シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

土浦日本大学中等教育学校

2019年10月掲載

土浦日本大学中等教育学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.自分の意見を持つことは大切だが、他者の意見を踏まえて考える習慣をつけよう。

インタビュー1/3

自分の考えだけでなく他者の考え方を取り入れて表現する問題

出題意図からお話いただけますか。

藤田先生 本校の教員同士でお酒を飲みながら人生を語っていた時に『幸せってなんだろう』という話になりました。それは大切なテーマではないか。中年のおじさんでも小学生でも等しく考えることができるテーマではないか。入試問題にも使えるのではないか。そういう形でひらめいた問題です。『幸せ』は誰もが知っている言葉ですが、よくよく考えてみるとすごく深い言葉です。出題に当たっては、自分の考えも大切ですが、他者の考え方を取り入れる。そして表現する。この3つを意図して作問したいと考え、資料を2つほど用意しました。それらを参考にしながら『幸せ』という人類普遍的なテーマについて自分の考えを形成し、表現する力を試しました。

教務主任/藤田 晃久先生

教務主任/藤田 晃久先生

テーマありきで問題文となる本を探す

この問題を作成するにあたり、テーマと文章(問題文)のどちらを先に見つけましたか。

藤田先生 毎年こういう問題を作っていますので、先にテーマがあって、それに関連しそうな本を探しました。1つのテーマで探してみて、適した本が見つからない場合はテーマを変えることもあります。今回は、住野よるさんの『また、同じ夢をみていた』を採用しましたが、『幸せ』について理論的に分類などをして説明している本があれば、それに当てはめて考えることができるので、新書などからそういう本も探しました。

資料2は先生が書いたのですか。

藤田先生 そうです。資料1を文章の形で出題することも考えましたが、文章量が多くなりそうだったので、全体的なボリュームを加味してまとめた文章をこちらで用意しました。形式、あるいは内容面でも、もう少し毛色の違う資料を用意したかったというのが本音です。

複数の資料を読んで考える、そのプロセスを重視

これまでの出題を見ても複数の資料から答えを導き出すことへのこだわりを感じます。

藤田先生 複数の資料を読む、ということは、すなわち対話をする、ということです。自分の中の考えだけでなく、資料(他者の意見)を参考にして自己の考えを構築する(とらえ直す)、そのプロセスを重視しているので、複数の資料を提示し、その資料を使って本文を批判する。あるいは複数の資料の関係性に着眼させる。そういう問題を意識的に出題しています。

大学入試改革でも、共通テストなどで複数の資料の関連づけをさせていますから、今後の大学入試でもこれに近い問題が展開されるのではないかと思います。それを踏まえて、今後は相反するような資料を出して、それをある程度受験生自身が調整した上で解答する、というような問題も出していきたいと考えています。

土浦日本大学中等教育学校 掲示物

土浦日本大学中等教育学校 掲示物

他者との交流という観点で書いている受験生が多かった

採点基準を教えてください。

藤田先生 大きくは2つです。1つは字数を満たしているか。もう1つは自分の意見に留まらず、資料に関連することを書いているか。そこを見ながら、ある程度広めに採点しました。具体例の中身についてはそこまで踏み込まず、問いに対応する内容が書かれていれば正答としました。自分の考えだけに留まっている答案や、漢字のミスについては基準を設けて減点しました。

解答は想定どおりでしたか。

藤田先生 40%程度の受験生が完答していました。なかなかよく考えをまとめることができていたと思います。

どんな解答が多かったですか。

藤田先生 ①自己充実よりも、②他者との『交流』という観点で書いている答案のほうが多かったです。自分の中だけの楽しみを書いてくるかなと思っていましたが、本文の影響もあり、家族との関係を書いた解答が多かったです。例えば『家族と一緒に旅行した』『手伝いをして家族に褒めてもらった』そういう具体的な解答がほとんどでした。抽象的な水準でまとめてある答案もいくつかあり、それには感心しました。

土浦日本大学中等教育学校 教室

土浦日本大学中等教育学校 教室

アドミッションポリシーを象徴する問題になった

入試問題への考え方を教えてください。

藤田先生 日頃、受験生が入試問題の対策として触れてきたであろうオーソドックスな国語の問題を用意した上で、本校独自のアドミッションポリシーに触れるような設問をする。あるいはそういうテイストをオーソドックスな問題にも必ず入れるということを重視して問題作りに取り組んでいます。

構成は大問3問です。1つ目は『語彙や漢字』です。一問一答で聞くのはおもしろくないので、多少ひねった形で出題しています。2つ目は情報処理に関係する『説明文や評論文』です。そしてもう1つは物語や小説、随筆などの『文学的な作品』です。

設問としては、指示語を答える、前後の文脈に則して空欄を埋める。そういうオーソドックスな問題に加えて、最後に本校のアドミッションポリシーに触れるような問題を必ず出すようにしています。

特に今回の問題は、それを象徴するような問題になったと思います。なぜなら2つの資料が本校の第一目標になると思うからです。私はSDGsの理念に共感しています。単に学習するだけではなく、学習したことを社会のために使っていくことが大事です。本校の場合は国際社会に目を向けて「国際的なリーダーを育てる」ということを目標にしています。SDGsの課題を解決する担い手になってほしいと思っています。その根源には、人類普遍的な「幸せ」についての認識があります。そういう経緯で、この問題がアドミッションポリシーを象徴する問題になったと考えます。

土浦日本大学中等教育学校 賞状

土浦日本大学中等教育学校 賞状

インタビュー1/3

土浦日本大学中等教育学校
土浦日本大学中等教育学校1963年に高校が開校、2003年に中学が開設され、平成14(2002)年10月、土浦日本大学中等教育学校へと移行された。「学力・国際力・人間力」の3つの力の獲得が教育方針である。併設大学への進学率は約40%で、難関他大学への進学者の多い。理系・医歯薬獣医への志向も高い。3年生では理系インタークラスが設置されている。英語は1~5年生で習熟度別。100講座以上の課外授業で教養を広げる。
中1で京都・奈良研修、3年生で広島研修を通して、自国である日本の文化・歴史等を十分に学び身に付け、わが国日本の良さを国際社会に発信できるようにする。中2では、英国のオックフォード近郊の美しいバンバリー市内チューダーホールスクールにて約1ヶ月間、4年次ケンブリッジ大学ガートンカレッジにて16日間のボーディングスクールが実施される。現地ケンブリッジの語学学校の教員が本場の語を教授する。期間中の週末にはロンドン市内での博物館研修や、イングランドの名所・旧跡を訪れ知識・見聞を広める。世界人類が平和で国境を越えて相互に協調しあい、夢多き国際社会を構築してゆくそのリーダーになれる人材の育成を目指し、『人間力』『国際力』『学力』の育成に特に力を入れている。
新入生全員にタブレット型PCが貸与される。また、オーラルコミュニケーション科という外国人の先生方のみの科目を設置し9名の専任教員が配置されている。校内で英語を使用することを奨励しており、職員室内は英語を用いなければならないようになっている。英語力・コンピュータリテラシーはどうしても身に付けておかなければならない素養であるとする考えからだ。
思考力を育てるための校長先生の授業も展開されている。テーマに沿って複数の生徒達の意見が交わされるなか、対話を交えながら、一つの考え(定説)を色々な視点・観点から見つめなおし、一つの固定観念に縛られない自由な思考判断を導き出されていく。勉強だけではなく、クラブ活動も盛んで、陸上部などが活躍。文化系でも、ロボットエンジニアリング、鉄道研究会など、ユニークなクラブがある。