シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

世田谷学園中学校

2019年10月掲載

世田谷学園中学校【理科】

2019年 世田谷学園中学校入試問題より

琵琶湖(びわこ)の北西に位置する高島市針江(はりえ)地域には、比良山系からの地下水を利用した、独自の水文化があります。地域の民家には、豊かなわき水を生活用水に利用するための「川端(かばた)」と呼ばれる洗い場が作られています。「川端」は下の図のように、飲み水などに利用する「元池(もといけ)」と次に流れ込(こ)む「壺池(つぼいけ)」、「端池(はたいけ)」に分かれています。最後の「端池」では、コイなどの魚を飼っており、水は屋外の水路に流れ出ます。水路は各民家の「川端」とつながっているため、針江の人は水を汚(よご)さない意識が高く、「川端」の水を「生水(しょうず)」と呼んで、汚さない努力・工夫(くふう)をしています。そして、それぞれの「川端」から流れ出た水は、針江大川を通り最後は琵琶湖に注ぎます。

図「川端」の水の流れ

「川端」の写真

(問)「川端」には、水を汚さずに利用するための工夫がありますが、食べたあとの食器や鍋(なべ)を洗ったり、つけておくのはどの池で行うと考えられますか。次の(ア)~(ウ)から選び、記号で答えなさい。また、その理由を本文や図、写真を参考にして答えなさい。

(ア)元池 (イ)壺池 (ウ)端池

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この世田谷学園中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

記号 ウ
理由 飼っている魚が食べ残しを食べてくれるから。

解説

問題文と図から、「川端」は「元池」「壺池」「端池」の3つの池に分かれており、汲みあげた地下水は、元池、壺池、端池の順に流れ込むことがわかります。

このうち、元池の水は飲み水などに利用すると書かれているため、食べた後の食器や鍋を洗ったりつけておいたりするには適さないと判断できます。

残りの2つの池を比べると、壺池には何もいませんが、端池にはコイなどの魚が飼われていることがわかります。このことから、端池で食べた後の食器や鍋を洗ったりつけておいたりすれば、コイなどの魚が食べ物の細かな汚れなどを食べてくれると推測できます。もし、壺池を使ったとすると、食べ物の汚れが池の底に沈んでたまり、水が汚れてしまうので、食べた後の食器や鍋を洗ったりつけておいたりするには適さないといえます。

日能研がこの問題を選んだ理由

食物連鎖の関係をもとにした水を利用する工夫と、その理由を説明する問題です。

子どもたちは、初めて見聞きする「川端」という洗い場を中心とした水利用の工夫について、問題文や図に示された情報をもとにとらえていきます。これらの読み取った情報と、食物連鎖に関する知識を結び付けることによって、昔からの生活の知恵がどのようなしくみのもとに成り立っているのかを筋道立ててとらえていきます。

この問題に取り組むことを通して、子どもたちは、日常生活の中で出あう未知のしくみについても、既知のことがらを結び付けることによって、新たな発見ができることに気がつくでしょう。また、自然を利用しながらも破壊せず、共存していくための工夫を学ぶことで、環境などに興味を持つきっかけになるかもしれません。

このような理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。