シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

不二聖心女子学院中学校

2019年12月掲載

不二聖心女子学院中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.「誰かのために何かをする」という不二聖心女子学院が最も大切とする主題が盛り込まれた問題

インタビュー1/3

主題と作文が密接に関わった出題意図

それでは、まず出題の意図を教えてください。

蒔苗先生 不二聖心の場合には必ず試験問題の中に作文を書かせることをしてきています。これはパンフレットにも書いてあるのですが、不二聖心の国語教育として「表現する力」「深く読み込む力」「基礎的な知識を身に付ける力」とバランスのとれた形で国語力を鍛えていこう、と考えていることにつながります。その中の一つとして、表現力を問う問題としての作文の問題が今年度に関しては(問)の設問としてあったということです。

これは単に作文の力を問いたいというだけではなくて、毎年最後に来る作文はこの文章の主題と関わらせるような形として出題を考えているわけです。そうなるとこの問題の出題意図というのは、この出題文・問題文を選定した意図と密接に結びついているということがありますので、そこまで広げて考えていく必要があるのかなと思っています。

この文章がなぜ選ばれたのかというところから考えていくと、結果的には一人の少年がおじいさんのために、おじいさんが残していった本が活かされるような形で、なんとか自分がそのために貢献していきたいという、おじいさんのために自分が行動したい、という内容が主題となっています。

それは不二聖心で最も大切にしていることで、「自分自身が誰かのために何かをするということを大切に考えていけるような生徒を育てていきたい」ということなんです。

小説の形でまとめられているような文章を読ませ、そのことを通してまずは文章を深く読み込み、主題をきちんととらえ、心を打たれて感動する力があって、その体験を表現力につなげていく。それがきっかけとなり、自分の中にある体験が呼び起こされ表現に結びついてくる、ということになっていくと思います。

まとめますと、不二聖心女子が大切にしていることを小説にした文章を読んで感動し、それを豊かな表現に結びつけていくことができる、そういう力を(問)を通じて見たかったというのがありますね。

教頭/蒔苗 博道先生

教頭/蒔苗 博道先生

試験を通じて感動を与える文章を持ち帰ってもらいたい

平山先生 私たちはいつも問題として解くだけではなくて、試験を受けた子ども達が国語の文章で心を動かされる、何かを持ち帰ってくれるような文章を選びたいと思っています。今年は特に家族の情愛を感じる文章に我々も出会ったということでしょうか。

生徒たちも受験生たちも、我々の出題意図を理解している子が多いようでして、以前には本文を何も読まないで書き始めるという子もいましたが、最近はほとんどそういう子はいなくなりました。説明会でもそこまで強くは言っていないものの、よく取り組んでくれているかなと思います。

例年より文章とのつながりが深めだと感じます。前年度より想起しやすい文章であると感じました。

蒔苗先生 正直、主題と関連づけるといっても年によってはなかなか作文を出しにくい時もあります。しかし、今回の文章は伝えたいこととこちらが問いたいことがきちんと重なってくれたものでした。

平山先生 子ども達はまだ人生経験も少ないわけですから、小学生が自分たちの経験から引き出せるテーマにしたいというのは考えています。身近なところから題材があるかどうかや、書きやすいテーマとか、素材が引っ張ってきやすいものにしてあげたいなと思っています。

これは教員の皆さんで持ち寄られて作成するのでしょうか?

蒔苗先生 そうですね、みんなで吟味しながら多くの先生方の意見を経て「じゃあこれにしよう」と作成していますね。

不二聖心女子学院中学校 校舎

不二聖心女子学院中学校 校舎

「誰かのために」というテーマを主眼に

今回の問題の回答に関して、例年と比べて書き方に特徴はあったりしましたか?

