シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

相洋中学校

2019年11月掲載

相洋中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.手を動かして解答の糸口を見つける

インタビュー1/3

回収した問題用紙から解答のプロセスが見えた

秋澤先生 この問題は、公式に当てはめて解くのではなく、手を動かして考えてもらおうと思って作りました。小学生が取り組みやすい素材を探す中で、身近な食の「ラーメン」に行き着きました。
回収した問題用紙からは、何とかして解こうとした“痕跡”が見られ、受験生の解答のプロセスを垣間見ることができました。例えば、表1の620円の上に「しょうゆ・大盛り・玉子」「塩・玉子」というように、当てはまるパターンのメモ書きがありました。
間違えたけれど、考え方は途中までよかった解答もあれば、正解したものの考えた様子が見られず、当てずっぽうだったのかなと思われた解答もありました。

数学科/秋澤 秀幸先生

数学科/秋澤 秀幸先生

問1は数の性質に着目するとうまく解ける

秋澤先生 問1の正答率は25%でした。もう少しできてほしかったですね。値段設定はわかりやすくしたつもりでしたが、小学生には難しかったようで、無答もありました。
問1は、値段の「数の性質」に着目すると、手数をかけなくても解けます。
「トッピングメニューの味付き玉子を注文した」ということは、トッピングの金額は、「味付き玉子=70円」または「味付き玉子+大盛り=120円」です。
ラーメン単品の金額は下二桁が「00」と「50」ですから、玉子のトッピングを注文した場合、合計金額は下二桁が「20」か「70」になります。したがって正解は、570円、620円、670円、720円の人数を足した「12人」になります。

設問の条件がなぜ「玉子」なのかという目で見ると、玉子だけ、他と値段の下二桁が違います。
数の性質を使って「20」と「70」に着目できた受験生は、問題を解くためのポイント(着眼点)を見つける力があるといえますね。普段から、うまい解き方を試行錯誤しているのだと思います。

前の問題でかいた樹形図を使うと解きやすい

多かった誤答など、間違いに傾向は見られましたか。

秋澤先生 予想以上にいろいろな間違いがありました。問題用紙を見ての推測ですが、「数えもれ」と思われる解答が目立ちました。

この問題はしらみつぶしに調べて解くこともできますね。

秋澤先生 片っ端から当たる方法でも解けるように工夫しました。
この問題を含む大問は、まず(1)として、「注文の仕方は何通りあるか」聞いています。これは計算でも答えは出ますが、問1にはつながりにくい。ここで樹形図をかくと、次の(2)の問題の問1は考えやすかったのではないかと思います。実際のところ、樹形図をかいた受験生の方が問1の正答率は高かった印象があります。

ちなみに、出来具合はいかがでしたか。

秋澤先生 正答率はさほど高くなかったと思います。手を動かせば解けたと思うので、面倒くさがらずやってほしかったですね。

相洋中学校 校門

相洋中学校 校門

問2は論理的思考力が試される手強い選択問題

問2は選択問題ですが、論理的思考力が求められる難しい問題だと思います。

秋澤先生 正答率は10%ほどでした。当てずっぽうの正解も含め予想の範囲内です。
問2は、何かしら法則が使えるわけではないので、すべての場合を洗い出すには、手も動かさなければなりません。その際、与えられた情報を整理し、分析し、取捨選択する力が求められます。
多かった誤答は特になくバラバラでした。無答が結構あったのは選択問題としてはもったいないと思いました。

表を作成して情報を整理した受験生も

表2の人数を埋めるには、まず、表1の支払い金額それぞれがどんな集合なのかを整理しなければなりません。620円と670円は注文の仕方が複数あります。

秋澤先生 この場合、表を作っていては時間がかかります。メモのような書き込みで解くのが現実的ですし、受験生の多くがメモ書きしていました。
表を作った受験生が1人いました。未知の人数をA~Dとし、情報を整理して考えていたのですが、残念ながら答えは間違いでした。

作業を伴う問題には粘り強さも求められます。

田島先生 生徒には常日頃、「手を動かそう」と呼びかけています。わからなくても、考えることを“降参”するのではなく、なんとか解こうとして手を動かしてほしいですね。

相洋中学校 中高一貫校舎

相洋中学校 中高一貫校舎

インタビュー1/3

相洋中学校
相洋中学校太平洋につながる相模湾と小田原城を眺めることができ、周囲には四季折々の自然があふれる、小田原の小峰と呼ばれる丘で、昭和59年より中高一貫教育に取り組んでいる。校訓である『質実剛健・勤勉努力』のもと、これまで育まれてきた先人たちの歴史・文化を学び、新しい社会の中で他国の人々に関わるときでも、自分たちの歴史・文化に誇りをもって語り、自ら考え・判断して行動することができるコミュニケーション力を養う。
中高一貫コースでは、すべての生徒が主体性を確立するとともに、創造的な思考や積極的な行動力を育成し、自主的に物事に取り組み、学んでいく姿勢を身につけながら、自らの能力を最大限に発揮することを目標にしている。そのため、生徒が常に新鮮な刺激によって感動し、多くの事柄に好奇心を持つことの大切さを自然に学べるように、運動会やPAA21、音楽会をはじめ、年間を通じて学校行事を体系的に配置して実施。
PAA21は、中2の『総合的な学習の時間』の集中講座D.C.(ディスカバリー・キャンプ)研究で行われる。ゲームやアスレチック的なプログラムを通して、速さを競うことなく時間をかけてそのプログラムを達成させるといった集団的問題解決プログラムで、グループの親睦や信頼を深めるとともに協力性を高め、難問解決による達成感も味わう。最近では各メディアでも紹介され、一般的になってきたPAA21であるが、相洋中学校が先駆けだ。
中3の夏期学習合宿は、中学3年生~高校3年生の希望者を対象。各学年とも講義(授業)形式と自習形式で勉強に取り組む合宿です。講義は主要5教科についてそれぞれ、“ハイグレード”“スタンダード”“プライマリー”の3段階で開講され、学年に関係なく自分の実力や目的に合わせて受講できるようなカリキュラムになっている。大学受験を控えた高校3年生でも、予備校などに通わずこの合宿に参加する生徒が多い。普段教わり慣れている先生方から指導してもらえるということが大きな要因で、先生と生徒の距離の近さや、相互の強い信頼感がうかがえる。
勉強面だけではなく、クラブ活動も盛んで、中学生は全員が参加している。空手・柔道・陸上などの強豪運動クラブや、文化系でも吹奏楽・和太鼓など、全国大会レベルで活躍している。