シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

相洋中学校

2019年11月掲載

相洋中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.途中式を書く習慣は数学の前準備にもなる

インタビュー2/3

大問は小設問の流れに乗って解き進めよう

入試問題を作るにあたり大切にしていることは何ですか。

秋澤先生 難易度や分野の偏りがないように、また、似たような考え方で解ける問題が並ばないような出題を心がけています。
出題構成は大問5題、大問1は計算問題、大問2は小問集合問題、大問3~5は小設問から成る応用問題です。大問は、設問の解答や解答プロセスが次の設問のヒントになるように、つながりを意識しています。

田島先生 受験勉強で身につけたことを発揮してもらうのはもちろん、入試問題という時間の制約がある中で初見の問題への対応力や粘り強さも試したいところです。
受験生の経験値や考える力(思考力・判断力・表現力の主体性)を測るのに、会話形式の問題も取り入れたいと思っています。

渡邉校長 以前は知識を問う問題が多かったのですが、ここ3年ほどは、この問題のように設問の要求を読み取る読解力や自分の言葉で説明する力も、少しずつ試すようになっています。

校長/渡邉 祐一先生

校長/渡邉 祐一先生

計算力のあるお子さんに入学してもらいたい

入試問題で受験生のどんな力を見ていますか。

渡邉校長 中1の数学は、まず、正負の数、文字と式、方程式など、新しい概念を学ぶ上、計算中心の単元が続きます。順調に学習が進むように、基礎的な計算力があるお子さんに入学してもらいたいと思っています。
計算問題は全部で8問、配点も多めで合否の判定にも影響します。大問にもそれなりに手のかかる計算を入れるようにしています。
ただ、入学した生徒を見ると、計算力が万全というわけではありません。こちらが思っている以上に小数の乗除の計算を苦手にしているように感じます。

文章記述問題は「書く」第一段階はクリア

第1回入試では、割合の考え方の間違いを説明する文章記述問題があります。受験生の取り組み具合はいかがですか。

田島先生 正解かどうかにかかわらず、結構書いてくれています。「書く」という第一段階はクリアしているように思います。
次の段階の「相手に伝わるように書く」ところは、入学してからしっかり鍛えます。

例年、最後の大問は空間把握問題が多いように思います。

渡邉校長 おそらく、小学生が最もイメージしにくいのが空間把握だと思います。イメージする力を試すのに適していますから、空間図形の出題頻度は高いかもしれませんね。イメージ力は、二次関数からどんなグラフかイメージするなど、図形問題に限らず必要な力です。

相洋中学校 学校入口からの景観

相洋中学校 学校入口からの景観

数学は式を省いていては太刀打ちできなくなる

受験生の答案を見て気づかれることはありますか。

田島先生 計算の途中式をきちんと書く子もいれば、省く子もいます。後者は暗算で処理したのでしょうが、このままでは数学では通用しません。
一次方程式の移項ができないのは、途中式を書く習慣がないことに一因があります。つまずきの根っこをさかのぼると、算数の途中式の省略に行き着くのではないかと思います。
数学は筋道を立てて考えることが求められ、暗算でできることも、頭の中の考えを式で表します。生徒には「暗算で解いてもいいけれど、式も書けないと真に『解けた』とは言えないよ」と言っています。
とはいえ、すぐに納得できない生徒もいます。その生徒に合った伝え方やタイミングで声がけできるのは、クラス全員に目が行き届く少人数制ならではだと思います。
一方で、理屈でなく感覚で解けてしまう“感性”も大事にしてあげたい。式を立てるのを窮屈に思って「数学はおもしろくない」とそっぽを向かれないような“さじ加減”が悩ましいところです。

証明問題で論理的思考力を鍛える

田島先生 中2で習う「図形の証明」は、暗算タイプの生徒が大の苦手にしているところです。
証明の式は、わかっていても省略しないこと。「わかっているからこそ、相手に自分の考えがわかるように式を書こう」と繰り返し言っています。
計算力はあるけれど途中式を書きたがらない生徒がいます。式を書くのを嫌がっていましたが、周りがきちんと式を書いて解けるのを見て「まずい」と思ったのでしょう、授業中の顔つきが変わり、取り組む姿勢も前向きになりました。
少しずつできるようになって、式を立てる、手順を踏む大切さに気づき始めたかなと思います。元来の計算力に筋道を立てて考える力が加わって、今後どのように成長するか楽しみです。

相洋中学校 教室

相洋中学校 教室

インタビュー2/3

相洋中学校
相洋中学校太平洋につながる相模湾と小田原城を眺めることができ、周囲には四季折々の自然があふれる、小田原の小峰と呼ばれる丘で、昭和59年より中高一貫教育に取り組んでいる。校訓である『質実剛健・勤勉努力』のもと、これまで育まれてきた先人たちの歴史・文化を学び、新しい社会の中で他国の人々に関わるときでも、自分たちの歴史・文化に誇りをもって語り、自ら考え・判断して行動することができるコミュニケーション力を養う。
中高一貫コースでは、すべての生徒が主体性を確立するとともに、創造的な思考や積極的な行動力を育成し、自主的に物事に取り組み、学んでいく姿勢を身につけながら、自らの能力を最大限に発揮することを目標にしている。そのため、生徒が常に新鮮な刺激によって感動し、多くの事柄に好奇心を持つことの大切さを自然に学べるように、運動会やPAA21、音楽会をはじめ、年間を通じて学校行事を体系的に配置して実施。
PAA21は、中2の『総合的な学習の時間』の集中講座D.C.(ディスカバリー・キャンプ)研究で行われる。ゲームやアスレチック的なプログラムを通して、速さを競うことなく時間をかけてそのプログラムを達成させるといった集団的問題解決プログラムで、グループの親睦や信頼を深めるとともに協力性を高め、難問解決による達成感も味わう。最近では各メディアでも紹介され、一般的になってきたPAA21であるが、相洋中学校が先駆けだ。
中3の夏期学習合宿は、中学3年生~高校3年生の希望者を対象。各学年とも講義(授業)形式と自習形式で勉強に取り組む合宿です。講義は主要5教科についてそれぞれ、“ハイグレード”“スタンダード”“プライマリー”の3段階で開講され、学年に関係なく自分の実力や目的に合わせて受講できるようなカリキュラムになっている。大学受験を控えた高校3年生でも、予備校などに通わずこの合宿に参加する生徒が多い。普段教わり慣れている先生方から指導してもらえるということが大きな要因で、先生と生徒の距離の近さや、相互の強い信頼感がうかがえる。
勉強面だけではなく、クラブ活動も盛んで、中学生は全員が参加している。空手・柔道・陸上などの強豪運動クラブや、文化系でも吹奏楽・和太鼓など、全国大会レベルで活躍している。