平山先生 小学生なので描かれる世界は非常に狭いというところはあります。つまり「学校生活」か「家庭生活」のどちらかでして、例年でも多いんですね。今年もその傾向は確かにありましたが、「誰かのために」ということになるので、小学校の学校生活の中でもイベントで何かをしました、ではなく、日常生活の中でケガした子を助けてあげるといった、小さな出来事に目を向けていたり、家族に対しても暖かいまなざしというのを感じたり、といったものですね。

今年特に特徴的だったのは、直接誰か決まっているわけではないけれども、学校がきれいになるようにとか、見えない誰かのために、というような公共性のある意識を持った作文があったことです。誰かが認めてくれているわけではないけれども、私の中にすがすがしい気持ちが残ったとか、自分がしたことは小さいことだけど、大きくなったらもっと貢献をしたいということを書いている子もいました。

経験の深さだけで採点を行うわけではないが、内容が良いものは一定の評価も

誰かのためという対象者で差をつけるということはなかったですか?こういう内容で差がついた、というところって何かありますか?

平山先生 内容については心の動かされ方には大小ありました。しかし、国語の採点となると、行為や経験の深さなどだけで採点してしまうと不平等が起きてしまうので、国語のテストとして文章表現といったところで評価する部分は強かったです。でも、漢字の間違いやもう少し書けばよかったのに、というのは当然ありましたね。

文字数や漢字の間違いは限定対象としてマイナスしていくということなのですか?

平山先生 そこまで厳しくはしていませんけれども、あまり粗末なところには点数を与えないわけで、細かいところよりもどういう風に表現していくのが良いかや切り口など文章の発展のさせ方は見ていました。

蒔苗先生 経験の質を問うてしまうと不平等という話がありましたが、それでも採点者は一読して心が打たれる文章には内容面でも評価をしていく、というのはもちろんあるわけです。

平山先生 いい経験をしているこの文章はよかったりするので、書きなれているのを感じますね。

そうするといいものはプラス評価のイメージですかね?

平山先生 そうですね。

不二聖心女子学院中学校 聖堂

不二聖心女子学院中学校 聖堂

文章構成力は年々上がってきている

300字ぐらいだとまとめるのも大変ですよね。日能研の生徒たちを見ていると無回答をする子はすごく減ってきているのですが、いっぱい書こうとおもって逆に何を書いているかわからない子や散乱している子が目につくので、300字ぐらいだとどうなのかな?と思いまして。印象としてはわりとまとめている感じでしょうか?

平山先生 そうですね。余白にメモが書いてあったりして構成を考えて書いているなというものもありますし、最後のまとめのところをどう考えているのか、苦心して書き直そうとして時間切れになっていたりするものだったりもあります。まとめ方はどの子も苦労するようですね。

子どもの書く構成の力って年々どうなっているように感じますか?

平山先生 学校説明会でも作文の書き方として、冒頭は工夫するといいですよ、ということをお伝えしています。何もチャレンジしないで白紙のままということはほとんどなくなりました。また冒頭についても工夫するように感じます。

やはり学校の考え方や説明会等でお話しされる内容をきちんと理解して受験してきているということですよね。
作文って聞いた瞬間に保護者としては「どうしよう?」と思って問い合わせしてくると思うのですが、考え方をきちんと伝えていると、決まりきったテンプレートを使ってはじめないでやる子が多くなるのではないかと思います。
それは働きかけで子どもの反応が変わってきそうな感じですね。

すごく印象に残った回答はありますか?

平山先生 一つというわけではありませんが、おじいちゃんのために杖を作り、そのおじいちゃんが亡くなった際その子が作った杖を置いてあげたというものや、掃除をしてきれいになった部分を誰かが見てくれて気持ち良くなってくれたらうれしい、みたいなものがありました。中にはいじめられている子に寄り添っていった、というようないじめ問題のような難しいテーマを題材に書いているというものもありましたね。

入学後にも生徒の心に残っている文章を選定していきたい

入学後に子ども達がこの話題になったことはありますか?

