を重視する方針立てになりましたか。

上野先生 最初のころから、実験はきちんと打ち出していきたいという気持ちでやってきました。教育方針が入試問題に表れますから、実験を中心にやっている以上はそうすべきだろうと考えています。

森村学園中等部 生物室

森村学園中等部 生物室

インタビュー1/3

森村学園中等部
森村学園中等部大実業家であり、立志伝中の人物でもある森村市左衛門は、日本を担う人材育成の必要性を痛感。「独立自営」を建学の精神として掲げ、「社会の役に立つ人をつくる学校に」と1910(明治43)年、港区高輪に自宅の庭を開放し幼稚園と小学校を創立。幾多の星霜を経て78(昭和53)年現在地へ。
総面積8万m2の広大な緑地に、幼稚園・初・中・高等部がグランドを囲むように建つ。2010年に現在の校舎が完成。パソコン教室やホールなど、最先端の設備で一貫教育をより充実させる。図書館の蔵書は5万5千冊、自習室のパソコンでは予備校のサテライト授業が受講できる。
校訓は創立者自身が実業家人生のなかで学んだ「正直・親切・勤勉」。人間を磨き、学力や体力、情操を養いながら、真の国際人を目指して、幼稚園から高等部まで、それぞれの年齢に応じた教育を展開している。明るく品の良い家族的な雰囲気が情操教育の基盤。家庭とも連携を保ちながら、一人ひとりを把握した教師が、進路・進学指導にあたっている。
自主性を重んじながら生徒会活動、クラブ活動に取り組む。運動部11、文化部10のクラブがある。学校行事は多彩で、林間学校、ニュージーランド修学旅行、オーストラリア希望制海外研修、旧イギリス領マルタ島でのグローバル研修、スキー教室、体育祭など。文化祭は準備に時間をかけ、内容の豊富さと独創性は毎年好評。保護者懇談会や個別面談、授業参観、PTA主催のバザーなど、学校・生徒・家庭が親密なのが森村らしさ。中等部の合唱コンクールも「みなとみらい大ホール」で行われ、盛り上がる。カフェテリアではラーメン、カレーライス、日替わりランチなど、メニューが豊富。