シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

土浦日本大学中等教育学校

2019年10月掲載

土浦日本大学中等教育学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.名著をたくさん読み、レポート、批評、創作など、さまざまな文章を書く6年間。

インタビュー2/3

メジャーメント(面談やレポート)を実施して総合評価

藤田先生 本校では、ペーパーテストだけでは問えない力を問うために、メジャーメント(面談やレポート)を実施して総合的に評価しています。始めたばかりですが、今年度から6年間同じテーマ(抽象的な問い)を立てて、年に4回、学んだ教材を踏まえてA4、1枚程度のレポートを書くということをさせています。フランスのバカロレアでも、『人間にとって芸術とは?』『美しくない芸術は存在するのか』『自由とは何か』など、抽象的な問題を出題しています。幸福論に関する出題も多いです。本校でもそういう1行問題を用意して、そのテーマについて自分の考えを述べてもらうのです。それを蓄積して、前回、あるいは1年前と比べてどういう変化があったかをリフレクションする、ということを今、やり始めたところです。

A4、1枚書くのは結構大変なのでは?

藤田先生 本校では書かせる機会がたくさんあります。例えば、1年次は京都、2年次はイギリス、3年次は広島、4年次はまたイギリス、というように、毎年、研修旅行に出かけるたびに、論文やレポートを書かせています。そのレポートのボリュームは、中3でA4、5枚以上。論文は学術論文に近い体裁で書くように指示しています。この他、いろいろな行事でもとにかく書かせるので、『A4、1枚』というと生徒はホッとします。

土浦日本大学中等教育学校 生徒作品

土浦日本大学中等教育学校 生徒作品

自分の考え方を広げるために文学作品を読む

このような取り組みを始めたきっかけを教えてください。

藤田先生 文学作品をなぜ読むのかを教科会で話した時に、共通して出てきたのは自分の考え方を広げるためである、ということでした。そうならば、教材を読んで本当に考えが広がったのか、自分がどう変わったのか、それをしっかりとらえ返すという取り組みをしていくべきだろうという考えで、ある抽象的なテーマに対して経過を追っていく取り組みを導入しました。

文学教育の中では「他者論」を重視しています。教材も、他者性の拡大に合わせて配列しています。登場人物が生徒と同じ年代で想像がしやすいものから始めて、やや年代の高い人が出てくる作品、苦悩をうまく描いている近代の作品、さらにそこから近代を超えて、近代的な考え方が通用しないような、どちらかというと不条理な世界を描くような作品…と、ステージを上げていきます。そして、そのつど読む前と後とではどう違うか、ということも聞いていきます。

土浦日本大学中等教育学校 掲示物

土浦日本大学中等教育学校 掲示物

考えるプロセスを大事にする学校<

普段の授業の中でも、考えるプロセスを言葉にする機会は多いのですか。

藤田先生 ここ1、2年くらい前から教科教育の中で、具体的に指導レベルまで落とし込んでいます。これまでは少し弱かったなと思うのですが、生徒指導でも、開校当初より反省文のことを『リフレクションシート』と呼んでいます。反省というのはただ『悪かった』と謝るだけではなく、自分の行動を見つめることです。また、本校のエンブレムにも『対話』を表すマークが入っています。『対話』は、話をしながらその中で自分をとらえ直すことだと思うので、そういう意味では当初より『考えるプロセス』を大事にし、意識してきたのだと思います。

土浦日本大学中等教育学校 エンブレムの意味

土浦日本大学中等教育学校 エンブレムの意味

文化祭で力を競い合うビブリオバトル

自分の考えを言葉で表現する力を育てていく中で、互いの考えを共有する機会はありますか。

藤田先生 日頃の授業の中でレポート、批評、創作などを書く機会が結構あります。作ったものは冊子にして配って、読み合わせるということをしています。授業の中で行う大々的なイベントとしてはビブリオバトルがあります。年に一度、文化祭に向けてクラス内予選を行い、最終的に学年の決勝戦を文化祭で行います。ブックレビューカードの制作もしています。

インタビュー2/3

土浦日本大学中等教育学校
土浦日本大学中等教育学校1963年に高校が開校、2003年に中学が開設され、平成14(2002)年10月、土浦日本大学中等教育学校へと移行された。「学力・国際力・人間力」の3つの力の獲得が教育方針である。併設大学への進学率は約40%で、難関他大学への進学者の多い。理系・医歯薬獣医への志向も高い。3年生では理系インタークラスが設置されている。英語は1~5年生で習熟度別。100講座以上の課外授業で教養を広げる。
中1で京都・奈良研修、3年生で広島研修を通して、自国である日本の文化・歴史等を十分に学び身に付け、わが国日本の良さを国際社会に発信できるようにする。中2では、英国のオックフォード近郊の美しいバンバリー市内チューダーホールスクールにて約1ヶ月間、4年次ケンブリッジ大学ガートンカレッジにて16日間のボーディングスクールが実施される。現地ケンブリッジの語学学校の教員が本場の語を教授する。期間中の週末にはロンドン市内での博物館研修や、イングランドの名所・旧跡を訪れ知識・見聞を広める。世界人類が平和で国境を越えて相互に協調しあい、夢多き国際社会を構築してゆくそのリーダーになれる人材の育成を目指し、『人間力』『国際力』『学力』の育成に特に力を入れている。
新入生全員にタブレット型PCが貸与される。また、オーラルコミュニケーション科という外国人の先生方のみの科目を設置し9名の専任教員が配置されている。校内で英語を使用することを奨励しており、職員室内は英語を用いなければならないようになっている。英語力・コンピュータリテラシーはどうしても身に付けておかなければならない素養であるとする考えからだ。
思考力を育てるための校長先生の授業も展開されている。テーマに沿って複数の生徒達の意見が交わされるなか、対話を交えながら、一つの考え(定説)を色々な視点・観点から見つめなおし、一つの固定観念に縛られない自由な思考判断を導き出されていく。勉強だけではなく、クラブ活動も盛んで、陸上部などが活躍。文化系でも、ロボットエンジニアリング、鉄道研究会など、ユニークなクラブがある。