シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

世田谷学園中学校

2019年10月掲載

世田谷学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.実験・体験を数多く行い、生徒にたくさんの気付きを与える授業カリキュラム

インタビュー2/3

知識先行型の教育はしたくないものの・・・

理科としての取り組みとして、何か特別なことはされていますか?

秋元先生 ごく普通の事ですが、中学生の間に継続的に研究させることを通じて、いろいろなものに関心を持つ子どもを育てたいと思っていますし、実際そのようなことに関心のある子どもに入ってきてもらいたいと思います。

ただ、それを常にどのように実行されているかを問われると(笑)。我々も何年も子どもと一緒にいますが、はじめのうちは「なぜろう?」「どうしてだろう?」という場作りが出来ているので子どもも関心を持ってくれるのですが、どうしても大学入試が近づいてくると、知識先行型の授業になってしまって徐々に手薄になってしまいます。

理科主任/秋元 幸太先生

理科主任/秋元 幸太先生

興味・関心があるテーマを発表、プレゼンする「サイエンスフェア」

そんな中、世田谷学園には「サイエンスフェア」というのがあるのですね。サイエンスフェアとはどんなものなのですか?

秋元先生 サイエンスフェアとは、身近なものの興味・関心をテーマとして発表する場です。
中1・中2では必須になりますが、中3以降は任意でやりたい生徒がやっています。優秀な子は学園祭などでポスターセッションという形でボードに貼り出し、来ているお客さんに発表したりします。その後、理科教員全員の前でプレゼンをしてもらい、理科教員の質問に答えてもらう、ということも行います。

過去のテーマとして挙がったものには「シャーペンはどれが使いやすか」について、折れ方や書き方の観点から調査研究をしていったものなどがありました。「何でだろう」「どうしてだろう」という感覚は年を取るにつれて徐々に薄れていく気がします。学校としてはその感覚が消えないように育て続けたいと考えています。

ちなみに理系の生徒はどれくらいいらっしゃるのですか?

秋元先生 高校2年で分かれますが、大体半分ぐらいです。

世田谷学園中学校/サイエンスフェア掲示物

世田谷学園中学校/サイエンスフェア掲示物

実験や体験を数多くこなして自分の特性を見つけ出してほしい

6年間でどのような授業を行うのかについて、想いやお考えなどあれば教えてください。

秋元先生 中学生の時になるべく多めの実験を取り入れたいと考えています。これは他の学校で同じだと思いますが、いろいろな体験を通していろいろなことを気づいてもらいたいですね。

古澤先生 欲を言えば、自分の好きなことをずっとやっていってもらいたいということはありまして、そのうち何が自分に合うのかを考える力を付けてもらいたいと思っています。それと、全ての子どもに環境問題について考えるなら、自分のまわりのごみを片付けることだったり、生活においてやらなければいけないことは意識できるようになったり、ということを考えられる生徒になって欲しいと思います。

実験などの頻度はどれくらいありますか?

秋元先生 中1はなるべく実験を多くをやりますが、そのために週に1回は2時間続きの授業もあります。2年生からは物理や地学に分かれるので2時間続きとはいかないものの、なるべくコンパクトな実験を重ねています。
高校になると演示実験が増えますが、中学の時にやった実験の理論を教えてもう一回演示を見せると「ああ、あの実験か」と納得しながら生徒が見ていたりしますので、そういう発言が出てくるとこちらも「よしっ」と思ってやりがいを感じます。

生物の実験などもやるのでしょうか?

古澤先生 なかなか今の時代では命を奪うという実験ができないものですから、料理に使うものでイカを解剖することがありますし、内臓を見る場合は豚の内臓を使用したりします。子ども達にタブレットを渡しているので、実験の際には写真を撮ったりしているのですが、今の子は写真や動画を撮ることで安心するんですよね。だからモニターを通してみるのではなく、「まずは実物を見るように」と子ども達には常日頃から言ってはいます。

失敗を乗り越えた先に新たな発見がある

秋元先生 体験をさせるとどうしても失敗することも出てきます。失敗も大事にしてもらいたいと思いますし、間違いやミスをどう乗り越えるかは常に考えさせているのですが、これは理科だけではなく普段の生活や部活、生徒会でも同じでことですので、基本的には生徒主体でいろんなことをやらせていこうという方針で動いています。

塾で小学生の子ども達を見ていると、子どもの後ろ側には親という大きな存在があって「間違えてはいけないんだ」という考えに縛られているものですが、どのようにそこは乗り越えさせてあげるのでしょうか?

古澤先生 保護者会でも、間違えは一つの経験だと伝えていますね。それが大きな間違えでなく、小さな間違いに誘導するようにするために、保護者の方が前にいて片付けてしまったりするということもありますので、できればあまり先回りしないよう少し待っていてあげてください、ということはよく話しています。教員側は注意せず怒らないというのが基本にあって、あえて少し間違いをさせるというスタンスで臨んでいる感じですね。

世田谷学園中学校/化学講義室

世田谷学園中学校/化学講義室

インタビュー2/3

世田谷学園中学校
世田谷学園中学校学園の理念である“Think&Share”は、お釈迦様の「天上天下唯我独尊」に基づく。「Think」は知的好奇心をもって思索する力を極限まで深め、自己の確立をはかること、「Share」は人の意見に耳を傾け、助け合う心を育てること。仏教の精神に立脚し、生徒に人間として生きることの尊さを自覚させ、国際的視野に立って、積極的に行動できる人間形成を目指している。
1592(文禄元)年創始の曹洞宗吉祥寺の学寮“旃檀林”が前身。1902(明治35)年曹洞宗第一中学林と改称。1947(昭和22)年、世田谷中学校開設。1983年、現校名に改称。積極的な国際交流を推進するとともに、1995(平成8)年には高校募集を停止し(スポーツ推薦を除く)、1998年完全中高一貫体制を固める。2001年に創立100周年を迎えた。駒澤大学は系列校。
都内校のなかでは校地は比較的広く、放光館(理科実験室や講義室、音楽室)や修道館(総合体育館)、三心館(食堂)、グラウンドなど施設も充実。修道館には柔・剣道場、温水プールなどが完備されている。2001年、創立100周年を記念して建設された新校舎には、学園が誇る禅堂や、図書館・コンピュータルームなどもある。
世田谷学園では、2021年度から「本科コース」「理数コース」の2コースを募集している。本科コースは、じっくりと幅広く学び、高校2年次に文理選択をする。理数コースは、中学入学段階から理系学部進学を決めている生徒を対象に、理系プログラムを充実させたコースである。カリキュラムでは中1・2を前期、中3・高1を中期、高2・3を後期と位置づけ、効率的な先取り教育を行っている。本科コースでは、中3から学年ごとに特進クラスが1クラス設けられ、進級時に入れ替えが行われる。夏期集中講習、放課後のステップアップ講習も実施。毎年、難関大学へ多数の合格者を出し、現役合格率も高い。
クラブ活動は盛んで、なかでも空手道部は全国大会で数多くの優勝経験をもつ。硬式野球部も甲子園出場経験がある。活躍は運動部だけにとどまらず、吹奏楽部はアンサンブルコンテストで全国大会の金賞を受賞したこともある。
国際交流にも力を入れ、希望者は中学2年でシンガポール研修、高校1年では全員参加のカナダ研修が行われる。また、希望者は選抜で3ヵ月のニュージーランド派遣留学がある。
12月には有志の生徒たちが約1週間の早朝坐禅を行い、仏教・禅の心にも触れる。