シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

相洋中学校

2019年11月掲載

相洋中学校【算数】

2019年 相洋中学校入試問題より

下はあるラーメン屋のメニューです。このラーメン屋では、1人1杯のラーメンを注文し(1人で2杯以上は注文できない)、
トッピングをつけるかどうかを選びます。ただし、トッピングは大盛りと味付き玉子の両方をつけることも可能です。

【ラーメンメニュー】

  • しょうゆラーメン 500円
  • 塩ラーメン 550円
  • みそラーメン 600円

【トッピングメニュー】

  • 大盛り 50円
  • 味付き玉子 70円

(問1)ある時間帯の客数は20人でした。その時間帯の支払い金額と人数を確認すると下の表1の通りでした。なお、この時間帯では塩ラーメンを注文した人とみそラーメンを注文した人は必ずトッピングメニューを選んでいました。トッピングメニューの味付き玉子を注文した人は何人いましたか。

表1 支払い金額と人数
支払い金額(円) 500 550 570 600 620 650 670 720
人数(人) 2 1 2 3 3 2 4 3
表2 注文メニューと人数
注文メニュー しょうゆラーメン 塩ラーメン みそラーメン 大盛り 味付き玉子
人数          

(問2)表2の人数をすべて埋めるためにはどのような人数が分かればよいですか。正しいものを1つ選びなさい。
(ア)大盛りをトッピングした人の人数
(イ)しょうゆラーメンを注文した人の人数と、大盛りをトッピングした人の人数
(ウ)大盛りと味付き玉子の両方をトッピングした人の人数
(エ)しょうゆラーメンを注文した人の人数と、味付き玉子をトッピングした人の人数
(オ)塩ラーメンに大盛りをトッピングした人の人数
(カ)塩ラーメンに大盛りと味付き玉子の両方をトッピングした人の人数

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この相洋中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(問1)12人  (問2)(イ)

解説

(問1)

支払い金額から、客がどのような組み合わせの注文をしたのかを調べる。
たとえば、支払い金額が620円ならば、「しょうゆラーメン・大盛り・玉子」(500+50+70=620)、または、「塩ラーメン・玉子」(550+70=620)を注文したと考えられる。

それぞれの支払い金額から、考えられるメニューの組み合わせを調べると、次の表アのようになる。

解説 表ア

このうち、「塩ラーメンを注文した人とみそラーメンを注文した人は必ずトッピングメニューを選んでいた」という条件があるので、次の表イのように、×印をつけたところの注文はなかったことがわかる。

解説 表イ

よって、味付き玉子を注文した人は、上の表イの影をつけた部分より、2+3+4+3=12(人)とわかる。

(問2)

支払い金額が620円のときと、670円のときは、注文されたものがそれぞれ2種類考えられる。(表イの候補1と候補2)

そこで、「しょうゆラーメン・大盛り・玉子」を注文した人数をA人、「塩ラーメン・玉子」を注文した人数をB人とする。(このとき、AB=3。)
また、「塩ラーメン・大盛り・玉子」を注文した人数をC人、「みそラーメン・玉子」を注文した人数をD人とする。(このとき、CD=4。)

このとき、それぞれのラーメン、およびトッピングを注文した人数は、次の表ウの下の部分のように整理することができる。

解説 表ウ

今、AB=3、CD=4という関係がわかっているので、5種類のラーメンおよび2種類のトッピングをそれぞれ注文した人数は、ABのいずれか1つ」と、「CDのいずれか1つ」がわかると、すべて判明する。

(ア)大盛りをトッピングした人の人数
ACがわかるだけなので、下線部を満たさない。

(イ)しょうゆラーメンを注文した人の人数と、大盛りをトッピングした人の人数
→しょうゆラーメンの人数からAがわかる。また、大盛りの人数からACがわかる。よって、ACがわかるので、下線部を満たす。

(ウ)大盛りと味付き玉子の両方をトッピングした人の人数
ACがわかるだけなので、下線部を満たさない。

(エ)しょうゆラーメンを注文した人の人数と、味付き玉子をトッピングした人の人数
→しょうゆラーメンの人数からAがわかる。このことからBもわかる。ところが、味付き玉子の人数からCDはわかるが、CDのそれぞれはわからないので、下線部を満たさない。

(オ)塩ラーメンに大盛りをトッピングした人の人数
CがわかるのでDもわかるが、ABもわからないので、下線部を満たさない。

(カ)塩ラーメンに大盛りと味付き玉子の両方をトッピングした人の人数
CがわかるのでDもわかるが、ABもわからないので、下線部を満たさない。

以上より、(イ)が答えとわかる。

日能研がこの問題を選んだ理由

今わかっていることを整理し、整理した情報どうしを組み合わせて、新たな情報を論理的に導き出す力が求められています。使われている素材は、ラーメン。子どもたちが、興味津々で取り組む様子が思い浮かびます。

この問題の(問1)では、問題文に提示されている情報から、新たにわかる情報を見出す力が求められています。それに対して(問2)は、知りたい情報を得るためには、何がわかる必要があるのかを判断する問題です。つまり、(問2)では、「必要なものは、それがなぜ必要なのか」ということだけでなく、「必要でないものは、それがなぜ必要ではないのか」ということにまで考えをめぐらせる力が求められ、高い論理的思考力を要する問題といえます。そして、この問題は、子どもたちが楽しんで取り組めそうなラーメンを素材としています。楽しく取り組める条件設定がモチベーションとなって、高度な論理的思考力を使うというミッションも、軽くひょいと乗り越えてくれそうな気がします。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。