シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

不二聖心女子学院中学校

2019年12月掲載

不二聖心女子学院中学校【国語】

2019年 不二聖心女子学院中学校入試問題より

(問)あなたが誰(だれ)かのために何かをした経験について、三百字以内で作文を書きなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この不二聖心女子学院中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

【解答例1】
わたしは、大きな荷物を持って、長い横断歩道をわたろうとして困っていたおばあさんを助けたことがある。大きな荷物を持ってあげることで、おばあさんもその分早くわたれるし、もし途中で歩行者信号が赤になってしまっても、わたしが周りの自動車に人がわたっていることをうったえればよいと思ったからだ。おばあさんには何度もお礼を言われ、とてもうれしかった。行動に移す前は、恥ずかしい気持ちや、うまくできなかったらどうしようという迷いもあった。しかし、おばあさんの喜ぶ顔を見て、よいことをするときには、迷うことなく積極的に行動して、世の中が少しでもよくなることに自分の力を使うべきだと実感した。

【解答例2】
わたしの兄が、料理に挑戦することになった。学校の家庭科ではしたことがあっても、家での料理は初めてだという。そこでわたしは兄の料理を手伝うことにした。わたしは学校での家庭科のほかに、休みの日などは料理をすることもあり慣れている。そこで手伝うことにしたのだ。手伝うと言っても、何から何までやってしまうのではなく、兄が迷ったり困ったりしたところをアドバイスするだけにして、なるべく兄の力で料理が完成するようにした。普段は兄に助けられてばかりだったが、料理が完成し、わたしに何度も感謝の言葉を口にする兄を見て、普段の恩返しが少しでもできたのではないかと思い、うれしくなった。

解説

「誰かのために何かをした経験」を記述していきます。実はこの問いは、ある物語を読んだ後に出てくる最終問題でした。その物語はポスターに掲載されていませんでしたが、この問いに取り組むにあたっては、まず、文章中から、「誰かのために何かをした経験」にあたるものに着目します。お祖父さんのために、孫にあたる中学生の男の子が、書店にお祖父さんの本を置こうとしたことが、ここでは該当します。

入試に出された物語を読んでいなくても、誰かのために何かをしたという経験はあるでしょう。記述する時は、「誰か」にあたる人を決め、その人のためにどのような行動をとったのか、そしてその行動がその「誰か」にとってなぜよいことだと言えるのか、がわかるように記述していきます。

日能研がこの問題を選んだ理由

試験時間の中で、子どもたちは「誰かのために何かをした経験」を記述していきます。

このとき、子ども自身の経験をやみくもに書けばよいわけではありません。「何かを(する)」ということが、「誰」のためなのか、そしてどういう点でその人のためになっているのかを考える必要があります。(問)には、特段「文章を参考に」という文言はありませんが、文章読解問題の最終問題であることを考えると、物語の中で展開している内容から、「誰かのために何かをした経験」を見つけだすことが必要です。言わば、物語の内容と自分が書こうとしている内容との共通点や相違点に目を向けて、問いで求められることを構築していくことが必要となります。

このように、問いの言葉から、考えられることを類推し、また比較して考えていくことで、子どもたちは客観的な視点を持つことの必要性を理解していくとも言えるでしょう。

今回、子どもたちが考えを構築することがらは「他者のためにどのように行動するか」という点です。子ども自身が他者のために考え行動すること自体は、身の回りの小さなできごとの一つに過ぎないと考えてしまうかもしれません。しかし、今回の物語では、孫の起こした小さな行動が、周囲の人たちを動かし、よりよい解決策を導くためのきっかけになっているとも言えます。自分の行動が自分の中で完結するだけではなく、他者にも影響を及ぼすことができたなら、それは、不二聖心女子学院中学校の「一人ひとりが神の愛を受けたかけがえのない存在であることを知り、世界の一員としての連帯感と使命感を持って、よりよい社会を築くことに貢献する賢明な女性の育成」をするという考えにもつながると言えるのではないかと考えます。結果として、不二聖心女子学院中学校の大切にしている考えが強く反映されている問題であると考えました。

以上の点から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。