出題校にインタビュー!
世田谷学園中学校
2019年10月掲載
世田谷学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.環境や生活に則したテーマを探し出して出題
インタビュー1/3
水の循環について考える問題
今回この問題を出題された意図を教えてください。
古澤先生 環境や身近な問題を中心に出題するということで、私が「こんな場所いいな」と思うところや、「生徒たちに伝えたいな」というものを探して作問することをこころがけました。この問題のテーマは琵琶湖の周辺をクラブ活動の一環で歩くことがあってたまたま見つけたのと、その場所について以前テレビで紹介されていたことがきっかけです。
この問題で紹介されている「川端」については、文章を読んでみると「なるほど」と思うのですが、ネットなどで調べてもなかなか出てきませんでした。そのため、先生方がどのようにしてこの場所を知って問題として取り上げたのかは気になるところでした。琵琶湖周辺のほんの一部のエリアだけで取り組まれている循環のようなんですね。
古澤先生 実際には東北など日本にもいくつかそのような場所はあるのですが、家の中にあるというのはここぐらいではないかと思います。
我々はこの問題を最初は社会の問題だと思ったのですが、理科として取り上げようと思った理由は何だったのでしょうか?
古澤先生 やはり水の循環がうまくまわっているところについて子どもに考えさせたいと思った部分が大きいです。何気ないところに面白いものは結構あったりするので、子ども達に伝えたいことの一つである問題と言えます。
理科/古澤 誠先生
「発見」を大切にする
学校のメッセージとして、理科においては「発見」を大切にされていると思うのですが、知識がなくても読んでいって生活に重ねていくとわかっていく問題は面白いですし、子どももテストを通して学んだものはあるのではないかと思います。塾の授業の中で発見というのは私も普段から意識して大事にしていますが、どうしても決まったことを伝えるだけのことが多く、なかなか発見に至らないので工夫が必要だなと感じています。
古澤先生 発見というのは確かに大きいと思いますが、そんなに遠くに行かなくても比較的近くに不思議なものっていっぱいあります。ですから普段から不思議なものを意識していく習慣があると、子どもには簡単に見つけられるのではないかと思います。
秋元先生 今回の問題のように用語をインプットしなくても、普段からパズル的に解けるような問題をある程度意識して作問していたりします。実験や観察も大切にしていますし、体験してもらうことも大事にしています。そこは我々理科教員が意識して教えているポイントです。
想定よりかなり正答率が低かった問題
実際のところ、受験生にはこの問題はいかがでしたか?
古澤先生 答えとしては「(ウ)の端池に入れて、ごみを魚が食べてくれるから」というものを期待していたのですが、魚が食べてくれるということは書いてあるのに、入れる場所としては「(イ)の壷池に入れる」というものが多かったのです。魚は汚いものでそんな魚が泳いでいる水が付着した皿は汚い、という発想の答えが結構多かったんですが、これにはとても驚きました。受験生の中には魚がふんをしたりするイメージもあったのかもしれません。壺池のほうだと、ごみが下に沈んでしまって循環にはならないのです。
この問題は選択肢と記述両方があっていないと点にならないこともあり、正答率がとても低かった問題でした。部分点もありませんので、正答率は受験者全体で16%、合格者でも15%と低い結果になりました。
秋元先生 文章を書かせる問題なので初めから書かない子もいるだろうとは思っていましたが、それでも想定よりもよくなかったのを覚えています。
世田谷学園中学校/校舎
アクティブラーニングを取り入れた作問づくり
入試問題を作成する上で理科として心がけていることなどあれば教えてください。
秋元先生 繰り返しになりますが、やはり体験や実験の問題を多く出したいと思っていまして、実験結果からルールを見つけ出したり、そのルールを使わせてグラフ化させたり、といったことをさせています。今、大学入試で言われているアクティブラーニングは昔から取り組んでいますので、中学入試でも当然のように作問に取り入れています。
基本的には知識だけで解ける問題は極力減らそうという意識は持っているのですが、どうしても知識系の問題が入ってしまうのはしょうがないかなと思うところです。文章を読ませて考えさせたりする問題にしようとみんなで考えていますね。検討する際には理科教員全員で行います。
次の入試では4題→3題に問題数が減少
秋元先生 問題の形式は昔から変わらず作っていましたが、これまでは4題構成だったものが今年度から3題構成になります。この背景としては、全体として受験生が問題文を読まなくなってきたと感じることが挙げられます。これまでは理科30分の中で4題解かせていたのですが、4つの問題に対しそれぞれ頭を切り替えて本文・リード文を読むというと、なかなか大変かなと思うようになりました。受験したお子さんみんなにきちんと考えて解いてもらうつもりだったのに、最後の4問目がすべて白紙だった、ということを目の当たりにすると単純に時間が足りないのかなという結論に達しました。その結果、3題構成にして、1題ずつの問題を少しずつ増やしてじっくり読ませる方針に今年度からシフトすることになりました。
決して難しくするというのではなく、最後の問題まで作問の意図をきちんと把握してもらえれば解答できるように出題します。これまでどおり前から順番にやっていけば解けるようにするつもりではありますが、とりあえずリード文をしっかり読んで考えてもらいたいとは思います。
世田谷学園中学校/掲示物
長い文章を読めなくなってきた子ども達
長い文章を読めなくなってきたというのは我々も実感があります。国語の教員と話したりすると「ほんと文章読まなくなったよね」という会話が出てきますし、保護者会などで親御さんと話しても「そうなんですよ」という反応があって、入試でもその影響が出ているのですね。問題形式の変更は割と大きな改変となりますね。
秋元先生 大問が1つ減って、リード文をしっかり読めるようになると思います。説明会でもそこはお子さんにきちんと伝えてくださいと話しているところです。
インタビュー1/3