蒔苗先生 実は今回そのあたりについて実際どうなのかというのは我々もはかり切れないので、たまたま私が中一の授業を教えている中で、本の紹介のプリントを作って配りました。これは問題文の作者である内海隆一郎の「島の少年」という本なんですが、彼の長編を紹介して、そのあとで問題文の一節をちょっと朗読して聴いてもらったのですが、ほんの数行読み上げただけで教室がざわついてきまして、ちゃんと心に残っているのを感じました。

限られた時間の中で緊張しながら読んだ文章であっても、しっかり受験生の心に届いていて記憶に残っているということが確認できましたことは大きな意味を持ちましたね。今回紹介した文章が入学試験の時の問題と作者が一緒だったということがわかると、その時の感動が呼び戻ってきて「じゃあこっちの作品も読んでみよう」ということでつながっていくんですね。

不二聖心女子学院中学校 廊下

不二聖心女子学院中学校 廊下

インタビュー1/3

不二聖心女子学院中学校
不二聖心女子学院中学校1920(大正9)年に岩下清周によって創立された温情舎小学校が前身。1945(昭和20)年、聖マグダレナ・ソフィア・バラが1801年に創立したカトリックの女子修道会「聖心会」に経営移管され、1953(昭和28)年に高校が開校。1957年に現校名へ改称。
学校を一つの家庭と見なし、キリスト教的価値観に基づいた心の育成を目指す。日々の祈り、宗教の授業や、クリスマスなどの宗教行事を通して、生徒たちは祈りの心、温かな人間観を身につけ、見えないものへの価値に目を開いていく。一方で、世間ではおとなしい生徒が多いと思われがちだが、掃除をするときロッカーを動かしたり、課外授業ではテントを張ったりと、たくましいところも見受けられる。また、新入生1人に高校3年生の生徒がついて学校生活を手助けする「エンジェル制度」は、家庭的な同校ならではの制度。
富士山の裾野に位置し、木々が茂る森があるなど自然に恵まれた学習環境にある。聖堂や校舎はフランス風で、各々に聖人の名が付けられ、広い敷地にゆったりと配置されている。マリア館には図書館や美術教室などがある。生徒用コンピュータは、図書館でも利用できる。校内LAN、体育館の完成に続き、2002年に新しい寄宿舎寝室棟が完成した。
英語の徹底重視が特色。中学では毎日英語の授業があり、習熟度別のクラス編成を取り入れている。英語が得意でない生徒には補習を積極的に行い、特に中学では基礎力の定着を徹底している。またスピーチコンテストなどを通して「使える英語」を身につけることを目指す。
自主的な研究活動も重視され、中学1年で学年研究、中学2年でグループ研究、中学3年では個人で卒業研究をまとめる。中学1年生から英語・数学で習熟度別授業を実施。補習は英語・数学を中心に、その他の教科でも放課後や長期休暇を利用して中学から適宜行われている。併設の聖心女子大へは例年約60%が進学。現役合格率は90%以上で、早慶上智大など全国の難関大学に幅広く合格している。
国際理解教育も重視し、イギリス、アメリカ、韓国、台湾、フィリピン、タイ、カンボジア、の体験学習も活発。世界に広がる聖心のネットワークを生かして、アメリカ、カナダ、スコットランド、ニュージーランドへの1年間の姉妹校留学制度もスタート。2018年からは高校2年生全員が聖心の創立の地フランスを訪れる「ルーツへの旅」が始まる。伝統的な奉仕活動、国際理解教育、環境学習が評価され2012年にユネスコ・スクールに認定された。
クリスマスキャロル、奉仕の日、祈りの会などの宗教的な行事を通して、誠実に生きる喜びを体験する。老人ホームの慰問や駅の清掃などを行う奉仕活動も活発。寄宿舎では200名以上の生徒が、中1~高2までの縦割りの4グループと高3の1グループの計5グループで生活している。互助の精神のもと家庭的な雰囲気があり、また規則正しい共同生活を通して、自分で考え自分の責任で行動する自律心を養うことができる。
週5日制なので、週末には自宅に帰省。体育大会、秋のつどい、クロスカントリー大会、弁論大会、音楽鑑賞会など、学校行事も盛ん。