シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

大妻中学校

2019年11月掲載

大妻中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.じっくり考えられるように問題数を減らす

インタビュー2/3

出題形式は求められる学力に応じて柔軟に対応

2019年入試は例年に比べ問題数が少なくなりましたね。解答欄の数が昨年までは50程度だったのが今年は40程度でした。

照山先生 知識の有無をみる一問一答式に偏らず、知識を活用して思考力をはかるような応用問題を必ず出します。そうした問題は解答の労力もかかります。30分という短い時間でも問題にしっかり向き合って考えてもらえるように、思い切って全体の問題数を減らしました。その結果、時間がなくて手がつけられなかったような答案は、今年は少なくなったように思います。

従来の出題傾向が大きく変わることはないと思いますが、世の中が要請する学力の変化に沿うような出題形式の変更はあるかもしれません。いずれにしても、頑張って準備してきた受験生が力を発揮できるように、最後の問題まで解ききれるようにしたいと思っています。

大妻中学校 社会科講義室内

大妻中学校 社会科講義室内

文章記述問題は各分野1問に

照山先生 問題数を変えた今年は、第1回・第2回入試の文章記述問題は各分野で1問までとしました。文章記述はそれまで歴史分野で多い傾向でしたが、その点ではバランスがよくなったと思います。

社会科の文章記述力としては、小学生にどの程度求めていらっしゃいますか。

照山先生 時間の制約がある中で、小学生がきちんとした文章を書くのはなかなか難しいと思います。設問の要求に正確に応えて、得点のポイントを押さえていれば、拙い文章であってもこの段階ではよしとしています。伝わる文章は入学してから6年かけて鍛えていけばいいと思っています。

設問の条件を無視して自分の知っていることだけを書いてしまう子どもがいます。慌てないで、設問をていねいに読むようにしたいですね。

大妻中学校 図書室

大妻中学校 図書室

用語は漢字指定。ケアレスミスなら得点可

照山先生 用語は特別な指示がないかぎり漢字で答えてもらいます。明らかな間違いは点数をあげられませんが、線が1本足りないなどの惜しい間違いは部分点をあげています。

小学校で習った漢字は厳しくしたいと思いますが、習っていない漢字は間違いの程度によりますね。

照山先生 例えば新潟県の「潟」がそうです。問題数が減ったことで用語記述の配点が高くなり、得点しやすくなったと思います。

単なる勘違いとは別次元の間違い目立つ

受験生の答案を見て何か気になることはありますか。

照山先生 どんな問題でも、粘り強く食らいつく姿勢はよくわかります。
一方で、地名が驚くほど書けていません。第1回入試の、富山県に接している県のうち県庁所在地が政令指定都市である県(新潟県)を答える問題は、漢字の間違いは予想していましたが、見当違いの答えが少なからずありました。「富山県に接している県」という条件なのに、秋田県や宮城県といった単なる勘違いとは別次元の誤答が目に付きました。得点してほしい問題でしたが、正答率は50%を下回りました。地名を答える問題の出来具合は芳しくありません。

4月のオープンスクールでは「地名探し」をしました。グループを組み、中学の地図帳を使って過去問の地名を探すゲームを、参加者は夢中になって取り組んでくれました。探せないわけでもなさそうなのに、試験の結果につながらないのが気になります。

歴史でも全くの年代違いが見られます。平安時代と江戸時代の政策を取り違えるなど、基本レベルでの間違いが増えていると感じます。
名前は知っているけれど関連づけて覚えていないのでしょうね。歴史は因果関係を押さえて大きな流れでとらえてほしいですね。入試説明会では、丸暗記に頼らず、事件の原因、経緯、結果、後の世への影響などと関連づけて覚えましょうと繰り返し伝えています。

大妻中学校 掲示物

大妻中学校 掲示物

インタビュー2/3

大妻中学校
大妻中学校1908年に大妻コタカが創立した家塾が前身。校訓『恥を知れ』は、自分自身を戒める言葉。自律と自立を大事に、「リーダーシップを持って活躍できる品性を兼ね備えた教養ある女性」の育成に取り組む。創立からの理念と共に、時代の要請に応える教育を大切にしている。
6年間を中学1年、2年の「基礎力養成期」、中学3年、高校1年の「充実期」、高校2年、3年の「発展期」の3つに分け、学習内容を効率的に編成して、生徒の幅広い進路に対応する。
「基礎力養成期」では、安心できる環境の中で、自己肯定感を持ち、目標に向かって頑張ることのできる集団へと育てることを目指す。「充実期」では、「働くこと」「学ぶこと」の意味を考え、高校進学に向けて意識を高めていく。自分らしい生き方とは何かなど、将来の職業や社会への貢献などについて考える。「発展期」では、自分の将来像をより明確化し、具体的な進路を探っていく。「問題解決能力」「自己表現力」「発信力」を強化して、具体的な進路の決定と目標達成へ向かっていく。内部進学率は2~3%で、卒業生の大半が他大学へ進学する進学校として定着している。
また、クラブ活動や行事も盛んに行われていて、書道、マンドリン、バトントワリングなど、全国大会で活躍する部もある。袴姿にはちまきの応援団も登場する体育祭、中学生による研究発表、各部による発表、舞台演技など、全校で盛り上がる文化祭、イギリス、アメリカ、オーストラリアへの海外研修や、情操教育の一環としての芸術鑑賞など多くの行事がある。
教員と生徒との距離が近く、職員室前のラウンジは吹き抜けになっており、話しやすい環境がある。また、担任と生徒との1対1の面接週間というのもある。