出題校にインタビュー!
大妻中学校
2019年11月掲載
大妻中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.資料の情報と知識をつなげて考える
インタビュー1/3
資料から富山市の電気代が高い理由を考える
照山先生 本校の社会科は、人名や地名などを覚える以上に、覚えた知識や資料の情報を使って「考える」ことを重視しています。授業でも考える場面を多く取り入れています。この問題では、その場で考えて答えを導き出す力が、小学6年生の段階でどれだけあるかをはかりました。
作問のきっかけは、総務省の家計調査を見て「おや?」と思ったことです。富山市をはじめ北陸の1世帯あたりの電気代は全国平均より高めです。富山は豊富な水資源を電力に積極利用しており、北陸電力の水力発電の比率は全国トップです。水力発電は発電コストが安く、基本料金は安くなる。そうすると、当然電気代も安く済むだろうと思っていたので、このデータは意外でした。
社会科/照山 友教先生
数字から現地の人の暮らしが想像できる
照山先生 調べるうちに興味が湧いてきて、入試問題にできないかと思いました。
文章記述で答えるのは難しいかなと思いましたが、提示した資料を手がかりに、勉強してきたことと結びつけて考えることで、本校の社会科が大事にしていること、授業で実践していることに通じる問題になりました。
資料の数字から富山の人の暮らしぶりが想像できますね。
照山先生 作問に当たり、統計資料や電力会社のウェブサイトだけでなく、現地の人の様子を知ろうと、自治体の情報や北陸在住の個人のブログも参考にしました。机上の学習を自分のものにできるように、日々の生活とうまくつなげるようにしたいと思います。
4つのポイントどれか書ければ得点できる
採点基準を教えていただけますか。
照山先生 設問に「資料1・2をもとに説明しなさい」とあります。資料1の灯油代の高さから、富山の冬の厳しい寒さが読み取れます。北陸の気候は知識として持っていると思いますし、「暖房費がかかる」ことは触れてほしい要素です。
資料2からは「住宅が広い」「家族の人数が多い」ことがわかります。つまり、暖房費だけでなく日々の暮らしの電気代もかかるのです。家が広いと掃除機をかける時間が長くなり、照明器具も多い。家族の人数が多ければドライヤーの使用やスマートフォンの充電などにより多くの電気を使います。
富山市は、「住宅が広い」「家族の人数が多い」ため、「より多くの電気が使われる」。その上、「暖房費がかかる」ため、電気代が高くなっていると考えられます。以上の4つの要素をすべて盛り込めば満点(4点)です。1つでも要素が書けていれば得点できます。受験生の意図を読み取ってできるだけ点をあげるように採点しました。
大妻中学校 正門
灯油の使い道がわからない?
出来具合はいかがでしたか。
照山先生 答案を見ると何かしら書こうとする意欲が伝わりました。無答や得点なしはさほどなかったと記憶しています。受験生の54%が2点以上得点できました。暖房費に触れた解答は予想より少なかったですね。満点はごくわずかでした。
長谷先生 灯油代の違いは一目瞭然です。でも、日常生活で石油ストーブを使っていなければ灯油の使い道がわからないでしょうから、データの意味するところが読み取れないでしょうね。
照山先生 解答で多かったのは、「家が広いため、多くの電気が使われる」というものでした。資料2から、住宅の広さ(全国平均の約1.3倍)は指摘できましたが、家族の人数の多さは「全国2.33人=2人」と「富山市2.66人=3人」のデータからあまり読み取れなかったようです。
「ガス代が安いから」のような根拠がわからない解答もありました。暖房費に言及せず、単に「雪が多いから」と富山について知っていることを書いた解答は、資料と知識を結びつけて考えられなかったといえます。この問題のような考える問題では身につけた知識を総動員して、一歩踏み込んで考えてほしいと思います。
入試広報部部長 長谷 良一先生
「蜃気楼」の正解率は1割程度
照山先生 北陸地方はどの県もそれぞれ特色があります。富山県は、過去に公民分野で五箇山の合掌造り集落を出題したことがあります。
富山県というと「蜃気楼」が有名です。第1回入試でも蜃気楼を答える問いを出していますね。
照山先生 正答率は11%でした。漢字が難しいのでひらがなでも正解にしましたが、「フェーン現象」のようにまるで違う解答がありました。
蜃気楼は教科書でも塾でも触れません。ニュースで見聞きするくらいでしょうか。
照山先生 このように、教科書の学習だけでなくもう少し幅広い知識を聞く問題も出題しています。世の中のニュースや家族との会話など、普段の生活から学んだことも大事にしてほしいと思います。
大妻中学校 社会科講義室内
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