シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

相洋中学校

2019年11月掲載

相洋中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.少人数制が生徒の積極性を育む

インタビュー3/3

高校は「学び合い」の場面を積極的に設ける

秋澤先生 私は高校生を教えています。授業では生徒が説明する場面を多く取り入れています。どこで間違いが発生しやすいか、さらに、数字や条件を変えると答えはどうなるか、生徒同士で話し合いをしています。
高3の演習は、私は問題をピックアップするくらいで、もっぱら見守っています。先生役(1~2人)の生徒にだけ模範解答を渡して、解き方を説明する生徒1人が板書し、その他6~7人の生徒が、記述の間違いや疑問点を指摘します。問題が解けなければ先生役が助け船を出します。模範解答とは別の解き方も3分の1くらいあります。
これは高1から「なぜ」を繰り返し投げかけることで、自分で考える習慣がついた成果だと思います。高2になると本質に迫るような質問が多くなっています。

田島先生 生徒同士の学び合いについて、高2の一貫クラスを教えている教員から、「問題演習の取り組み方は生徒に任せており、着実に深い学びへと向かっていると実感している」という報告を受けています。
クラスメイト歴5年ともなると、お互いの得意や苦手がおおよそわかっていて、相手の言動もある程度予測がつくので、わかるまでもう少し待とうとか、タイミングを測ることができているようです。

数学科 和太鼓部顧問/田島 和幸先生

数学科 和太鼓部顧問/田島 和幸先生

中学は進行役の教員を介して生徒同士が対話

田島先生 中学生は生徒に一任すると議論が行き詰まるので、私が進行役になり、事あるごとに「なぜ」「どうして」と問いかけます。私を介して生徒同士が話し合っているような参加型の授業を心がけています。
解答は生徒に板書してもらい、カッコの書き忘れなど間違いがあれば指摘します。ときどき、わざと間違いを見逃して他の生徒に見つけさせ、見つけた生徒に「なぜ」と聞いて、間違いの理由と正しい解答を答えてもらいます。生徒が下ばかり向いていないように、顔を上げて「なぜ」をみんなでシェアするようにしています。

中学では先生から「なぜ」と問われていたのが、高校になると自分で「なぜ」と問えるようになるのですね。

田島先生 ただし学年によって対応は違います。自分でどんどん解いていきたい生徒が多い学年は、個人の時間を多く取ります。解いたタイミングを見計らって、あいまいなところはないか確認するようにしています。

宿題に取り組んで計画性の大切さに気づく

宿題は結構出されるのですか。

田島先生 数学に限らず宿題は定期的に出しています。クラス担任は各教科担当と情報共有し、曜日ごとの宿題の周期をある程度把握しています。未提出なら知らせてくれるので、ホームルームで「どうなってるの?」と促します。宿題に取り組むことで、達成感を味わい、計画性の大切さにも気づいてもらいたいので、こちらも粘ります。

相洋中学校 教室からの景観(スカイホール)

相洋中学校 教室からの景観(スカイホール)

新しい単元は教科書を閉じて初見の問題を解く

中高6年間でどんな力を身につけさせたいと思っていますか。

秋澤先生 課題に直面したときに自分で考えられる力、できれば解決方法を見いだして解決できるところまでできる力を身につけさせたいと思っています。あきらめずに自分で考えることができる力は、日常生活でも役に立つはずです。
そのために、新しい単元の最初の授業では教科書は閉じて、問題を板書して、どのようにアプローチできるか考えてもらいます。今まで習ったことを総動員すれば、初見の問題でも解けることがあります。すると模範解答とは違ういろいろな方法が結構出てきます。

数学の学習を通して「粘り強さ」を獲得しよう

田島先生 中学では特に「粘り強さ」を意識しています。数学という教科ほど、精神的なしぶとさを鍛えるのに打ってつけではないでしょうか。ある意味“スポ根”です。
粘り強く考えるためには、手を動かすことを怠らないでほしいですね。思考が止まりかけても、手を動かすことで突破口が見つかるかもしれません。
正解にたどり着くには慎重さも求められます。うまく論理を組み立てても、最後に計算ミスをすれば正解できません。数学に取り組むことで、生きていく上で土台となる力を自分のものにできるのではないかと思います。

相洋中学校 学校入口

相洋中学校 学校入口

生徒一人ひとりの可能性を引き出す環境

渡邉校長 数学が苦手な生徒ほど、きちんとした解答を書きたがります。模範解答が出るまで待ったり、間違えたとわかると見直す前に消したりするため、どこで、なぜ間違えたのか振り返ることができません。これでは学習が先に進みません。
数学が得意な生徒は手を動かします。間違えてもいいからやろうとしますし、間違えてもまたチャレンジするので先に進みます。始めからできなくても、間違いを次に生かせばいい。それくらいおおらかな気持ちでやってみてほしいですね。
中高一貫クラスは少人数ですから、誰かがやってくれるのを待っていては物事が進みません。小学生のときは引っ込み思案だったけれど、入学後に中学の生徒会役員に立候補した生徒もいます。生徒は可能性のかたまりです。本校は一人ひとりが輝ける環境だと自負しています。

インタビュー3/3

相洋中学校
相洋中学校太平洋につながる相模湾と小田原城を眺めることができ、周囲には四季折々の自然があふれる、小田原の小峰と呼ばれる丘で、昭和59年より中高一貫教育に取り組んでいる。校訓である『質実剛健・勤勉努力』のもと、これまで育まれてきた先人たちの歴史・文化を学び、新しい社会の中で他国の人々に関わるときでも、自分たちの歴史・文化に誇りをもって語り、自ら考え・判断して行動することができるコミュニケーション力を養う。
中高一貫コースでは、すべての生徒が主体性を確立するとともに、創造的な思考や積極的な行動力を育成し、自主的に物事に取り組み、学んでいく姿勢を身につけながら、自らの能力を最大限に発揮することを目標にしている。そのため、生徒が常に新鮮な刺激によって感動し、多くの事柄に好奇心を持つことの大切さを自然に学べるように、運動会やPAA21、音楽会をはじめ、年間を通じて学校行事を体系的に配置して実施。
PAA21は、中2の『総合的な学習の時間』の集中講座D.C.(ディスカバリー・キャンプ)研究で行われる。ゲームやアスレチック的なプログラムを通して、速さを競うことなく時間をかけてそのプログラムを達成させるといった集団的問題解決プログラムで、グループの親睦や信頼を深めるとともに協力性を高め、難問解決による達成感も味わう。最近では各メディアでも紹介され、一般的になってきたPAA21であるが、相洋中学校が先駆けだ。
中3の夏期学習合宿は、中学3年生~高校3年生の希望者を対象。各学年とも講義(授業)形式と自習形式で勉強に取り組む合宿です。講義は主要5教科についてそれぞれ、“ハイグレード”“スタンダード”“プライマリー”の3段階で開講され、学年に関係なく自分の実力や目的に合わせて受講できるようなカリキュラムになっている。大学受験を控えた高校3年生でも、予備校などに通わずこの合宿に参加する生徒が多い。普段教わり慣れている先生方から指導してもらえるということが大きな要因で、先生と生徒の距離の近さや、相互の強い信頼感がうかがえる。
勉強面だけではなく、クラブ活動も盛んで、中学生は全員が参加している。空手・柔道・陸上などの強豪運動クラブや、文化系でも吹奏楽・和太鼓など、全国大会レベルで活躍している。